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「ASD=気遣いができない」は間違い?

この記事は2,878文字あります。個人差はありますが、5分〜7分でお読みいただけます。

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今日は、「ASD=気遣いができない」は間違い?というテーマで書いていきます。なんだか普段よりもちょっと熱が入って多めに書いてしまいましたが…どうぞお付き合いください。


よくある誤解

自閉症スペクトラム(ASD)特性の一つに、社会性(対人交流=人付き合い)というのがあります。社会性といっても、バリエーションは幅広く、その現れ方は人によって大きく異なります。例えば、人と積極的に関わりたがらない人もいれば、積極的に関わりたい人もいたり、仕事上の目的ある関わりは負担はないけれども、雑談のように目的のない関わりは負担が大きい人もいたりします。

また、ASDは空気が読めなかったり、人付き合いは苦手なはずなので、「気遣いは人一倍している(とても気遣う)」「友達がいる」という方の場合には、「ASDではない」と思われることは少なくありません。他にも、ソーシャルスキルトレーニング(SST)という、社会的な場面での振る舞いに関するワークシートでは適切な回答ができるので、「ASDではない」と判断されることもあります。

だけれども、特定の場面(例えば、診察場面やビジネスの場面)で社会性の高い振る舞いができていたり、日常生活で親しい人間関係を持てていたとしても、それだけでは社会性の特徴がないとは言えません。

直感的なのか、知識なのか

社会性の特徴を考えた際には、「社会的なスキルや知識があるかどうか」ではなくて、「社会的なスキルの獲得の仕方」や「社会的な場面での発揮の仕方」がポイントになってきます。

ちょっとこれだけだとわかりにくいですよね。

社会的なスキルに関しては、よく「一般常識」と言われることがあります。一般常識はどうして一般常識と言われるかというと、多くの人が生活していく中で自然に身につけていく知識だからなんですね。つまり、「誰も教えてくれなかったから知らない」とか、「経験したことがないから知らない」ではなくて、「誰かから丁寧に教えてもらったわけでもないし、経験したこともないけど、なんとなく知っている」みたいな感じです。「気遣い」とかもそれにあたります。

なので、やる気がないわけでも、ふざけているわけでもないのに「気遣いが足りない」と言われたりすることも。あるいは、自分では気を遣っているつもりなのに「余計なことをしなくていい」「もっと相手のことを考えて」みたいなことを言われてしまい苦しくなってしまうこともあります。普段は「優しい」と言われることもあるのに、なぜかうまくいかないことも多い、みたいなことも経験したりすることもあります。

SSTみたいに場面を切り取ってみたり、その場でじっくり考えたりできると、そこで期待されているハウツーはわかるけど、より複雑な、よりスピーディな日常生活の中では、今が社会的なスキルを発揮する場面という判断がつきにくかったり、遅れたりすることがあります。結果として、気持ちがないわけではないのに、うまく対応ができなくて「人の気持ちがわからない」と思われてしまうこともあります。でも、実際には考えていないわけでもないし、空気を読まないわけでもありません。考えるし、空気も読むけれども、多くの人が期待しているものとは違う振る舞いになってしまうこともあります。結果として、「人の気持ちがわからない」と思われてしまうことにつながったりします。

なので、ASD特性があると、人の気持ちを無視する、傍若無人みたいなイメージが先行してしまう場面を見聞きすることがありますが、これらの経験から、「相手を怒らせないように」という方にエネルギーを注ぐ人も多く、必要以上に気遣いをして疲れてしまうことがあります。中には、「そこまで丁寧にしすぎなくても大丈夫」と思うこともしばしばです。でも、どうしてそうした振る舞いになるかというと、「直感的にはわからないから」という場合も少なくありません。

そのため、いつもは礼儀正しい人なのに、想定外の場面(=自分の知識の引き出しにない場面)になると、
「どうして、あんなことしたの?」
「そんなの、あたりまえでしょ!」
「なんで、こんなことがわからないの!」
と周囲に思われてしまうような行動を、気がつかないうちに取ってしまうこともあります。

ということで、今回は「社会性における誤解」について書いてみました。社会的なスキルがあるかどうかではなくて、直感的に理解できているかどうか、自然に振る舞えているかどうかというのがポイントになってきます。

そして、ご本人たちもよく考えてくれていたり、ちゃんとしたいと努力をしてくださっていたりすること、その結果として疲れすぎてしまっている場合もあることを、我々は理解しておく必要もあるのではないでしょうか。

良し悪しではない

そして、これらは優劣ではなく、スタイルの違いです。

「誰にでもできること」ではなくて、得意不得意のあるものでもあります。なので、苦手な人に「もっと相手のことを考えて」と求めても難しいわけです(できないないから困っているので)。

だけれども、「知識として身につけていくこと」=「テクニックとして身につけて不都合を小さくすること」はできるだろうと思います。気遣いに関して言えば、「めちゃくちゃ気が利く」みたいな100点のゴールを目指すと難しかったり、疲れすぎてしまうかもしれませんが、「気が効くわけでもないけど、気が利かないわけでもない」みたいな50点くらいを目指すと不都合は減るかもです。例えば、

  • 体調を崩している人には「体調は大丈夫ですか?」と声をかける

  • 誰かに何かしてもらった時には「ありがとうございます」と伝える

  • ゴミが溜まっていたら捨てる

  • 「何かお手伝いできることはありますか?自分にできることならやりますので」と声をかける

もちろん個人差があるので、100%有効!みたいことではありませんが、少なくとも、一般的には相手に不快な感じは与えないようなことをいくつか絞って実践するというのも一つです。

あるいは「してほしいこと」みたいな加点を求めるのではなくて、「してほしくないこと」のように減点になることをしなければOKとして(不都合が大きくならなければOK)、「しない方がいいこと」を3つくらい伝えてみるのも一つです(数が多すぎると難しいので、数は絞る)。

でも、この辺りはケースバイケースなので、個別的なことはご相談しながら、それぞれのスタイルに合った工夫の仕方を取り入れることで、暮らしやすくなることを目指すことが大切かなと思います。

今日の記事は以上になりますので、参考になれば幸いです。補足はVoicyで話をしますので、宜しければVoicyの方も応援していただければと思います!それでは!

佐々木康栄

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