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賞味期限の切れた菓子

病めるときも健やかなるときもうちには大抵それがあって、相方に整理されピックアップされたそれらを、わたしはそう簡単には捨てられない性分です。一口食うて無事ならばそれでよいという思考の持ち主が何故か私の周りには多く、私ももれなくそのひとりです。年明けから心の置きどころの揺らぐような出来事が相次ぎ、その傍ら私は映画館で「君たちはどう生きるか」を見てまいりましたが、いままでのどの年初めよりも切迫してそのことばを各々に問われているようなそんな気がしてしまい内心穏やかでないのが正直なところ。このままの状態で日々を行ってはまずい気がして、今日はひさびさにわがままを言い外に出ました。気持ちのよい快晴であった。ひとしきり好きにして新たな菓子も沢山買いました。うちにまだある分も、今日買った分も、すこしずつ減ってゆきます。うちには人間がふたりいるので2ばいの速度で減ってゆきます。期限のきれたものは、わたくしが全ていただくので何も問題はない。こうやって気持ちが揺らぐ度に菓子は足され、気持ちが穏やかになれば忘れられていく。今日は澄みわたるほど空が晴れていて、山並みも見えた。そして菓子を買った。こんな日々の衝動の循環があってもいいのである。そうして少しずつ穏やかになったり後始末をしたりしてなんとか生きていく。そして後始末というのは、私にとっては穏やかさや記憶のおこぼれをいただくようなもので、そう悪くはない。来年の今頃もきっと賞味期限の切れた菓子を前にもにょもにょしているのだろう。
今年もよろしくお願いします。

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