路地と芥子

絵とことばをかいています。ときどき写真。よろしくお願いします𓅰インスタにも生息中 𓅮i…

路地と芥子

絵とことばをかいています。ときどき写真。よろしくお願いします𓅰インスタにも生息中 𓅮instagram𓅮 https://www.instagram.com/y_fjord/

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青い椀

無数の断層が、言語を待っている。 断層を水を含んだ指先でなぞり、包み、なだらかな器の曲面をつくる。 2021年 6月 私と彼女は、帰途に着く友人の後ろ姿を、あわいを繋ぐことばも見つけられぬまま、静かに見送った。 友人の痛みに気づけなかった不甲斐なさと、確かに隣にいる彼女とこれからどう生きていけばよいのかと途方に暮れながらも、心の奥底で沸々揺れている本心から必死に目を逸らしていた。 どうしようか、と暫くして同じ言葉が突いて出て、私たちは近くにあった駅前チェーンのカフェに入っ

    • 途中

      昨日のドローイング、配色がうまく決まらず途中でタイムアップ

      • アイスとチキンカツ

        日によって時期によって出てくる自分のことばの種類が異なるのを最近発見し、というのか脳の使われている部分がちがうのか、そういうわけでまいにち何かしらかいていると、異なることばの種類のつらなりがみえてくるのです。ちなみに今日はアイスのこととかチキンカツのこととかしか頭になく、ろくな詩が浮かびません。でも生きていればそういう日もあるあるということでまるくおさめたいと思います。

        • Astronaut's sleep talk

          宇宙飛行士のねごと

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          霧雨

          誓った言葉を溶解炉に投げ入れて 錆びついた線路をあるく 終わらない霧雨

          チューリップ

          透明になりゆくチューリップ 駅の彼方側と此方側を往来する鳩の群 * ゴミ拾いをするひとの背中に木漏れ日がちろちろと懐く * 鉄パイプを下ろす青年が 異国の地のうたを呟きて白む空 * 和菓子屋のカレンダーが止まったまま 光に透ける緋色の葉先が 向こうの角に * 順番に街へ来たる白い朝 母に買った土産を忘れてきた

          チューリップ

          冬空

          頂上にかりんがひとつなっている その冬空からあなたを探している * ヨーグルトを買いに外にでる カラメル アロエ 頬を撫でる木枯らし * 髪を結い 仕事場に立つつむじより この時間だけ花瓶になります私 * 首都高で ガジュマルが風に吹かれてる 海へゆきますといっている * ゲーセンの からっぽの光に救われる ぬいぐるみも私も迷子のままで

          車窓

          見つめてしまえば狂気の沙汰 だから目を逸らさずに逃げるね泣きながら * 気怠げに水面を眺めながらとつとつと ことばを置いていくあなた あのひととは真逆で * 坂道を上っていく背中と高い空 ここにあなたの日々があった * 実らない熱病に侵される8月 わたしは少年ではなかったのです * 焦がれるような恋はそして神話でした 書を燃せよ街へ出よう * 別れへ向かう車窓に立つ ひかりに燃える木立と鳥よ 前途を赦せ

          神話

          神話のままにしておきたい記憶というものがある。それ以上余計な欲望や衝動に汚されることなく、純粋な翡翠の一片を、そっと包んで引き出しの中にしまっておくように、眠らせておきたい記憶というものがある。しかしそれが何かの拍子に揺り起こされてしまうこともある。たとえば音楽とかに。懐かしい曲が店内に流れ始めた。はじめどこかで聞いたことのある曲だ、と片耳で聞いていると、突然それは濁流となって流れ込んできた。私はいつの間にか引き出しを開けて包みを解いて翡翠の一片を飲み込んでいた。 神話のま

          食卓

          そうだいっしょにおいしいものをたべるためにこのひととわたしは出会ったのでしたと * くしゃくしゃの裾 スープをよそう手 電子レンジの光に反射する彼のすがた

          はっさく

          はっさく、とよぶ あなたもまねして はっさく とよぶ

          はと

          つぎつぎと 降り立つはとの一羽が進みでて あなたのまえで正体をあらわしたと

          短歌、11日

          また街へ来てしまった ポケットの中にくしゃくしゃにおしこんだティッシュ * 上空に鳩の群れが円をかく 老婆がひとり駅で手を振る * がらくたかわりばんこにくっつけた ツリーをまだしまえずにいる * 懐かしい歌声が雑踏に降る わたしのゆびさきは冷えて幾年 * がらんとした喫茶店の隅で飲むレモンスカッシュが 遠い記憶まで沁み入り帰れない

          きのう

          きのうはじめてともいえるほど現実味をもって、子どもをもつということについて考えて話した。私にはやはりまだそのことに対する対面するこころもちというものができていなかった。まったく子どものようなわたしたちがもしも子どもをもったとしたら、どうなるのでしょうか。やけに澄みきった夜空を見上げながら、浮ついたこころがただ迷子のように漂った。

          たなびく

          まいにちなにかしら描いて、次いでなにかしら書く、というのを今年は課してみようと思いました。全くままならない日々も毎日つづけるということがはたしてできるのかはわかりませんが、まずは順調に3日目。その日その日で描ける線を、書けることばを、しぶとく記していきたいと思います。

          賞味期限の切れた菓子

          病めるときも健やかなるときもうちには大抵それがあって、相方に整理されピックアップされたそれらを、わたしはそう簡単には捨てられない性分です。一口食うて無事ならばそれでよいという思考の持ち主が何故か私の周りには多く、私ももれなくそのひとりです。年明けから心の置きどころの揺らぐような出来事が相次ぎ、その傍ら私は映画館で「君たちはどう生きるか」を見てまいりましたが、いままでのどの年初めよりも切迫してそのことばを各々に問われているようなそんな気がしてしまい内心穏やかでないのが正直なとこ

          賞味期限の切れた菓子