『碧眼ところどころ』野口晴哉|全生社
『碧眼録』の頁をめくられたいのであれば、西片擔雪の三巻ものがたしかであろう。まだ古書店で時折、眼にはいる。逆にところどころでよいのであれば、禅坊主に道樂者と叱られながら、本書を手にとられたい。
こちらは古書店でも最近は見かけなくなってきた。
全生社は整体協会が出版されてきた本で、文字通り生を全うするための修身がまとめられている。その中でも『碧眼ところどころ』は最も人氣がなかったのだそうだ。
概して百年さきまである書物は売れぬものだが、かえってそのために残るといった節もある。本書もそのやうな一冊になるのではないだろうか。
兎にも角にも、行間から筆者の本音に最も近き香りがする。装丁には花が散りばめられている故か、なお香りが高まる。
概ね偉人は等しく世の人々に真理を傳えようとし絶望している。それが禅であれば、人よりも壁や柱に向かって坐っていたほうがまだよいということなのかもしれないが、おそらく著者もかなり孤高であったことが巻末の詩から窺われる。
それ故の至極の一冊。
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