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RB.04 | 脳科学者が書いた子どもの成長記

『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』
池谷 裕二 (著)
発売日:2017/8/10

著者の池谷先生を知ったのは『脳には妙な癖がある』でした。記憶のメカニズム「脳の可塑性の探求」を研究テーマとし、2012年には脳内の神経細胞同士の結合部(シナプス)形成の仕組みを突き止めた方で東大の薬学部教授だそうです。

前回にならってKAKENで検索すると『記憶による時間創成メカニズムの探索』という面白そうな研究があったので、後で読んでみたいと思います。

さて、本書は池谷先生の娘さんが生まれたことをきっかけにその成長記(0〜4歳まで)を脳研究者という立場から書かれた書籍になっています。

>はじめにー より抜粋
育児とは何でしょうか。脳にとって「成長」とは何を意味しているのでしょうか。発達中の脳はどう作用しているのでしょうか。世界観はどう芽生え、どう変化し、どう多様化していくのでしょうか。個性とは何でしょうか。こうした問をとことん考えると、私達の日常に、新しい立脚点が生まれ、世界の見え方が変わります。これこそが、育児と脳科学のコラボレーションの醍醐味。赤ちゃんの成長を眺めることで、自分の脳の不思議さに気づくのです。

”成長を眺める”とあるように、本書は日々の生活の中で観察された子どもの行動・会話に対しての素直な感想があり、そこに生理学や発達心理学、脳科学の話を柔らかく織り交ぜて書かれているのでさくさく読み進めることができます。内容も面白いながら、父親目線でホッコリできる代物になっています。是非、読んでみてください。

参考までに目次はこちらとなります。

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本書を読んで

>オキシトシン
最初の頃のnoteでオキシトシンについて書いた際もこの書籍を紹介しましたが、お産を促したり、その後の絆の形成や幸福感を高めるホルモン(他にも役割はたくさんありますが)が父親と母親でどう違うのかは興味深く読ませてもらいました。絆形成という意味では父親のオキシトシン濃度も育児にともなって母親と同レベルになる話はホッとするというか、嬉しく思いましたね。

>記憶と想像力
昔から記憶力がほんとに無くてモノや人の名前をなかなか覚えられずに苦労していたので記憶力がある人を羨ましく思っていたのですが、どうやら一長一短があるようです。

子どもの記憶力が高いことを羨ましがる人がいるという話で、実は”記憶力が高い”とは脳が未熟なために”正確な記憶しかできない”ということらしいです。人の脳は曖昧な記憶部分が成長とともに発達するらしく、どうやら、曖昧な記憶は、脳の発達を促す、想像力を高めるといった良い面を生み出しているとのこと。

とはいえ、想像力より記憶力が僕的には欲しいところ・・・仕事上の事象や単語は正確に覚えておきたいものです(汗

>マシュマロ・テスト
”おわりにー” で紹介されていたテスト。マシュマロを1つお皿に載せ(好きなお菓子ならなんでもいいです)、「15分間、食べずに待てたらもう1つマシュマロをあげるよ」と子どもを1人だけ部屋に残してさり、15分我慢できるかというテストです。

4歳時点で合格する子どもは約30%だそうで、ギャンブル依存が少ない、肥満が少ない、大学選抜試験の点数が高い、出世が早いといった傾向がわかっているそうです(エビデンス元は本編をご確認ください)。

情動と記憶についてのnoteで、判断や計画を立てたり、本能や欲求を抑制するために脳の前頭前野について書きましたが、このテストは前頭前野の抑制システムを高く働かせられるかを見ることができます。”3つ子の魂100まで”ではないですが、4歳児時点での能力が将来にとって好ましい傾向であるとわかるのは驚きですね。

ただ注意として、能力の基礎を作る種まきという意味で重要なのは間違いないですが、この時点での結果が全てということではありません。家庭、学校、地域社会における社会情動的スキルの育成 : 国際的エビデンスのまとめと日本の教育実践・研究に対する示唆(ベネッセ教育総合研究所 翻訳)という国際機関であるOECD(経済協力開発機構)が2015年に報告した資料があります。長いですが一見の価値はあると思いますので、興味のある方は読んでみてください。以下、一部抜粋しておきます

スキルは、 過去の学習を基に、 時間とともに徐々に発達する。 認知的、 社会情動的スキルが、 人の一生の間に強化されうることを示すエビデンスが増えてきている。 スキル発達は、遺伝子や環境だけではなく、 家庭、 学校、 地域社会からのインプットによっても影響を受ける。 親は、 子の発達に影響を与える多くの環境的要因を形成する(居住地域の選択、教育課程、世帯の特性を通じて)ことから、 子のスキル形成において重大な責任を負う。 文化、 政策、 制度がスキル形成や学習環境に与える影響も軽視するべきではない。 こうした様々な学習の要素は、 過程の理解において重要であり、 続くセクションにおいて詳細に示される。

スキル発達の速度は、 個人の年齢と現在のスキルの水準に大きく左右される。 現在では、 スキル発達には敏感期があることが認識されている。 子どもの幼児期は、 将来のスキル発達の基礎を築くことから、 スキルの発達にとって非常に重要である。 幼児期介入における投資は、 高い水準のスキルや大人になってからの良好な成果を確保することにおいて最大のリターンをもたらす(Kautz et al., 2014)。この時期においては、 家庭は非常に重要であり、 親子の関わりのパターンは、 認知的、 社会情動的スキルに大きな影響を与える。しかし、その後の介入も、特に社会情動的スキルについては効果的である(OECD, 2015)。児童期、思春期、 青年期には、 学校、 友人グループ、 地域社会がこうしたスキルの形成において重要な影響を及ぼすものとなってくる。

補足が長くなりましたが、書籍の紹介はここまでです。
冒頭でも書きましたが手軽に読めます。そして、我が家もこれからいろいろあるんだろうなぁと思いながら楽しく読めると思います。

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