Kodai Kusano

心理学っぽい話が中心のブログです。米国で博士課程在籍中(社会心理学)

Kodai Kusano

心理学っぽい話が中心のブログです。米国で博士課程在籍中(社会心理学)

    最近の記事

    心理学における理論危機

    先日、心理学の若手研究者を中心としたパプリックトークがあり、そこで発表したスライドを共有します。 感想発表後の議論の中でご指摘にあったのが、「理論」と「法則」は違う、ということでした。スライドでも紹介した Eronen & Bringmann (2021)も指摘している通り、まずロバストな現象がちゃんと観察されてから、理論というものは作ることができます。なので、(社会)心理学はまだ理論構築をできる段階にすらないかもしれません。 また、これらの議論と自分のレビューを通して感

    スキ
    27
      • 心理学の再現性危機、そんなに不安になる事ないです〜頑丈な家を見つけよう

        科学の再現性危機科学的な根拠を主張するための一つの条件に、再現性があります。再現性とは、ある一つの研究で報告された内容を、もう一回同じ手順で繰り返したときに、同じ結果が得られる状態を言います。 近年になって心理学を中心に、この再現性の低さが科学界全体で議論されてきました。コトの発端は、2015年にサイエンス誌で発表された論文です。この論文を簡単に要約すると、以下のようになります: このプロジェクトでは、三つの代表的な心理学ジャーナル(Journal of Experime

        スキ
        24
        • 進化論についてよくある13の誤解

          自然選択による進化に対するよくある13の誤解を紹介します。進化を誤用しないためにも、最低限、絶対抑えておきましょう。若干わかりやすくするために自分の解釈も入っています。より正確に理解したい人のために、最後に引用元を貼っておきます。 1.自然選択はランダムで、偶然の産物であるこれは誤解です。自然選択は、「変異・淘汰・遺伝」を経て種が変化していく過程・プロセスのことです。このプロセス自体はかなりロジカルに、一定に動いています。むしろ、ランダム・偶然なものは「変異」の部分で、ここ

          スキ
          8
          • 環境はどこから来る?進化心理学の限界・発展(ニッチ構築)と、学問の消費の仕方

            コロナが起きてから、進化心理学のアプローチはこれまで以上に注目を集めてきました。だけど、進化心理学は正しい理解を得るのには少々ややこしく、ゆえに非常に誤用(悪用)されやすい分野です。今回は一例を通して、進化心理学の正しい理解とその弱点を補う考え方を、自分自身の研究を通して紹介し、そして進化心理学のこれからと、さらには学問の消費の仕方について提言します。 進化心理学のロジック進化心理学では、研究したい心理的概念や説明したい行動を、人間が進化してきた環境下で自然淘汰によって選択

            スキ
            19

            一流の研究者になるにはどうしたら良いのか実際に一流の研究者に聞いてみた〜ビジョン編

            研究者の中には、トップジャーナルに論文を常に掲載し、分野を超えて有名になる研究者がいます。 去年の夏に、ニューヨークで社会心理学の大学院生を対象としたサマースクールと言うものに参加して来ました。僕は「道徳心理学」と言うテーマのクラスに分けられ、ハイレベルな仲間と一流の研究者たちに囲まれた2週間をみっちり過ごして来ました。幸い、僕のクラスの講師陣たちは道徳心理学の最先端を行っている、イェール大のポール・ブルーム教授と、ブリティッシュ・コロンビア大のアジーム・シャリフ教授と、と

            スキ
            15

            COVID-19から予測できること:失業率・銃・自殺(アメリカの場合)

            社会科学の理論と研究結果を使って、大胆な予想をしてみようと思います。 「コロナによって失業率が上がれば、自殺率が増える。特に、名誉の文化で知られるアメリカ南部の中年の白人男性において、その影響が顕著に見られるはず。」 失業率が自殺に与える影響 コロナが引き起こした経済への悪影響は、リーマンショックを上回るだろうと予想されています。特に予想されるのが、経済のストップによる失業率の増加です。 失業率が増えると、自殺が増えるのはずっと前から研究されています。リーマンショックを

            スキ
            11

            陰謀論が生まれる心理的背景を解説します

            あなたは、2001年の9月11日に起きたアメリカの同時多発テロはアメリカ政府の陰謀だと思いますか?このテロは、アメリカ政府がイラクとアフガニスタンで戦争を始めるための口実を作るための、自作自演だと思いますか? 少しでもあなたがそう思うなら、その信念が形成された背景には、どのような心理的要素が絡んでいるのだろう? 今回は、一般的に陰謀論が生まれる原因について、進化心理学的なアプローチからの研究成果を紹介したいと思います。この記事は、文末に引用してある心理学のレビュー論文を参考

            スキ
            29

            2019年の目標はライティングを上達させる

            明けまして少し経ちましたが、おめでとうございます。ハッピーニューイヤー。 今年の目標は、「ライティングを上達させる」にしたいと思います。 珍しく書けるアイディアが多くなってきたので、筆の進み具合が追いつかなくなってきました。なので、今年はタイミング的に自分のライティングを追い込む良い機会かなと思いました。 ライティングになぜこだわりたいかと言うと、論文の質は文章の質にも依るからです(心理学や社会学に限ってかもしれないです)。つまり、力強く説得力のある文章ほど、多く読まれ

            スキ
            3

            一流の研究者になるにはどうしたら良いのか実際に一流の研究者に聞いてみた〜パワームーヴ編

            研究者の中には、毎年質の高い論文を数本生み出し、生涯の中で一つの分野において重要な功績を残すような超生産性の高い研究者がいます。幸いにも、僕はそのような方達数人に直接お会いする事があったので、その度に「成功する秘訣は何ですか?」と聞いてきました。その一部、特に「力技(パワームーヴ)だな〜」と思った具体的な数字を紹介します。 ① 毎週最低でも72時間は仕事する (H.T教授、心理学の分野でも「文化」と言うテーマを初めて開拓した) ② 自分が人生を賭けて取り組めるテーマを見つ

            スキ
            11

            温暖化は戦争を引き起こすか?

            先日、自分の大学にオスロの研究センターからゲストスピーカーを招いた講演があったのでその内容をメモ目的に記しておこうと思います。 スピーカー(Halvor Berggrav)と研究所のリンク(link) 内容はタイトルにもあるように、「温暖化は戦争を引き起こすか?(Will Climate Change Lead to War?)」と言う内容であったが、実際のところは「気温の変化は武力紛争にどのような影響があるのか?」と言う内容でした。とてもキャッチーなタイトルだったので、

            スキ
            4

            多く引用される論文を書くにはどうしたら良いのか?

            つい先日、心理学のトップジャーナル「Psychological Science」の30周年を記念して、Robert Sternbergが「インパクトのある論文はどのような論文か?」についてのアドバイスを記してたので、ここでシェアします。Sternberg自身も知能や創造性の研究の第一人者で、この30年の間に、最も多く引用された著者たちが(無意識にしろ意識的にしろ)実践している方法について彼が実際にインタビューをして考察している内容なので、非常に有効かと思います。 実際にSt

            スキ
            8

            2018年の抱負

            少し遅いですが、2018年の抱負を記したいと思います。 生活面と研究面に分けたいと思います。 生活 とにかく研究するのにも何をするのにも、体調が整っていないとどうも上手くいかないと言う結論に至りました。なので、「まずは体調管理」を第一に、運動・食事・睡眠をきちんと取っていく事を意識して実践して行きたいと思っています。これらの要素を欠くことは、博士課程や研究生活のような長期的な戦いには向いていないと思いました。 研究 2017年は論文を一つ投稿することができ、教科書の

            スキ
            3

            記憶のメカニズムを利用した効果的な勉強法

            数年前、私の学部時代の大学に、UCLAやHarvardといった大学から、その分野で世界をリードしている心理学者が集まって、記憶や学習についてのセミナーをしてくれたことがあります。非常に役に立つ情報があったので、まとめておこうと思います。 今回は、セミナーの中心人物であったUCLAのRobert Bjork氏の内容を紹介します。 彼は記憶と学習について研究しており、世界でもトップレベルの認知心理学者だそうです。彼の研究室のウェブサイトをみれば、大まかの研究成果はつかめるかと

            スキ
            30

            2017年の生き方

            みなさまあけましておめでとうございます。普段、新年の抱負とかを宣言したりはしないのですが、noteという素晴らしいツールもあることだし、たまには2016年を簡単に振り返って2017年はどうやって生きていきたいかを記しておきたいと思います。 自分が2016年に学び、2017年に意識していきたいことはズバリ 「本質を見極め、本質を追求していく」 ということです。 なぜこのようなことを思ったかというと、去年はいつもにも増して「世間一般、大衆、多数派の意見はほとんどが間違って

            スキ
            2

            アメリカ生活においてすごく細い事だけど知っておいて絶対に損はない教訓

            今日車の登録のために免許センターに行きました。 免許センターといえば、ズートピアで皮肉られているように、とにかく混んでいて効率が悪く、時間がかかることで有名です。 一回目に尋ねた時のこと。「保険証のコピーがないと登録できないから保険入ってから来い。」 ....まあ確かに一回目はたまたま免許センターの近くにいたから立ち寄っただけで、事前に確認もしてなかったからよしとしましょうよ。州によっては保険介入前に車登録できるらしいって聞いたからさ。まあこれは聞く方が早いと思った自分

            スキ
            3

            トランプの勝利は、予想外ではなかった!? あと知恵バイアスを検証してみる

            あと知恵バイアス(Hindsight bias)とは、「過去に起こった出来事について、事前に予測できる根拠がなかったにも関わらず、一度起こった後にはそれを予測していたように解釈してしまう思考の偏り」のことです。 俗に言う、「結果論」「後出しジャンケン」のことです。 今回は、このあと知恵バイアスに関して理論的に説明し、予測能力を向上させる方法を考察しようと思います。 あと知恵バイアスは、私たちの日常にありふれています。 「 あの場面でストレートを投げたら打たれるのはわかっ

            スキ
            5