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経済って何なんすか?問題

経済活動を止めてはいけない、経済危機を乗り越えるには?、西村経済再生担当大臣の会見。日本経済新聞を読もう。新社会人をコロナウイルスと過ごした1年は「経済」という言葉を何度も耳にした1年でした。けれども僕はこの言葉の意味をよくわかっていません。SEとして金融機関向けのシステムに関わっていますが、それが本当に経済のため、その先にいる世界の人々の暮らしや豊かさのために役立っているのでしょうか?

今回はそんな僕と僕と同じような悩みをもつあなたのために経済学の基本をまとめました。自分の偏差値もわからない人間が書いているのでわかりにくいことでしょう。なのでさっさと結論からはじめていきたいと思います。

・膨大な数の家計と企業が互いに影響しあい、社会を築いている
・経済学とは社会が希少な資源をいかに管理するのかを扱う学問
・経済学にはいくつかの中心となる考えがある(十大原理)

この3つ(+10)のことをおさえておけば少しくらいドヤ顔しても大丈夫だと思います。(今回は以下の書籍を参考にしました。)

1、経済学とはどんな学問か?

「経済 (economy)」という言葉は「家計を管理する者(oikonomos)」という意味のギリシャ語に由来しているそうです。
一見すると、この語源は奇妙に感じるかもしれませんが、家計と経済には多くの共通点があります。

家計は、家族の誰が働き、誰が食事を作り、誰が洗濯をするのか?誰が一番初めにお風呂に入り、誰がTVのチャンネルを決めるのか?など多くの選択をしなければいけません。
つまり、家計は保有している希少な資源を各構成員の努力・欲求を考慮しながら配分しているのです。

家計と同様に社会も多くの選択をする必要があります。食料や衣服の生産、飲食店の接客、道路や家屋の建造など、どの仕事を誰に割り振るのか?そうして生まれた財やサービスを誰にどの程度を与えるのか?具体的にイメージすると、誰がキャビアを食べてフェラーリを運転するのか?誰がジャガイモを食べて地下鉄を利用するのか?決めなければいけないということです。

このような問題が生まれるのは、社会の資源には限りがあるからで、このような性質を希少性と言います。家計の構成員全員が望むもの全てを手に入れられないのと同様に、社会を構成する個人も自分の望みうる最高の生活水準はを実現することはできないのです。

希少性
人が手に入れたいと思う財・サービスを生産できるわけではないこと

つまり経済学とは、

経済学
社会が希少な資源をいかに管理するのかを扱う学問

ということになります。
経済学者は、膨大な数の家計と企業が何を買い、どれだけ貯蓄し、その貯蓄をどのように投資するのかを研究し、物価の上昇率、平均所得の増減、就職できない人の割合など、互いに影響しあう人々が経済全体に与える影響を分析しているのです。

そんな様々な側面のある経済学にはいくつかの中心となる考え方があります。次はそれらについて解説したいと思います。

2、経済学の十大原理

1つずつ出来るだけ簡単に説明します。

1. 人々はトレードオフ(相反する関係)に直面している

トレードオフとは何かを達成するためには何かを犠牲にしなければいけない関係のことです。時間という資源で考えてみましょう。1時間を勉強の時間に費やせば、昼寝、TV、デート、アルバイトを1時間ずつあきらめることになります。お金でも同様です。1万円と言うお金を学費に使うこともできれば、食費、洋服代、旅行費、貯蓄に回すなどの選択肢もあります。つまり私達人間は食事に100円出費を増やすとき、100円洋服代を減らしているのです。

また社会は効率(性)公平(性)のトレードオフにも直面しています。

効率(性)
社会が希少な資源から得ることのできるものを最大限獲得している状態
公平(性)
得られた資源が社会の構成員の間にバランスよく分配されている状態

です。
例えばを公平(性)を追求するために、富裕層から貧困層へ所得を再分配する政策を実行するとします。しかしあまりに多くこの分配を行うと、富裕層の報酬が減り労働意欲の低下に繋がります。その結果、財・サービスの生産量が減少し、社会全体の資源そのものの量が小さくなる、効率(性)が実現できなくなるのです。

2. あるものの費用はそれを得るために放棄したものの価値である

人々がトレードオフに直面している以上、意思決定にあたっては様々な行動の費用便益を比較することになります。
例えば週末に一泊二日の温泉旅行に行ったとします。この時の費用は旅行代だけではありません。仮に旅行に行かず、二日間をアルバイトの時間に使えば収入が増加するので、旅行に行くことはアルバイトをすれば手に入るかもしれなかった収入を放棄することにもなります。
このようにあるものを手に入れるためにあきらめなければいけないものを機会費用と言います。

機会費用
あるものを手に入れるためにあきらめなければいけないもの

3. 合理的な人々限界原理に基づいて考える

経済学者は人々を合理的であると想定しています。

合理的な人々
自分たちの目的を達成するために、与えられた条件の下で手立てを整えてベストを尽くす人々

私たちは、食事において吐くまで食べるかか断食するか、ではなくてお茶碗にご飯をどれくらい盛るかで調節しています。勉強においても24時間勉強するか全くしないかではなくて、Youtubeを見る時間を1時間減らしてノートを見る時間を1時間増やすといった調節をします。これが限界的な変化です。合理的な人々は行動の限界的な便益が費用を上回った時にのみ、その行動を選択しようとします。
しかし実際の人間は損得を無視したり、自分を捨てて利他的になったりなど合理的でないことも多々ありますね。

限界的な変化
行動計画に対する微調整

4. 人々は様々なインセンティブ(誘因)に反応する

インセンティブ(誘因)とは、懲罰や報酬、アメとムチのように、人々に何かしらの行動を促す要因のことです。

インセンティブ(誘因)
人々に何らかの行動を促す要因

身近な例で考えてみれば、米の値段が上がると人々は米を食べる回数を減らします。一方で米の生産者は販売することで得られる利益が増えるので、生産量を増やして出荷を行います。このように物の価格が上がることは、消費者にとっては、消費を減らすインセンティヴになり、生産者にとっては、生産を増やすインセンティブになるのです。
このインセンティブは公共政策の決定においても留意しなければいけない重要な点で、例えば、ガソリンが課税されると、人々は小さくて燃費のいい車、環境に優しい電気自動車に乗るようになったり、外出を制限し罰金を課す法律を制定すれば、私たちは家で過ごすことを選択します。

5. 交易(取引)はすべての人々をより豊かにする

テスラとトヨタ、AppleとSONYなど同じ市場で共通の顧客に対して同じような製品を販売することがあります。このときアメリカと日本は競争相手であると言えますが。逆にお互いの生活を豊かにしている取引相手であるとも考えられます。
一般の家族で考えてみるとわかりやすいかもしれません。どの家族も1番安い値段で商品を購入したいし、一番給料の高い仕事に就きたいと考えている競争相手です。しかし、先に述べたようにすべての資源には希少性という性質があり、全員が自分の望む環境を手入れられるわけではありせん。だからといって、この競争から逃れる孤立した生活は送ることは、必ずしも豊かであるとは言い切れないでしょう。すべての資源を自分たちで賄わなければいけない自給自足の生活よりも、農耕や縫製や建築といったお互いの得意分野に特化し、交易をするほうが遥かに多様な財やサービスをより安く買うことができるのです。国も家族も同様に、互いに取引をすることでより多くのものを受け取っています。経済全体のパイが増える、効率(性)の実現につながっているのです。

6. 通常、市場は経済活動を組織する良策である

市場経済という言葉の意味から説明しましょう。

市場経済
市場において、財・サービスをやりとりをする多くの企業や家計による、分権的な意思決定を通じて資源が配分される経済。

少し難しいですが、社会主義国のように権力者がどの財をどれだけ生産するのかを決める、中央集権的な意思決定と対象的に、企業自体が、誰を雇い、何を生産するのかを決める。家計における個人が、どこで働くのかを決め、得られた所得を何に使うにかを決める。これが分権的な意思決定です。
これらの企業や家計は市場で相互に影響しあい、財やサービスの価格が自ずと決定されていくこと。これが社会の授業で何度か耳にしたことがあるアダム・スミスの「神の見えざる手」と呼ばれているものです。
買い手は価格を見て需要(どれだけその商品を買いたいか)を決め、売り手は価格を見て供給(どれだけその商品を売ればいいのか)を決めます。価格はその商品の社会おける価値と、その商品を生産するために必要な費用を反映したものになるため、政府が消費者の趣向や生産者の費用といったことを無視してこの自然な関係を妨害してしまうと、効率性が達成されないこともあるのです。

7. 政府が市場のもたらす成果を改善できることもある

では、それだけ市場の「見えざる手」がすばらしいものなら、政府は必要なのでしょうか?答えは、時と場合による、になると思います。
政府の役割の1つは「見えざる手」がその力を発揮するための、制度を維持し、ルールの番人でいることが挙げられます。例えば、企業や個人の所有権を保護することもその1つです。

所有権
個人が希少な資源を所有し、自由にコントロールできるようにする権利

自分の農作物が盗まれるとわかっていたら農家の方は土地を耕すことをしないでしょう。食事に来たお客さんが食い逃げをするとわかっていたら、レストランは料理を提供しないでしょう。娯楽産業は違法コピーが取り締まられなければ、作品を世に出さないでしょう。誰もが法律や警察に依存しているのです。
また何度も出てきますが多くの政策の目的は以下の2つになります。
①効率性を高めること(経済のパイを大きくすること)
経済学者は「見えざる手」だけで効率的に資源を配分を実現できない場合を市場の失敗と呼んでいます。その原因として、1人の行動が無関係な人間に不利益を及ぼす環境汚染のような状態、外部性や、個人が市場の価格を不当に左右することできる状態、市場支配力が原因として挙げられます。それらを規制し改善することが政府の役割です。

市場の失敗
市場が自分の力で資源を効率的に配分することに失敗した状態

外部性
ある人の行動が周囲の人の経済的厚生に、金銭の保証なく影響を及ぼすこと

市場支配力
1人もしくは数人の小集団が市場価格に対して実質的に持っている影響力

②公平性を高めること(パイの分配方法を変更すること)
「見えざる手」が効率的な結果をもたらしている場合でも、顕著な格差を生んでいる場合もありえます。世界最高のスポーツ選手と日本のサラリーマンの報酬異なるのは、スポーツの大会を見るために人々がより多くお金を支払うからに過ぎません。市場における報酬とは、人々が喜んでお金を支払うようなものを個々人が作り出せるかどうかによって決まっています。
すべての人が平等に食事に困らないようになること、適切な医療が受けられうようになることを「見えざる手」は保証してくれない。だからこそ政府が介入することで不平等を改善する必要もあるのです。

8. 一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している

世界全体や国内を見渡したときに、生活水準の格差というものがあるのは明らかです。高所得国の国民は低所得国の国民よりもたくさんテレビや車を所有し、栄養状態も高い。質の高い医療やサービスを受け、寿命も長い。これらの生活水準の格差はのほとんどは生産性の違いによって説明できます。

生産性
労働者が1人1時間あたりに生産する財・サービスの量

日本は労働生産性が低い国だとよく言われています。ビジネス本のコーナーに効率化の権化のようなタイトルの本がズラッと並んでいるのは、効率化の先にある生産性の向上こそがこの国の豊かさ、贅沢をできるかどうかを決定しているからではないでしょうか。

9. 政府が紙幣を「印刷しすぎると、物価が上昇する

1921年1月、ドイツの新聞の値段は0.3マルクでした。
1921年11月、新聞の値段は7000マルクになっていました。
その他の財の価格もすべて同じくらい上昇していたそうで、これはインフレーション(インフレ)という経済の全般的な価格上昇の最も劇的な例です。

インフレーション(インフレ)
経済において価格が全体として上昇すること

インフレは何によって引き起こされるのか。大幅で持続的なインフレのほとんどは、紙幣供給量の増大が原因です。政府が紙幣を印刷しすぎると貨幣の価値が下落する。ドイツにおいて物価が上昇していた頃、同じように貨幣の供給量が増大していました。(第一次世界大戦後の賠償金支払いのために山程紙幣を刷ったそう。)

10. 社会は、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している

長期的な視点で見ると、貨幣供給量の増大は物価の上昇に繋がります。一方短期的な視点で見たときに、貨幣供給量の増大はインフレと失業の短期的なトレードオフに繋がっています。分かりづらいですが、その流れは以下のとおりです。

貨幣量の増大は消費者の支出を刺激し、需要を増大させる。

需要の増大によって、企業は財やサービスの価格を引き上げ、
財やサービスの生産を増大させるために雇用を増やす。


雇用の増加は、失業の減少をもたらす。

つまり、インフレが起きないように貨幣の供給量を制限しようとすると、失業の減少を促す機会を失う可能性があるため、注意が必要だということです。でも皆さんは、10万円の給付金を貯蓄せずに使いましたか?

1. 人々はトレードオフ(相反する関係)に直面している
2. あるものの費用はそれを得るために放棄したものの価値である
3. 合理的な人々限界原理に基づいて考える
4. 人々は様々なインセンティブ(誘因)に反応する
5. 交易(取引)はすべての人々をより豊かにする
6. 通常、市場は経済活動を組織する良策である
7. 政府が市場のもたらす成果を改善できることもある
8. 一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している
9. 政府が紙幣を「印刷しすぎると、物価が上昇する
10.  社会は、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している

おわりに

はじめに僕は「経済」というものがよくわからないと言いましたが、なんだかその輪郭だけはつかめたような気がします。学習の記録としてまずは残すことができてよかったです。
社会にある限られた資源をいかに有効的に活用していくかを研究することで、どうすれば私達が幸せな生活を送ることができるのかを考える。それが経済学という学問でした。

ここまで読んでくれた方の中には、世の中はそんなに単純ではないと思ったこともあったでしょう。まさにその通りだと僕も思います。

世の中はもっともっと複雑だし、私達人間は頭ではわかっていても本能で動いてしまう、合理的ではない一面も持ち合わせています。
だからこそ大切なのは自分にとって大切なことを見極め、経済学以外の視点からも物事を判断する、ものさしを手に入れることだと思いました。

とりあえず、限られた時間と食材の中で、今日の晩御飯を楽しむ準備から始めてみます。

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