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ゲームデザインの視点から、DEATH STRANDING を神ゲーと呼ぶべき3つの理由

かなり久しぶりの更新になります!
ごぶさたしてます、こぶちです。

今日はタイトル通り、DEATH STRANDINGの話をしようと思います!

ちょうど発売してから約一年経つんですね…デススト。いやーおめでとうございます。時が経つの早すぎですね。

とはいえ、この1年に関していえば誰にとっても激動すぎて特にそう感じますよね。こんな世界になっちゃったからね…(ある意味そこに通じる話も後で出てきますが)

まあそんな記念すべき時期なので、あらためて記憶をさかのぼりデスストの記事を書いてみようと思います! 一年前とはいえやはりあのゲームの強烈な印象は今でも心に大きな感動を残していきました。私僭越ながらゲームデザイナー的視点から、記憶を掘じくり返しながらデスストが神ゲーだと言える3つのポイントについて解説していこうと思います!

以下、大したネタバレはありませんのでご安心ください!(たぶん)

1.「つながり」というテーマに対してあらゆるゲーム要素が「つながって」いる

あらためですがこのゲーム、なんといってもテーマが素晴らしいですよね!「つながり」をテーマに物語が紡がれているわけですが、ただそれだけではありません。あらゆる世界観設定が文字通りゲームシステムのひとつひとつと「つながって」いました。

・カイラル通信をつなぐことでマップ上の情報が増えたり。
・時雨(タイムフォール)を避けて、荷物や装備の劣化を計算しながら進めなければならなかったり。
・ビーチを介してファストトラベルを行えるようになったり。
・「いいね」という人々の評価が、直接「経験値」として扱われ能力アップにもつながっていったり。
・特殊な体であるサムの排泄物や血液がBTに対抗する「武器」になったり…
などなど。挙げていけばキリがありません。

この作品の「テーマ」(開発の現場ではよくコンセプトとも言ったりしますが)に対して、あらゆるゲームシステムを結びつけるというのは、当たり前と思うかもしれませんが、ゲームデザインとしてとても難易度が高いことです。しかしそれこそがゲームの面白さの本質を決めると私は思っています。
お話しが面白いとか、絵がいいとか、システムがすごいとか、ゲームの評価軸は色々あるじゃないかと、おっしゃる方もいるでしょう。

それもある意味正解デス。しかしそれだけではあくまで大きな重要なピースのひとつでしかありません。どんなにそのピースが優れていても、テーマとつながらなければ、その作品ならではの体験に貢献しなくなってしまうのです。逆にプレイする内容がそのテーマに対してまとまっていればいるほど、確実に没入できるんです。

そういう意味でこのデスストは、終始テーマに入り込んでゲームをインタラクティブに楽しめている感覚がありました。

それこそ発売当時、荷運びという遊びの切り口が斬新すぎて、「地味すぎじゃない?」「ただ荷物を運ぶことの何が楽しいの?」などの賛否両論ありましたが、私はこれはこれでいい、むしろこれこそが良かった、と感じています。ましてやアクションといえばバトルが当たり前の昨今のゲームの中で、あえてこういう新しい題材を遊びのコアとして採用したことに拍手を送りたいです。また後述はしますが、この荷運びの遊びはゲームデザインとしてはきっちり成立しています。

2.マップそのものに遊びがデザインされている

さて、その肝となる「荷運び」のゲーム部分ですが、私はただテーマに沿った行為を遊びの核に据えた、にとどまる話ではないと思っています。
もっと言うならば、このゲームは「オープンワールドであることの意義」をゲーム業界にあらためて問いかけたゲームといっても過言ではない、とすら思ったのです。

つまり、どういうことか?
それはこれまでのオープンワールドのゲームの歴史を振り返ってみるとわかります。

オープンワールドのゲームを初めて触ったとき、何に感動したか覚えていますか? 
遊び場がどこまでも広がっている。起きていることがどこまでもつながっている、見えていない場所でも何かが動き、世界が生きているような感覚。

おそらくこのあたりの魅力を特に広めた代表作のはGTAやスカイリムだったりすると思いますが。

しかし…その手のゲームが増えていく中で、我々はだんだんと気づいたこともありました。それは、「広い=面白い」ではないということです。

個人的には下記のゲームとかは最たる例です(深くはツッコミません。興味ある方はネットを掘ると色々出てくるのでドウゾお試しあれ)

実際にマップがシームレスでつながっていたとしても、ローディングを待たなくていいという点でストレス軽減こそあれ、そこにゲームデザインとしての直接的な意味はないのです。大抵は区画で遊びは閉じていたり、実はやることは強制されていたり、移動するにもファストトラベルがメインだったりと、そのマップの広さを活かした遊びを感じることが難しいゲームも多々ありました。
それができていないから面白くない、と言っているわけでは決してありません。別の工夫を凝らして素晴らしいゲームに昇華している作品もたくさんあります。

それこそ技術の向上やノウハウの洗練により、良いオープンワールドのゲームもいくつか生まれてきました。例えばリアルなニューヨークの街中を駆け抜ける感覚を実現したオープンワールドを活かした「スパイダーマン」。全ての場所に遊びを探す喜びを与えた「ゼルダBOW」。近年のオープンワールドゲームでは広大でシームレスに行き来できるマップに意味のあるゲームデザインが立て続けに現れ楽しませてくれたことは記憶に新しいです。

そんな中でも特にデスストはオープンワールドである意義を感じさせてくれる作品であったといいますか、その原点を示してくれているといっても過言ではないと感じました。

なぜなら、その地形が、そしてその移動ルートこそが、攻略すべき対象そのものだからです。足場がデコボコしてるからゆっくり歩いてみよう、傾斜がきついから梯子を立てかけてみよう、川が深そうだから橋をかけてみよう、など…マップの性質に対してプレイヤーの工夫を求める。そのスタートからゴールまで引かれた線そのものが、ひとつのパズルゲームを解いている感覚でした。特に所持しているリソースと、ゴールまでのルートを分析し、最適解を考える遊び…この感覚は私の中では実は「レミングス」が一番近いと感じているのですが、すごい達成感があるんですよね。
(ちなみにレミングスは神ゲームなので、知らない人は遊んで欲しい!ちなみにゲームセンターCXでもめちゃめちゃ魅力が伝わるからみてほしいデス!!)

さらにこのの経路自体が無数に存在する。つまりどのステージを遊ぶかも攻略の一部、ともいえます。

さらにさらにもっと言うと、届けるべき荷物の種類や量も自分でコントロールできるのです。つまり自分の目標すらも自分で調整する、ということなのです!

ぶっちゃけゲームデザイナー的な視点から言わせてもらえばそれ正気!?って感じなんですよ。絶対成立しないっしょ!デバッグ終わらないっしょ!って思っちゃいます(というか周りに言われてつぶされるのオチ)。そこは小島監督だからこそ押し切れたんだろうなーと思いますけど。とにかく遊びを調整するためのつまみが多すぎるし、凄く絡み合うんですよ。

ところがこのゲームはただユーザーを放り出しているわけでも決していないんです。やっているとわかりますが、なんとなく定石のルートはぼんやりと提示してくれますし、多少強引であっても十分クリアできるし、十分楽しめます。
移動機能の拡張はとても丁寧に設計されており、迷わないための遊びやすさの配慮はきちんとされているのです。
早く走れる⇒バイクで進める⇒車で進める⇒ソリで滑れる⇒ジップラインでひとっとびできる…これらの移動手段をきちんと手頃な要素に分解し、提供する順番をコントロールし、ユーザーが学習できるスムーズな体験をつくりあげていく。この丁寧さあってこそ、自由な遊びを提供しながらがギリギリで秩序を保っていられるんですね。

結果としてこのゲームには無限大の楽しみの幅と奥行きを感じさせることができたのではないでしょうか。それを成立させちゃったのがとにかくすごいデス! まさにオープンワールドが最初に見せようとした夢を叶えたのだと言い切っても大げさではないのではないでしょうか。

3.我々の今を「あまりにもリアルに」再現している

3点目ですが、ここだけはちょっと話の毛色が違います。ゲームデザインの方法論というよりも、そもそものテーマや素材の選び方に近い話です。ただそれもある意味ゲームデザイナーの範疇ですし、ディレクターを目指していく人々にとって大事な手続きのひとつだと思うので、ここで挙げさせてもらいます。
というか、やはりこの作品を語るならこれを言わなければならない。言わないわけにはいかない…ということでもう少しだけお付き合いください!

さてこのゲーム、発売が2019年の11月8日です。コロナ禍になる前に生まれたゲームです。
(武漢での感染流行のニュースが表沙汰になりはじめたのが12月くらいからですし、少なくともゲーム自体はこれよりも数年前から既に開発はスタートしていたわけです)

そんな発売から間もなく年明けから急激な流行をみせ、世界を一変するコロナウィルスのパンデミックが猛威を奮っていました。

そんなパンデミック後の我々の世界の状況が、ゲーム中のデスストランディング後の世界の状況とあまりにも酷似しているのです。

重要なネタバレは避けますが、ざっとこんな感じです↓

・パンデミック後、人々はコロナウィルスへの感染を恐れ、家に閉じこもることを余儀なくされた。
⇒デスストランディング後、BTとの接触によるヴォイドアウトを恐れた人類は、シェルターに逃げ込んだ。

・宅配業者が、今まで以上に巣ごもりする人々を支える重要なライフラインとなった
⇒ポーターが、シェルターに住む人々に物資を届ける重要な存在であった

・クラスター感染により、ひとたび爆発的に感染が特定の場所でおきれば、人々は遠ざかり、周辺地域の経済活動は停止する
⇒ヴォイドアウト(対消滅)がひとたび人の活動区域で起きれば、人も施設も全てがまるごと消滅する

などなど。これらって…まさにのデスストランディングの中で起きている事象そのものだと思いませんか?

もちろん、冷静にみれば社会情勢において保護主義的な分断は加速し始めていましたし、実際に下記のインタビューでも何かを意図的に取り込んだのではないにしろ、今を感じながら作品を作っていった結果そうなった、現実が作品に追い着いてしまったのではないか、というようなニュアンスで語られています。

いずれにせよ、このコロナによる世界的な危機を予期した人は誰一人いなかったでしょう。人々が、外に出ることを恐れ、接触におびえ、それでもなおつながりを求めるような…そんな世界。

ですが、現実に今世界はそうなっているのです。デスストランディングの世界がそうであるように。

大げさかもしれませんが、あらためてこのゲームは、これからの私たちの生き方に対してひとつの答えを示してくれたような気もしてなりません。実際にエンディングまで到達した私の感想として、この作品がこれから生きていく人類に伝えたい、未来へと希望をつなぐためにすべきことや考え方を示した小島監督なりのメッセージなのではないかと思いました。

思えば私も過去に数多く生きる力をもらえる作品に出会ってきました。そのおかげで今こうしてゲームを作る立場となり、自分で言うのもおこがたしいですが、何かを恩返ししたい気持ちも少なからずあります。

その真意はともかく、生きる意味まで踏み込んで考えさえてくれた作品、それがデスストランディング。暇つぶしのゲームもいいけど、やっぱりこういう心を揺さぶられる作品があるから大人になってもゲームはやめられない!って思っちゃいますね。ぜひ未プレイの人はこれを機会にプレイして欲しいなあと思います。今初見の人がいればそれはそれで逆にうらやましい。よりいっそうリアリティを感じること間違いなしです!

まとめ

というわけで…以上デスストランディングの神がかっている点を、3点にしぼってお伝えしてみました。

1.テーマに対してあらゆるゲーム要素がまとまっていて神!
2.マップそのものに遊びがデザインがされていて神!
3.今のご時世を予言していたかのような設定が神!

さて、他人事のように神神言ってきましたけど、私もいちクリエイターとして、頑張って小島監督の爪の垢を百倍くらいに希釈して煎じて飲んだと言えるくらいの何かを、いつか多くの人に届けたいもんです。まったく。改めて身が引き締まる思いデス!
(※ちなみに今日はおしり探偵的な遊び心で語尾に「デス」を文中にいくつか散りばめてみました。…最後の最後に激しくどうでもいい話ですね。ほんとスミマセン!)

さて…この記事を最後まで読んでくれた方、本当にありがとうございました。ここまで読んでくれたあなたとは、少なくとも私の伝えたい思いが「つながった」と信じております。
今後も未来に不安を感じたときはDEATH STRANDINGのことを思い出し、現実社会と向き合い、しぶとく楽しみながら生き抜いていきたいとあらためて心に誓いました。ではまた!

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