見出し画像

讃岐の誘惑:3 /ジョージナカシマ記念館

承前

 香川県は戦後、時の知事の主導で「讃岐民具連」という工芸・デザイン運動を推し進めたことがある。ノグチもこれに関わったが、運動の中心的存在だったのが彫刻家の流政行と家具デザイナーのジョージ・ナカシマ。ふたりの記念館も、ノグチの美術館と同じく庵治半島にある。
 とりわけ、ジョージ・ナカシマには格別の興味がある。日系アメリカ人二世の彼は、香川の桜製作所をパートナーにすぐれた木の椅子を製作した。彼もまたノグチと同様にこの土地の縁者ではなかったが、讃岐に根づく素材と加工技術に魅せられた異邦人であった。
 ナカシマの代名詞は、なんといっても「コノイドチェア」。広くゆったりとした座面に腰を下ろす安心感。もたれかけた背を受けとめるスポークのやさしさ。大木のぬくもりを体現するかのような名作椅子だ。
 コノイドチェアに初めて出合ったのは、大学時代のアルバイト先。応接間にコノイドチェアのセットがしつらえられていた。掃除をするときは重くて面倒だったが、コノイドチェアで休憩をとり、店主と語らった緩慢な時間がわたしには忘れられない。
 ハイクラスのラウンジやバーに行くと、ナカシマの家具がよく使われている。大好きな銀座のバーもそのひとつ。ナカシマの「ニューチェアアーム」に身を預け、木目を撫でまわしながら飲む一杯は格別である。いつかは自宅にも欲しい、あこがれの椅子だ。
 そんな思い入れの深いナカシマの椅子は、ここ香川の桜製作所で製作された。桜製作所の内部に「ジョージナカシマ記念館」がある。ここに行けば、ジョージ・ナカシマの代表作が通観できる。おそらく、座れもするのだろう。行きたい。本当に行きたい。

 他にも、イサム・ノグチやジョージ・ナカシマのお仲間でもあった丹下健三設計の香川県庁東館の見学ツアーや栗林公園内の讃岐民藝館、民具連のメンバーが集った居酒屋や喫茶店など、訪れたいスポットは枚挙にいとまがない。 
 というわけで、「ポイント3」は「アートとデザイン」であった。(つづく


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?