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藤牧義夫と館林:17 『眞偽』のこと① /館林市立第一資料館

承前

 これまで16回にわたって書き綴ってきた「藤牧義夫と館林」。
 思いのほか長くなってしまったが、今回と次回で締めるとしたい。

 第1回の更新は3月15日、展覧会を観てから9日後のことだった。
 なぜそこまで時間が開いてしまったかというと、藤牧義夫について書くならば、大谷芳久さんの大著『藤牧義夫 眞偽』(学藝書院、2010年。以下『眞偽』)を通読してからにすべきではないかと逡巡していたためだ。
 大谷さんは藤牧義夫再評価の先鞭をつけた「かんらん舎」の画廊主で、本書は研究の集大成。言及される範囲は美術史研究の域内にとどまらず、世にはばかる義夫への誤解、隠蔽された真実、そして真贋の問題に深く斬りこんでおり、義夫を語るには避けて通れない一冊だ。
 とはいっても、『眞偽』は514ページにも及ぶ文字通りの大著。版元では品切れ増刷未定で入手不可能、古本屋では12万円。献本先の大型図書館や美術館の図書室などで、ちょっとずつ見せてもらうほかはない。
 うかうかしていては、展覧会の印象・記憶の鮮明なうちには書ききれないどころか、書きはじめすらできない……
 幸いなことに、ノンフィクション『君は隅田川に消えたのか』には『眞偽』のエッセンスのみがかいつまんでまとめられており、こちらは何度か通読しているし、展覧会に向けてもう一度読んでもいる……といったこともあって、大変恥ずかしながら見切り発車とさせていただいた。
 そのため、自分の見解として書いたことが『眞偽』にすでに書かれていたり、あるいはきっぱりと否定されていたり、疑問を呈した点が解決済みであったりといったことも、起こっていたはずだ。
 つまりこのシリーズ記事は、『眞偽』をちゃんと読む以前の人が、自分なりに感じ、考えたことのメモ書き程度だと受け止めていただければよいかと思う(いまさらだけれど)。
 もちろん、『眞偽』に書いてあることがすなわち答えであるかというと、そうともいえないだろう。しかし、いま出ている最も答えに近い答えは、きっと『眞偽』にある。
 答え合わせができたら、その成果をまたこちらに出させていただくとしたい。(つづく)



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