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藤牧義夫と館林:16 地図にない碑 /館林市立第一資料館

承前

 前回「ゆかりの地めぐり」を称しながら、大事なところが抜けているではないか!……とお気づきの方もいらっしゃったかもしれない。つつじが岡公園内に立つ「藤牧義夫版画碑」である。

藤牧義夫版画碑

 建立の経緯は『君は隅田川に消えたのか』に詳しい。いまとなっては “いわくつき” の碑ゆえに、「ゆかりの地」とは少し違うかなとも思い、別枠での紹介とした。
 金属分の白い汚れが哀愁をそそる。建立当時は碑の向こう側に城沼が見え、絵と突き合わせられたようだが、現在は樹木が生い茂って見えない。
 この版画碑を探し当てるまでも、ひと苦労であった。正確な位置を示す情報は、市の観光情報に記載なし。ウェブにも落ちておらず、なんとGoogleマップでも出てこない(執筆時点)。「つつじが岡公園の中」「旧秋元別邸のすぐ脇」という断片的な情報を頼りに、旧秋元別邸の周囲を歩きまわったところ、発見できた。
 こちらも、いつの日か訪れんとする方のために、位置を示しておくとしたい。以下の写真が、版画碑から旧秋元別邸を見たもの。これでおおよその位置がおわかりいただけるだろう。

版画碑から旧秋元別邸を望む

 ※Googleマップ上では影も形もなく、正確な位置が指し示せないため登録を割愛
 ※住所は「尾曳町」。尾曳稲荷神社も近い

 なお、義夫ゆかりの碑としてはもうひとつ、「館林城千貫門跡の碑」がある。館林城の往時の姿を示す資料として、『三岳画集』所載の絵が掲出されているのだ。
 中学生のときに描いた絵が「館林を代表する芸術家」(碑文より)の作品として石碑にはめこまれるとは……考えてもみなかっただろう。こちらの碑は、館林市立第一資料館の近くに立っている。

館林城千貫門跡の碑

 この碑にかぎっては城跡の記念碑としてGoogleマップにも載っているが、ここまで紹介してきたどの「ゆかりの地」も、観光ガイドやGoogleマップには掲載されていない。市の観光協会が作成したつつじが岡公園のマップには、版画碑の存在すらない……

 藤牧義夫についてはまだまだ「知る人ぞ知る」存在とはいえ、《隅田川絵巻》がどこかで展示に出るたびに反響を呼ぶし、「日曜美術館」や「美の巨人たち」で単独で取り上げられてもいる。そしてその《隅田川絵巻》の1巻分は、ここ館林にあるのだ。
 ゆかりの地を整備して、観光資源として活用できる芽はじゅうぶんにありそうなものだが……今回の展覧会がきっかけとなり、地元が率先して観光振興に舵を切って、作家の顕彰につながっていけばいいなと思う。


 ※旧秋元別邸が、4月からお食事処になるとのこと。観光振興に期待

 ※版画碑の隣には、「館林かるた」の碑もあった。「さ」の札



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