藤牧義夫と館林:9 藤牧義夫の「編集力」⑤ /館林市立第一資料館
(承前)
古美術の鑑賞に馴れ親しんでいると、《隅田川絵巻》の、絵巻の体裁をとって風景を描きつらねていきながら、季節や時間を感じさせる描写が明確にみられない点が引っかかるもの。
肖像画でもないかぎり、日本絵画では、なにがしかの季節を感じさせる事物が描きこまれる。絵図のような記録性の高いものにすら桜が咲き、紅葉をみせるほど。絵巻や屏風のような大画面の作例ともなると、四季折々の風物を異時同図で同居させることが珍しくない。ところがこの長大な《隅田川絵巻》には、そういった要素が見