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お地蔵さんのお着替え式:1 /奈良・伝香寺

 2年前の7月23日も、今年の7月23日も、わたしは奈良にいた——それは、けっして偶然ではない。

 7月23日は、お地蔵さんの縁日「地蔵盆」。
 東国ではなじみが薄いものの、近畿地方では「子どものためのお盆」として定着しており、お子様の健やかな成長を祈る行事が各地で催される。時節柄、夏祭りと組み合わされることも多い。
 春日大社本殿に祀られる四神のうち、第三殿の天児屋根命(あめのこやねのみこと)の本地仏は地蔵菩薩とされている。そのため、春日信仰に由来する地蔵菩薩の造形が、奈良の地には豊富に残された。
 地蔵盆の夜、ならまちの福智院や十輪院は遅くまで門戸を開き、お地蔵さんの参拝者を迎えている。そして、JR奈良駅寄りの伝香寺では、お地蔵さんの御開帳と「着せ替え法要」がおこなわれるのだ。
 伝香寺の《地蔵菩薩立像》(鎌倉時代・安貞2年〈1228〉 重文)は、真っ裸の姿をした「裸形(らぎょう)」のほとけさまであり、織物の装束を着せられた状態でお祀りされている。別名「はだか地蔵尊」。
 その年に一度の「お着換え」をする法要が、地蔵盆の夕べに開催されるのである。

 2年前は、感染拡大の影響で縁者のみの縮小開催となっていたのだが、そのことをわたしは現地で初めて知った。
 奈良観光の情報サイト「祈りの回廊」はもちろん、調べたかぎりネット上のどこにも情報が出ておらず、文字通り、ご縁がなかった。境内には幼稚園を併設していることもあり、慎重な対応は致し方あるまい……旅の目的はそれだけではなかったので、ここはすっぱりあきらめ、踵を返したその足で近くのおでん屋の暖簾をくぐったのだった。

伝香寺の表門(天正頃 奈良県指定文化財)。大提灯に「はだか地蔵尊」とある。2年前の写真
今年。まったく意図せず、同じ位置から写真を撮っていた

 同じ轍は踏むまいと、今年は事前の情報収集を徹底。以下の投稿をキャッチして、奈良へと向かった。

 昼過ぎ、下見がてら伝香寺の前を通ると、上記の時間をキャッチできなかった拝観希望の方が、受付の方に食ってかかっていた。「祈りの回廊」には載っていなかった、とのこと。
 たしかに、「祈りの回廊」(下記リンク)に御開帳の時間は明記されておらず、通常の拝観時間(9:00~17:00)が下のほうに書いてあって、少々紛らわしくはある。みほとけに関わることゆえ、穏やかにされたいものだが……わかる、わかるよ……


 ——それはさておき、上の2つのリンクの画像を見較べていただくと一目瞭然、着衣の色が異なっているではないか。
 聞けば、毎年違った色の衣が用意されており、どんな色かは法要までのお楽しみとのこと。
 新しい装束のことを考えながら、開門まで、氷室神社や奈良博など、ほうぼうをうろついて過ごすのであった。(つづく

伝香寺の北門。こちらが受付


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