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顕神の夢 ー幻視の表現者ー:4 /川崎市岡本太郎美術館

承前

 本展の出品作家には、村山槐多や関根正二、それに岡本太郎といったすでに美術史上に名のある作家から、宗教者(出口なお、出口王仁三郎など)、本流から外れてはいるが忘れがたい描き手(牧島如鳩、佐藤溪など)とともに、前回取り上げた三宅一樹さんのような現在活動中の作家さんも含まれている。
 筆者はコンテンポラリーにはさほど明るくないので、すぐれた現代作家の仕事を見せてくれるこのようなオムニバス企画は、見本市的な気分で楽しむことができてありがたい。出品作家中で最も若い花沢忍さん(1989年生まれ)は、とくに注目していきたい作家と思われた。

 その花沢さんと同じ年に生まれたのが、中園孔二さん。恥ずかしながら存じ上げなかったのだが、変幻自在のなかに芯の通った世界観をもつすぐれたアーティストで、目をみはるものがあった。
  「幻視」そのものを示す作品群は、展示の最終盤に位置取られていた。本展は、中園さんの作品を前提とした展覧会だったのではとも思われた。
 たいへん惜しまれることに、すでにこの世の人ではない。この機会に知ることができてよかった。

 ※中園孔二さん初の大回顧展が、香川は丸亀で開催中。東京に来ますかしら。


 ——会場までは、岡本太郎の常設展示を経なければたどり着くことができない。
 館内には、特撮番組の「タローマン」を観たであろう子どもたちがたくさんいた。

 タローの宇宙にテンションアゲアゲだったところ、本展の会場に入ったとたんに「なんかこわいよ……」と早足になる——あるお子さんのそんな光景を、わたしはたまたま見かけてしまった。
 子どもにはいささか刺激の強いものを見せてしまったなぁという気もするが、これも一種の社会勉強であろう。
 タローだって、本展の出品作家。ヘンテコにみえるかたちは、煮えたぎる情念や、作者が確かにみた「幻視」の顕現なのだ。
 本展の出品作家は50人におよぶ。50人それぞれ、作品それぞれの「幻」の表現が、展示されている。
 駆けていったお子さんを目で追うことはしなかったが、きっと会場内のどこかで自分の気になる作品を見つけ、立ち止まってくれたことだろうと思う。
 本展はお子さんのいうとおりに「こわい」し、人によっては「気持ち悪い」と感じるかもしれないが、懐は深い展示である。
 川崎での開催は、いよいよ今週まで。


 ※花沢忍さんの、自作を前にしたギャラリートーク。

 ※「ほぼ日」の中園さんの記事。


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