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藤牧義夫と館林:18 『眞偽』のこと② /館林市立第一資料館

承前

 館林市立第一資料館「藤牧義夫と館林」展に関して気がかりだったのは、同館が所蔵する版画《給油所》がどのように扱われるかということ。
 《給油所》は帝展入選作。同館の所蔵品は義夫の遺族からの寄贈によるもので、入選作そのものとされてきたが、大谷さんによる詳らかな分析を経て真作ではないと結論づけられている。伝来に関しても、もとから遺族が持っていたものではなく、さる御仁の紹介で購入を持ち掛けられたものという。
 館蔵品である《給油所》は、展示されるか、されないか。展示されるとしたら、どんな表記になるのか。
 会場で確かめてみると、館の出した答えは「【参考資料】として展示」であった。
 【参考資料】の《給油所》は、大谷さんの指摘どおり、色みが非常にどぎつい。帝展入選当時の絵はがきと見較べても、図柄に異同がある。そのことを、この目でもはっきりと確認することができた。

 このように『君は隅田川に消えたのか』を予習として読み返しておくだけでも、本展をよりいっそう楽しむことができた。
 きっと『眞偽』を通読できていれば、さらにまた数倍は楽しめたに違いないのだが……それはまた、次の機会のお楽しみということで。

 ところでその「次の機会」、いつになるだろう。
 メモリアルイヤーである「生誕120年」=2032年だろうか。後ろを起点として「失踪90年」=2025年……苦しいか。
 江戸博あたりが《隅田川絵巻》を徹底解剖してくれると、よい企画になりそうだ。すみだ北斎美術館で北斎《隅田川両岸一覧》との比較もいい。町田の版画美術館や千葉市美で、新版画集団の企画を温めていてもおかしくはないし、練馬の線もあるか。
 いつどこから来てもいいように、早いところ『眞偽』でよくよくお勉強しなければ……

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