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攻める、アーティゾン美術館 :2

承前

 石橋美術館別館が閉館するとの報に接したとき、リニューアルの資金調達のため、東洋古美術がオークションにかけられる展開がよぎったものだが……どっこい、この分野は間引かれるどころか、名品がどんどん買い足されている。
 今回の展覧会「はじまりから、いま」では《平治物語絵巻 常磐巻》(鎌倉時代、重要文化財)が初公開。国宝の《平治物語絵巻》とは別系統で、制作年代はそう違わず、古くから知られていたもの。全長は16メートル超!
 石橋財団ではすでに国宝と同系統の《平治物語絵巻》の一部を所蔵していて、こちらもあわせて展示される。

 《平治》が出る。
 そのことは事前情報で得ていて、これだけでも行く価値はありそうだなと感じていたのだが……あとひと押し、なにかもうひとつくらい魅かれる要素があれば――そう思っていたところ、例の山手線の巨大看板のなかに、わたしにとっての新情報が転がっていた。
 《平治》の画像の隣に、おなじみの線画が配されている。
 あれ? なぜここに……?
 キャプションの小さな文字で、状況が呑み込めた。

 《鳥獣戯画断簡

 高山寺から散逸し、軸装に仕立てられた《鳥獣戯画》の一部が展示されているというのだ。
 この断簡は、昨年の東博「国宝 鳥獣戯画のすべて」にも出ていたもの。
 その時点では所蔵者名は伏せられていたので、今回はアーティゾン美術館の所蔵品としての初お披露目ということになる。

 がぜん、行きたい気持ちが高まってきた。

 恥を忍んで申し上げると、本展に関しては「ああ、名品展ね」と流してしまっていた。これからは、リリースは端から端まで注意深く読むようにしよう……
 もちろん「名品展」たる本展では、館を代表するさまざまな分野のいい作品を、浴びるように観ることができもする。
 一日かけて、腰を据えて鑑賞にあたるとしようか。


 ※「アーティゾン美術館」の、呼びやすい適当な略称はないものだろうか。「ブリヂストン美術館」のことは「ブリ美」と呼ぶ人もいた(初めて耳にしたときは爆笑した)。「アーティゾン美術館」は「アー美」? それとも「ゾン美」……?
 ※コレクションの核からはずれた収蔵品をオークションにかけてリニューアルオープンの資金調達をした例としては、根津美術館や藤田美術館が挙げられる
 ※ボストン美術館所蔵の国宝《平治物語絵巻》の片割れ《三条殿夜討巻》は、この夏に開催される東京都美術館「ボストン美術館展 芸術×力」で里帰り予定
 ※《鳥獣人物戯画》の断簡は、確認されているものが現在5点。詳しくは下記


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