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TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション:3/東京国立近代美術館

承前

 本展に《青い鳥》が出ているキュビスムの画家、ジャン・メッツァンジェ。
 本人はなにも悪くないものの、最近お騒がせである(下記リンク)。

 はからずもタイムリーな出品となってしまったが、メッツァンジェの作品が日本の美術館で公開されることじたい、あまりない。上の一件があったので「さらに少なくなった」ともいえる? とにかく、今回は貴重な機会といえよう。

 日本人作家のなかにも同様に、あまりみかけない作家が何人かいた。
 それどころか、初めて名前を聞く画家も。辻永(つじ・ひさし  1884~1974)である。
 リーフレットでみた《椿と仔山羊》(1916年  東京国立近代美術館)がとてもよく、すぐに名前を調べた。会場で拝見し、さらにぞっこん。子ヤギ、カワイイ。

 辻は、飼っていた子ヤギを、好んでモチーフにしたそうだ。水戸の人で、一昨年、茨城県近代美術館で回顧展があったらしい。こんな画家がいたのだなぁ。


 バラエティに富む本展では、このような未知の収穫が見込めるいっぽうで、各館の特徴を存分に示す知名度の高い作品も、期待にたがわず出まくっていたのだった。
 佐伯祐三は、大阪中之島美術館が誇る最高のコレクションから2点、東近美からは1点。数字にすると少ないけども、展示室では序盤に3点が集中してインパクト大、「プチ佐伯展か!?」といった雰囲気すら漂わせていた。
 佐伯といえば、パリを描いた画家。パリ市立近代美術館とコラボする本展には打ってつけで、出しやすい作家でもあろう。

佐伯祐三 《レストラン(オテル・デュ・マルシェ)》(1927年  大阪中之島美術館)
部分図。誰もいないテーブルの上に、赤ワインの入ったグラスが残されている。意味深
佐伯祐三 《ガス灯と広告》
(1927年  東京国立近代美術館)

 佐伯をはじめ、大阪中之島美術館にはすばらしいコレクションがまだまだあるのだけれど、あそこの美術館には、コレクション展示のためのスペースが設けられていない。あえて企画展のみで回しており、コレクションはそのなかで活用されたり、されなかったり。
 東京都美術館や国立新美術館、あべのハルカス美術館など、企画展のみで回し、館蔵品を持たない美術館はいくつかある。
 だが、大阪中之島美術館はいいものをちゃんと、たくさん持っている。それらの館とは勝手が違うわけだが……
 本展は、そんな大阪中之島美術館の秘められたコレクションを多数拝見できる、じつは稀少なチャンスでもあるのだ。

 いっぽうで、控えめな分野もあった。
 まず、形態でいえば、9割近くが絵画や写真といった平面となっている。
 立体の作品は、彫刻がブランクーシにアルプ、カルダーなど、あとは倉俣史朗の椅子《ミス・ブランチ》くらいだ。

ジャン・アルプ《植物のトルソ》
(1959年  大阪中之島美術館)

 さらに意外だったのは、日本画が数例を除いてほぼなかったこと。割合でいえば、立体作品よりも少なかった。東近美の名品も、中之島の大阪画壇の名作も、ちょびっとだけ。
 本展はむろん、パリでも開催される。その折には、より「日本」らしい日本画こそが求められるのではと、はた目からは思えてしまう。
 もしかすると、パリ市立近代美術館では、展示環境などの問題で軸物や屏風がうまく扱えないのかもしれない。真相不明。
 本展への来場を希望される日本画ファンの方は、事前に作品リストに目をとおしてみることをおすすめしたい。

 ともあれ、近代美術をめぐるテーマや視座をていねいに整理し、鑑賞への扉を開いていくためのカギを提供してくれる本展。ビギナーからベテランまで楽しめそうな展覧会だ。

 8月25日まで東京国立近代美術館、そのあと9月14日から来年の12月8日まで大阪中之島美術館で開催。



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