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パートナーを独占したからって100%満足できるわけじゃない

関西の田舎から大阪に出てきて初めてできた彼氏との初めてのクリスマスなのになぜか彼と連絡が取れず、彼の親友に電話したら「いま隣で一緒に麻雀してるけど?」と言われた。

その大阪で数年後に付き合いはじめた同じ夜職の彼氏の店には、仕事が終わったら毎晩のようにせっせと飲みに通っていた。閉店まで居座り、全ての客が帰ってミーティングも終わって彼の家に一緒に帰るまで安心できなくて、店に行けない日は某掲示板サイトで他の女の影がないかひとりこそこそチェックするのが寝る前の日課だった。

従業員を住まわせてるからと頑なに私を家に呼ばない4つ上のIT社長にとって私はいったい何番目だったのか知らないけど、アメリカ土産だから選んでと言われて覗いた紙袋の中には4つのバッグが入っていたから、少なくとも私以外にあと3人はいたんだろうことはわかっていた。


誕生日とかクリスマスはちゃんとお祝いしてほしい。仕事が終わったら誰とどこに行くのかちゃんと連絡してほしい。休日はもれなく会いたいし、忙しくて時間がないなら一緒に暮らしたい。私のほかに付き合っている子も入れ込んでるキャバ嬢も一切いないって言ってほしいし、言ったら確信できるまで証明し続けてほしい。

16歳で親の庇護から解放されていた私はあるていど何にでも挑戦できたし、お金もそこそこあったからそこそこのものは自分で買えたけど、唯一と言っていいぐらい満足に手に入れられなかったのが彼らの時間と心身だった。


もしも自分の好きな人が自分のことだけを想い見つめてくれたら、たぶん鬱も治るし、100%幸せになれるはずだった。

だから私はここぞとばかりに負けず嫌いを発揮して「蝶々」の恋愛本を読み漁り、くだらない駆け引きを試みたり、自分磨きをはじめたり、星占いにハマったりもした。

ただ恋愛というのは案外、努力しない者の方が報われたりする不条理な世界だったりするので、私のそれが成果に結びつくことはまずなく、次第に努力の方向性は脱線し、彼のFacebookの友人をしらみ潰しにチェックしたり、手間・ひま・カネをかけて会い行ったら追い返されたり、ヤケになってミナミのど真ん中で涙したりした。


それから何年か経ち、彼氏にも結婚にもさして興味がなくなりいい感じにスレてきたところでふいに出会いが転がり込み、私はかつて欲しくて欲しくて仕方がなかったものを思いのほかあっさり手に入れることができた。

はずなのに、どうも100%満足とはいっていないから人生ってよくわからない。



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