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たのしいたのしいお酒の話vol.2 │下戸編

前回記事

不調法でも酩酊したい!
下戸の皆さま、たまにはそう思いませんか?

本noteの共同執筆者であるtaroくんは人並みに飲める方であるため、ご飯などで席を共にすると葡萄酒や麦酒、ウィスキーなどをそれはもう美味しそうにがぶがぶ干すのである。
一方自分は、ジョッキ一杯で悪心、”ほろ酔い”で昏睡、ウィスキーは火をつけて遊べるお水、それより高濃度なものは消毒液だと認識している。
とはいえ酒を飲むくらいなら病院の床を舐めてる方がマシだと思う一方で、やはり寂しさを感じるもの。映画好きな自分にとってはスキットルをあおる開拓時代のガンマンなんか様になってるなと憧れる。
そうでなくとも、食料雑貨店の酒類コーナーには世界中のメーカーが血涙の努力の末に世に送り出した美酒や名酒の品々が並ぶわけだ。これほどまでに情熱を集めるものをたかだか体質だの遺伝子だのの問題でまともに楽しめないのははっきり言って人生の損ではないだろうか。
そこで今回は、特別に下戸柱のぼくが、同じく飲めない皆さまの育手となりまして、飲めない人にも楽しめる戦技を授けよう。
くれぐれも、きつめのやばい酒で呑みすぎ無惨なことにならないように。
それでは鬼ころし!


下戸の呼吸、壱ノ型 火酒一匙 (かしゅいっし)

ウィスキーやブランデー、焼酎などのアルコール度数の強い蒸留酒全般を火酒と言う。とくにウィスキーをこのように表現することが多いよう。
この技は文字通り、スプーン一杯のウィスキーを他の飲み物に混ぜる下戸の呼吸の基本の型である。飲み物は基本的に水以外ならなんでも構わないけれど、ぼくのオススメはホットミルクティーだ。
アルコールの苦味とウィスキーの木樽の香りが紅茶とともに鼻腔を官能的にくすぐってくる。アルコールの薬っぽさもひと匙程度の量であれば気にならず、たちまち素晴らしいエッセンスに様変わりだ。調子にのって大量に入れてしまうとあれよあれよとミルクティー割のウィスキーになってしまうのでちょっと強気の下戸さんも無理はふた匙で留めておこう。

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下戸の呼吸、弐ノ型 洋菓命水零 (ようかめいすいれい)

ウィスキーの語源はラテン語 aqua vitae 、命の水に由来する。洋菓命水零はその名の通り、パンケーキにウィスキーを垂らすという下戸の呼吸壱ノ型の発展系である。
聞こえてくるよ。また、ウィスキーかよという声が。ワインでもいいけれど、果実酒を洋菓子にかけるのってご飯にふりかけかけるのと同じだぜ?お前はそれで本当に酒を嗜んでるつもりかよボーイ?←飲めない人。
さて。パンケーキはショートケーキでもカステラでも良い。なんならどら焼きも合うかもしれない。とにかくスポンジ系のお菓子の表面がさっとお酒で湿っていることが肝要だ。
口にほうばった途端に広がるのは、洋菓子そのものの甘さとその中に調和されたアルコールの苦味である。そのまま食べれば子供のおやつであるこれらが、その瞬間に大人の休息時間に変わるのはもはや魔法と言えるだろう。フォークで切り取った立方体のふわふわが君たちを戦いの記憶から遠ざけてくれることは間違いない。

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下戸の呼吸、参ノ型  酒池肉林 (しゅちにくりん)

鮭とばの日本酒漬けをビーフジャーキーでやろうぜというなかなかに益荒男振りな発想のこの技は、まーあ、期待を裏切らない美味しさだと思う。ジャーキーは鮭とばよりも塩気が漬け汁に逃げやすいので、多少の塩胡椒や昆布を同時につけると丁度良い味わいになる。これをつけて一晩寝かせたタッパーを開いたら、もう辛抱たまらん。そのまま漬けたジャーキーを鼻の穴に突っ込んでずっと深呼吸していたいくらいに美味しそうな匂いを発している。つけた酒は料理にも使えるので応用の多い技だ。

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(日本酒に24時間漬けた鮭とばとビーフジャーキー。水分を吸っている分厚みが増してボリュームを感じる)


下戸の呼吸、肆ノ型  奥義月下氷浸 (おうぎげっかひょうしん)

バニラアイスで日本酒をひたひたにする。これだけ。
そもそも、日本酒の原料は日本人の心、米である。なぜアメリカが米国で、日本がジャ”パン”なのか、なぜボケ老人はいるのにツッコミ老人はいないのか、なぜ、野菜ばなれはかーちゃんに叱られるのに肉ばなれは心配されるのか。これらの疑問は並んで長年の研究課題ではあるが、ここでは目をつぶろう。
肝要なのはすなわち、神代から現代に至るまで炭水化物と炭水化物はズッ友だったということである。時が経ち、姿形が変わろうとも遺伝子に刻まれた彼らの絆は不滅であり、ここに、バニラアイスと日本酒という形を以って再び邂逅したのだ。この出会いは、故事にある赤い縄で結ばれた男女の如く、そうあるべくして巡り合った究極の組み合わせである。とにかく騙されたと思って今すぐコンビニへ行こう。ぼくの伝えたい意味がきっとわかる。そして、あなたはあなたの生涯の中でおそらく最も尊い瞬間に立ち会うはずだ。

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以上、下戸の呼吸の技の数々はさまざまなアレンジが加えられるだろう。例えば、参ノ型 酒池肉林は漬けたジャーキーを今度は火で炙ってみると香りが増し、暖かくなったおかげでまるで焼き肉のような味わいになる。また、甘味との組み合わせが多いのはアルコールを体内で分解する際に糖分が消費されるため、お酒に弱いぼくたちでも少しはまともに楽しめるという合理性に基づいている。
さあ、これで今日からあなたもドランカー。恐れずお酒を楽しもう。

(kobo)

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タイトル

https://pixabay.com/ja/photos/バー-パブ-居酒屋-ボトル-918541/

ミルクティー

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パンケーキ

https://pixabay.com/ja/photos/パンケーキ-料理人-ケーキ-1512834/




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