見出し画像

RPGのサポート職、特にデバッファーって慣れたプレイヤーじゃないと難しいよねという話-後編

そもそもなぜ、敵はデバフに耐性を持つのか。


 一作目の真•女神転生はこの時代のゲームの例に漏れず嫌がらせのように難しい。当時のプラットフォームの描画能力も相まって、マップは無機質で現在位置が分かりにくくまた、道中登場する敵はその時に到達し得る主人公たちの適正レベルを10以上も超える場合があり、遭遇したら最後、死ぬか逃げるかしかない。だが、ボスはといえば結構あっさりとクリアできたりする。というのも妨害系の魔法に耐性が設定されていないからだ。

 女神転生にはシバブーやバインドボイスという、敵を行動不能にできる魔法,スキルがあり、何と一作目ではこれがボスに効いたのだ。どんなに強くても、行動をスキップしてしまえばただのサンドバッグである。
つまりデバフはデバフというその一点に置いてゲームバランスを左右するほどの強さが秘められているのだ。
 上記はそもそも行動不能という極端なデバフ能力であるが、例えばステータスの一部を低下させる能力もゲームの内部計算的には強力すぎる場合もある。

 ドラクエ6でテリーが仲間になったとき、あなたは多分ガッカリしたのではないだろうか。ボスとして登場した時はあれだけ主人公相手に獅子奮迅の戦いぶりを見せたにも関わらず、仲間になるとドランゴ引換券などという不名誉な烙印を押されるほどには、その時のパーティの中で活躍できる力を持たない。個人的にはリメイク版でも、ミレーユと似たり寄ったりな能力なのでミレーユを優先的に育てたい場合はパーティでの採用率は高くないだろう。

 プレイアブルキャラクターと敵キャラクターのステータスは設定上大きく異なる。
クロノトリガーの魔王、ドラクエ8の呪われしゼシカ、敵→味方、味方→敵はRPGでは最高にアツい展開であるため、例は枚挙にいとまがない。だが、例えば対人対戦要素のあるゲームでもなければ、ゲームバランス上敵キャラクターの方がプレイアブルキャラクターよりも遥かに高くパラメータが設定されているものである。そうでなければ戦いがいのない敵にしかならない。

 これがデバフ能力となると深刻な話になる。戦闘時のログメッセージの表記が何にせよ。デバフ能力の処理が固定の実数値分の低下でないく割合だった場合、デバフがかかる数字が大きければ大きいほどデバフ能力は大きくならざるを得ない。

防御力の10%を低下させる能力の場合
防御力100のキャラクターは10低下するが、
防御力1000のキャラクターは100低下することになる。同じ能力にも関わらず、かけられる対象のステータスが異なるだけで効力は十倍異なる。これがゲームバランスという文脈に置いてどれだけ大きな影響をもたらすかは明白だろう。

デバフはデバフという一点に置いてすでに強力なのだ。

したがって開発においてゲーム性を損なわない範囲でデバフ能力を導入するためにとられる手段が既出も含む次のものだ。

•デバフに対して敵に耐性を持たせる。(確率無効、完全無効)

•低下効果に制限を設ける。(最低まで下がっても、元のステータスのn%まで)

•効果持続時間を短くする(効果を受けてからxターンのみ)

上記のようなレギュレーションの組み合わせによって初めてゲーム内での有用性を保ちつ実装される。

 だが、これ故に掲題のテーマに結論づけられるのだ。サポート能力はそもそも、敵の体力を0にするというゲームの小目標を達成するための補助として、ダメージソースのキャラクターへ与えられる補助輪であるにも関わらず、デバフ能力は上記のレギュレーションゆえにプレイヤーが考えることが非常に多い。
 貴重な行動を消費して、得られた結果が敵の防御力は下げられない(かもしれない)、下がっても長く続かないかもしれない。であれば、より確実性の高い自己強化の方が戦略に組み込むのに易しく、試行する価値を見出しやすい。デバフは補助が必要な補助であり、RPG慣れして初めて運用できるものだ。

 しかし、デバフ能力をこのように使いにくいと感じさせてしまう要因はゲームの側にもあるかもしれない。

 例えば敵の見た目、例えば攻撃がヒットした時の効果音、ストーリー上、シナリオ上の演出。戦闘中の敵の挙動や行動やそのアニメーションなどなど、ゲームを設計したチーム全体でデバフを含め何がこの敵には有用で何がこの敵には無効であるかのヒントを至る所に混ぜて、プレイヤーが攻略するのに自然にその結論に行き着くための道を整備できていることこそが重要なのだと思う。

 さて、ここまで長くなってしまったが、運動会で花形でない競技に割り振られた子たちのおかげで、勝ちに行ける競技にそれが得意な子たちが割り振れられるのは、つまり、運動が得意な子が、いたずらに多くの競技に出過ぎることで、本来点数を稼げる競技で最高のパフォーマンスを発揮できなくなる危険をあらかじめ取り除いているのではないだろうか。
 戦士や武闘家が敵を攻撃する。魔法使いが彼らを強化し、僧侶が傷を治療する。足の速い子がリレーで万全の動きができるように、他の競技を別のクラスメイトに引き受けてもらうこと。なによりも、参加しない子たちが声援を送ること。現実の世界で、例えば対抗チームの選手のパフォーマンスが下がるような働きは非難の対象となり得るため、デバフを直接例には挙げられないが、こういった役割分担はまさにRPGのそれも現実の運動会も違いはないように思った。


(kobo)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?