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台湾文化、特に「言語」について Vol.1

What's up?

少し気温が上がってきたが、読者のみなさまはいかがお過ごしだろうか。

前々回の記事にて、高砂義勇隊を取り上げてみた。

ちょっと台湾の「言語」についても、個人的に思うことが色々あるので、その思いをつらつら書いてみたい。

台湾へのイメージとか、文化とか

「台湾」と聞いて、日本人がイメージする事、或は思い浮かべるものはなんだろうか。それは台湾バナナであるかもしれないし、牛肉麺かもしれない。

タピオカジュースや、鴻海、ASUS といった企業が脳裏に浮かぶかもしれない。または台北 101 や故宮博物館といったものをイメージするかもしれない。これらの要素は、間違いなく台湾文化の表層である。

しかし、台湾文化というものを考えるには、そこに住む人々、農業や伝統習俗、そして言語を切り離して考えることはできないのではなかろうか。本記事では上記で述べた事柄 を出発点として、「言語」から台湾や台湾人のアイデンティティについて考えてみる事にする。

(ちょっと話は逸れるが、台湾の新型コロナへの対応策は、間違いなくずば抜けている。どこかのタイミングで、それも取り上げたい)

言語とアイデンティティ

アメリカの人類学者であるサピア・ウォーフは自らの仮説の中で、思考と言語が密接な関連性を持っている事、「言語の無い思考が存在しない」事を指摘した。同時に、言語が文化を規定している事も示した。

つまり、台湾文化を理解するには、台湾の言語に対する一定の理解が前提となるだろう。

また、言語とアイデンティティの問題も見過ごす事はできない。

日本人的な外見を持ち、日本語を話している人間は、他者から”日本に帰属している”(国籍も、アイデンティティも)と一般的には見做されることが多いのではないだろうか。即ちこれは、話している言語から割り出され、分析されたアイデンティティであり、言語はその人のアイデンティティを識別する為の重要なヒントとなる事を示している。また、以下のような言葉も存在する。

「 如果你要滅掉一個國家,唯一的辦法就是消滅它的語言......」

 (引用:別殺死你的語言|TED×Taipei)

敢えて日本語訳を付けるとすれば、「もし、ある国家を滅ぼしたい場合、その国の言語を消滅させることは唯一無二の(有効な)方法である」といったところだろうか。(多少意訳してみた)

つまり、もし国家が言語を失うとすれば、共通性や帰属性、統一的意識を失い、大きな損失となることを指し示しているのである。

では、「台湾人」というアイデンティティを担保しているのは、どのような 言語文化なのだろうか。次のセクションから、その点について考えてみる。

台湾の言語文化

台湾で話されている言語は、大きく分けると、3つのカテゴリーにて構成されている。

一つ目は、「國語」と呼ばれるものだ。「國語」とは、中華民国が公用語として普及を進めた標準中国語であり、大陸で政権を執っていた時代から開発していた「国語」の体系を規範としながらも、台湾語の発音や語彙などの強い影響が見られるものをいい、台湾華語とも呼ばれる事のある言語である。

二番目は、「台湾語」である。台湾で広く話されている中国語の一方言で、福建系の方言の一つである。閩南語とも呼称される。

台湾に行った時、「中国語、勉強しているのに、全然聞き取れんぞ。。。」という状況になっても安心して欲しい。もしかすると、相手は台湾語を話しているかもしれない。(特にタクシーの運転手さんは、台湾語の使用頻度が高い)

三番目のカテゴリーは、 「客家語」や「原住民諸語」といった、比較的マイノリティな言語である。

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(イメージとしては↑こんな感じ;筆者が作成)

日本人のイメージからすると、中国語は一つしかないように思えるが、実は中国語と一口に言っても、多くの方言を含む広範囲な概念である事を知らない人は多い。中国語話者の人口は世界中に、13億7000 万人以上存在している(もっと多いかも)。大陸に住む民族は漢民族を合わせて五十六もの民族により構成されている。

当然ながら、言語と文化に差異が生じる。その為、数多くの方言が存在するのだ。 

言語学的には「七大方言」として分類されており、官話(欧米ではマンダリン)というカテゴリーだけでも、「4大下位方言」に区分されており、更に 9 つの方言に分かれている。日本人の思い浮かべる「中国語」である北京語はその 9 つの方言の中の一つである。

方言同士には英語とドイツ語ほどの差異が存在し、別の言葉といっても過言ではない。次は、大陸での言語文化と、台湾に於ける言語文化を比較してみる事にする。

大陸(中華人民共和国)と、台湾の言語文化における差異

大陸と台湾に於ける言語文化の差異は、zh/ch/sh 等の発音上の問題に加えて、表記方法が大陸では簡体字を使用しているのに対して、台湾では繁体字を使用しているという点があげられる。

その他、台湾では発音記号に注音符号を用いている点も独特である。注音符号は古代の書体から字形の特徴をとらえた部分や、簡単なものをピックアップして表音文字として開発されたもので、1 文字から3 文字で中国語の1 音節を表現できる為、非常に効率的で経済的であるとされている。

筆者も台湾にて一時期ワーキングホリデーをしていたが、台湾人はキーボードの設定を注音符号に設定しているため、筆者が使用していたピンインと呼称される大陸方式の入力方法を全く解さないようであった。

このように、一見同じように思える中国大陸と台湾の言語文化は、様々な点で異なる点が存在している事を念頭に置く必要がある。

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(結構、言語文化違うんです。面白いよね。)

ちなみに、日本の巷にあふれている中国語教室は北京語と簡体字が念頭に置かれており、講師も大陸の方だったりする。もし、「台湾に遊びに行きたい!」「台湾に住みたい!!」という人は、台湾華語系の中国語教室を探したり・教材を探すのがベターだろう。とはいえ、普通語をある程度マスターすれば國語への応用を効かせることも簡単である。初めは近所の大陸系の中国語教室→ある程度慣れたら、独学で國語を・・・というルートもアリかもしれない。

さて、次回は「國語」と「台湾語」の歴史について考えてみたいと思う。

p.s. 自粛期間にてストレスが溜まってる読者の方々も多いかと思う。文章を書くことも、もしかするとストレス発散方法に一つになるかもしれない。書き始めると案外楽しかったりする。よかったら、ぜひ。

Vol.2は以下のリンクからどうぞ

(taro)

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