見出し画像

新規就農をするには?-つくる作物を考える 前編-

前回は就農地の選び方をお話ししました。
今回はつくる作物を考えるお話しですが、私の専門は野菜なので野菜中心のお話しをします。
まず大前提として作ったら売らなければいけないのを忘れてはいけません。
出口が見えなければ、自己満足にすぎず家庭菜園の延長で終わってしまうからです。
特に野菜は家庭菜園のブームで作る人も増えています。
よくコンサルタントの方もお話しされますが、作るのは簡単、売るのが難しい。
思い描いていたようにはいかないのも現状です。


世間でいうイメージと実態


話しは逸れますが、新規参入を増やすのは、農業の担い手不足解消、食料自給率が低いためというイメージは強いと思います。
私もかつてその入り口から入った一人です。
確かにそれは事実としてあるのですが、作り手は減っているけど生産力が向上しているためさほど生産量が落ちていない場合や
食料自給率を下げている対象が肉や小麦、大豆などの品目が占めており
輸入中心であるため国内生産をするとなると価格競争が厳しく新規参入がとても難しい品目になります。
そのため、米はまた違う部類になりますが、少し野菜を作ったり果物を作ったりしても
市場規模には影響を与えるどころか、相場という影響を食らってしまう。
年間を通して、もがき(市場流通が少ない時期)があり需要が増えると一時的に高値で取引されますが
ほとんどは‘なやみ‘=飽和状態が多く、価格の下落につながりやすくなります。
花や植木なども需要が落ちてきていると言われており
既存の農家も作物転換する事例が増えているようです。

そして人口減少や生鮮食品の消費下落、物価高も重なり
作れば売れるという時代はとっくに終わってしまいました。
だからこそどうすれば売れるのか。利益を生み出せるのか。

安直にトマトは人気だし高く売れるから儲かる!
ぶどうは高級品だし海外需要も見込めるから儲かる!
というよくある見出しに飛びついてしまうと危ないのです。

作る作物を考えると同時に出口を考える

前回の記事でもお話ししましたが、新規就農を目指すきっかけとして
どうしても、美味しいトマトが作りたい
きれいなカーネーションを作って笑顔を届けたい
などと具体的な作るものが決まっていれば
出口=売り先を探るのは簡単かもしれません。

まず、販売先として想定できるのは以下のようなルートが考えられます。
市場出荷、農協、直売所、通販、マルシェ、スーパー、庭先販売、小売店、飲食店 など

ざっくりと分けるとしたら
大量生産で物量を捌くには、取引単価は市場相場に左右されるが
市場出荷、農協出荷、スーパーなどが向いているでしょう。

少量生産で販売するのには、販売価格はある程度自身で決められる
直売所、小売店、庭先販売などが向いているでしょう。

こだわりの品を販売するのには、価値を価格に反映しやすい
通販、マルシェ、飲食店などが向いているかもしれません。

他にも学校給食やカット野菜やジュースなどの加工用工場への出荷や
海外への輸出なども挙げられます。

また観光農園も注目されているため
お客様に来ていただき収穫してもらうことも一つかもしれません。

それぞれのメリット、デメリットがあるので
まずはどういった生産・販売スタイルが自分にあっているのか
見極めるのも大事なことであると思います。

例えば、大根を年間何tも生産するのに庭先販売では捌くことは非常に難しく手間がかかります。
丹精込めてこだわりの栽培方法で作った品物も市場に流してしまうとその価値は価格に反映されることが難しくなってしまいます。


地域によって市場出荷、農協出荷が強い場所や
東京は、大規模流通は少なく、大きい農家はスーパーや学校給食が多く
ほとんどは直売所、庭先販売が中心になるため
就農する地域でも全く異なることを頭に入れておかなければなりません。
郷に入っては郷に従え、というケースもありますので
下調べは重要になってくると思います。

私は就農前は飲食店向けにこだわりの野菜を作って届けたい!と思っていましたが
ちょうどコロナ禍と重なり、当時は先が見通せなくなってしまい
直売型+観光(収穫体験)に切り替えた経緯があります。
時代に合わせた販売の仕方も考えなければなりませんね。

周りの儲け話に乗せられない

詐欺まがいの話しに引っかかってしまっては極めて危険ですが
(海外需要が高まっています!全量買い取ります!などすべてではないですがニュースになったりしていますよね・・・)
メディアや本でも、これを育てれば儲かります!のような聞こえのいい話はなかなか魅力的だったり
先輩農家や新規就農の先輩方からは、これを作れば儲かる!や反対にこんな作物は売れないなどの話しはよく言われます。

成功された理由は必ずあり、その方が生きてきた時代、環境、戦略、PRの仕方、人間性など
その作物を作れば売れるのではなく、その方だからこそ成功できたのであって誰もが成功できるわけではないということです。
私も先輩方から言われた野菜を作ってみたり、やめたほうがいいと言われた野菜を作ったりしましたが
売れると言われた野菜が全く売れなかったり、反対に売れないと言われた野菜は人気になったりしました。
私の場合、庭先販売がメインのため周りのお客様が必要としているのか
ターゲット層に合っているのかが最大のカギなので
よく見極めないといけないと痛感しました。

マーケティングにつながっていきますが、
成功者の丸パクリをすればいい!と指導されるコンサルタントもいらっしゃいますが、全く真似をして果たして成功するのでしょうか。
やはりその人だからこそ、という魅力は絶対にあると思います。
情報を鵜呑みにせず、自分自身がやりたいこと、目指したいことを踏まえて検討する必要があるのではないかと思います。

前編では出口=売り方からつくる作物を考えるお話しでした。
後編は具体的に栽培からつくる作物を考えるお話しになります。


つづく