見出し画像

教科書には載っていない 都市農業の難しさ part2

前回に引き続き、実際に都市部での新規就農をした経験をもとに
都市農業の難しさをまとめていきます。
今回は外部環境(人的)のリスクです。耳を疑うような話も多くありますが
実際に起こり得ることなので、心構えはしておいたほうがいいと思います。


泥棒問題

テレビでよく見かけませんか?
「桃が〇〇個盗まれました~ぶどうが〇〇㎏盗まれました」
かなりの量で、かなりの金額。
収穫前の農家さんがかわいそう。
犯人捕まるといいね・・・

これ、他人事ではありません。
ただ、警察に相談して動いてもらえるのは
盗まれた量がまとまった量や金額の時。
たかだかトマト数個、にんじん数本盗まれただけでは
現行犯でない限り動いてもらえません。

私も警察に相談しに行ったときにそのように言われました。

そう、住宅街の農地でも泥棒にはいられるのです。
大産地のようにごっそり盗まれるというよりかは
きゃべつ1個、トマト3個のように数は少ないケースが多いようです。
なのでなかなか気が付きにくい場合もあります。

私が見つけた犯人は全員お年寄りでした。
なんの悪びれもなく堂々と畑に入って手で持って行ったりかばんに入れるのです。
美味しそうだったから、落ちていたから(落下していたりはじいた品物など)とっていいかと思った。と言います。
またお客様や近隣の事業所の方も誰か入っていたよ
野菜もっていってたよと教えてくれたりもしました。

ちなみに盗まれやすいものはすぐに食べられるものが多いです。
トマト、ズッキーニ、にんじんなど
重労働のもの、とりにくいものは盗まれにくいですが
中には包丁を持ってきて、きゃべつやブロッコリーを盗む強者もいるようです。

対策としては物理的防除が一番です。
柵をつくる、ロープを張る、障壁をつくるなど。
この方法は、お金や景観も関わってくることなので
実現できない場合もあります。

私の場合、障壁をつくることは難しかったので
地主さんから看板を立てたらどうかとアドバイスをいただき
注意喚起の看板を立てました。


地主さんと相談しながら対策をすることが一番ですね。


声をかけられる問題

この問題も都市農業あるある、農業界全体のお話しかもしれません。
住宅街に位置する畑では人通りが多く
散歩コースであったり、通勤通学路になっていることもあります。
物珍しさもあいまって、通行人の方によく話しかけられます。
挨拶程度であれば何も問題ないのですが
30分以上立ち話をされるとさすがに業務に支障がでてきます。

「がんばってるね、何つくっているの?」
から始まり
「野菜分けてくれない?」
「この野菜はどうやってつくるの?」
「なんでこの仕事をしているの?」
などなど世間話に切り替わると終わらなくなってしまいます・・・
私も断ればいいのですが、大事なお客様でもあり地域住民との調和も大事なので
どこに繋がりがあるかも分かりませんし、無下にすることはできません。

皆さんの対策はそれぞれで
・イヤホンをつけて音楽を聴いて聞こえないふり(私は大事な先輩農家の声掛けに気が付きませんでした汗)
・すごい忙しそうにする(普通に忙しいのですが)
・目を合わせないようにする(気持ちは分かります)
・話しかけられそうになったらわざと移動する(この方法も多いです)
・これから出荷に行くのでと話を切り上げる(これがベストですね)

昔は井戸端会議で住民との調和を図ってきた歴史もあるので大切だと思います。
新規で始めたばかりだと時間との闘いでなかなか余裕を持てないこともあります。
正直にお伝えして、仕事が残っていますので、と相手を傷つけることなくお断りすることも時には必要ですね。


公園と思われている問題(ペット編)

ここでは 公園=公共の園庭と勝手に位置づけをさせてください(笑)
農業に限った話ではないと思います。土地をお持ちの方ですとか
駐車場を運営されている方など、共通のお話しかもしれません。

畑は前述のとおり、散歩コースになっているため
当然、犬の散歩をしている方もいます。
私が見かけて衝撃を受けたのは、畑の中に犬を入れてトイレをさせていること。
これは何回も見かけました。
もっと衝撃を受けたのは、土遊びをさせていたことです。
薄暗くなった夕暮れに畑の見回りをしていたら
堂々と犬が畑の中で土をホリホリ、転げまわっていました。
しかも飼い主は近所にお住いの方で、よく挨拶をしたり野菜を買いに来てくれていた方でした。
注意しましたが、警察を呼んでもよかったのではと後悔しています。

動物の糞尿や、体についた虫、病気などは
植物の生長に影響を及ぼすだけではなく、土にも影響を及ぼす場合があります。
自分たちが口にするものに糞尿がかけられていたらと想像したらどうでしょうか。

反対の立場に立った時。畑には除草剤が使われているかもしれません。
農薬や肥料がそのまま残っているかもしれません。
それを間違えて食べてしまったら?
大切なペットを守るためにも
飼い主にもマナーをきちんとわかっていただきたいと思っています。

公園と思われている問題(人間編)

引き続き公共の園庭という位置づけです。
畑には大きな木々があり春になるときれいな花を咲かせます。
夏には野菜の花がたくさん咲き、人々の目を楽しませます。
写真を撮りに来られる方も多くいます。
写真を撮っていただくのは問題ありません。

しかし行き過ぎると畑に無断で入って写真を撮りだすのです。
自分の庭に無断で入られて写真を撮られたらいい気分ではないですし
不法侵入で警察を呼びますよね。
もちろん断りを入れていただければ対応するのですが
こちらも用事があって入ってきたのか
盗みに入っているのか判断がつかないため非常に怖いのです。

他にも子供が畑の中で虫取りをしていたり(これはある意味ありがたいですが)
学校の生徒と先生が荷物置き場にして休憩をしていたり
挙げたらキリがありませんが実際に起こっていることです。


一見、畑は開かれた場所であり、誰でも気軽に入れる場所ではありますが
生産の現場であり、工場であり、オフィスなのです。
見た目は違えど、立派な仕事場であることに違いはないので
住民の方にも知っていただきたい思いはあります。


都市農業の役割の一つとして災害時の避難場所として指定されています。
そのため直売や収穫体験などを通して、畑があるということを知ってもらうこと。
この畑はどんな人が管理していていざという時は声を掛けられる関係性にあるという安心感を持ってもらうこと。
近隣の方に来ていただき、地域との関係性を図ることを目的として行っています。

農家側から近隣の方にご迷惑をおかけすることも多くあります。
(前記事参照)
お互いが理解しながら協力して都市農業を守っていくことが
今後とても大切になってくると思います。


つづく