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教科書には載っていない 都市農業の難しさ part1

新規就農してみて色々見えてきたことがあります。
私はいきなり独立するのが不安だったため
農業法人などで働いてさらに研修施設に通い準備を重ねてきました。

しかし、実際に就農してみて毎日が想定外なことばかり。
よく楽観主義とか後先考えていないと言われることもありますが
これから新規就農を目指される方に同じ失敗をしないように(しないと思いますが)
等身大の私がお伝えできることをまとめていきます。
何かの参考になれば幸いです。




周りは住宅街、お客様はたくさんいるけれど

私の畑は一ヶ所は果樹畑に挟まれており
住宅街も近くにあります。お散歩コースで保育園の児童、老夫婦
犬の散歩、通学通勤経路でもあります。
もう一ヶ所は住宅に四方を囲まれており線路沿いにあります。
平日の日中はしんと静まり返っており
機械を動かしたり話し声が響き渡ります。

都市農業の典型的な住宅街に囲まれて人がたくさんいるような状況ですが
メリットもあればデメリットもたくさんあります。
メリットは今回は省きます(また改めてお話しします)
デメリットすなわち注意しなければいけないことを経験談からまとめていきます。

何よりも住民への配慮


こちらが十分に配慮しているつもりでも
思わぬ事態や相手によって受け取り方が違うということが
一番気を付けなければいけないことです。

地域柄、場所にもよって異なってきますが
気を付けるべき代表的な例を挙げると
騒音、臭い、砂ぼこり、道路の汚れ、ごみ、農薬散布などです。

騒音対策。

機械の音、話し声、車のエンジン音などが挙げられます。
特に住宅街に囲まれている場所は作業時間を気にする必要があります。
だいたい機械を使うなら8時以降と決めていますが
9時~16時にするように心がけています。
イベントやボランティアでたくさん人が来る場合も同様の配慮をするようにしています。

臭い問題。

私の経験の中ではこれが一番気を付けるべき事項と痛感しています。
堆肥や肥料、農薬など一般の人はかぎなれない独特の臭いがあるため
動物性のものや刺激臭があるものは要注意です。
私は近所からクレームが来てしまい、動物性の堆肥は使えなくなってしまいました。
都市部では有機農業や化学肥料を使わない農法を実践するにはよほどの配慮と住民の理解を得られなければ難しそうです。

砂ぼこり、道路の汚れ問題。

乾燥して強風が吹く3~4月頃が一番厄介です。一番品物が植わっていない時期で、乾燥しやすく砂ぼこりが舞い上がります。
住宅街に囲まれていると洗濯ものに砂がつくとクレームが入ります。
どうしようにもないのですが、年間通して作付けをしたりあえて作物の片付けを伸ばして畑になにか植わっている状況を作ったり農家さんそれぞれ工夫をしているようです。
また道路に砂が溜まってしまったり、雨が降った後に流れてしまい道路を汚してしまう場合があります。
時々排水溝に溜まらないよう道路をかきだしたりしています。
どうしても雨上がりに畑に入った場合、泥汚れで道路を汚してしまいます。
あまりにもひどいとほうきで掃いたり、水で流しています。
十分に配慮していても、市役所にクレームが入ると隣の農家さんはお話しされていました・・・

畑のごみ問題。


栽培しているうえで絶対出るのが残渣。
特に果菜類(トマト、ナスなど)の枝の処理が大変です。
ゴミ穴を作ってもすぐにいっぱいになってしまい
分解するまでに半年ほどかかるためあまりたくさん捨てられません。
分解の段階で臭いも発生します。
かといって畑にすきこめばそれこそ分解に時間がかかるため
次の作物を植えるまでに時間がかかります。
そのため、粉々に粉砕するハンマーモアやチッパーなどの機械を導入して
枝など分解しにくいものを粉砕しトラクターで耕耘するのが一番いいようですね。
ただ機械も30~50万円と安くはないので検討したほうがよさそうです。

雑草も伸びてしまうとなかなか量がかさばるためこまめに抜いて圃場内で枯らしていくと捨て場に困らなくなります。

そして色々話題となる畑のフードロス問題ですが
出荷できないものや傷んでしまったものは畑に戻します。
腐敗が始まると発酵臭が出てきてしまうためなるべく早めに耕耘します。
種がある野菜は芽が出てきてしまうため
本当はゴミ穴に入れておきたいところですが
ねずみの巣穴やカラスの餌場になりそれこそ住民とのトラブルになりかねないので配慮しなければなりません。

農薬問題。

これは農法にもよりますので、有機栽培や化学農薬を使わずに栽培される方は
関係ありませんが使う場合には要注意です。
特に風が強い日は絶対に散布できません。
また農薬を散布する機械もエンジン式ではなくバッテリー式が望ましいです。(騒音対策)
面積にもよるためバッテリー式では終わらないという農家さんも多くいると思いますが、小規模であればバッテリー式を選んだ方がよさそうです。

これは笑い話ですが、とある農家さんは農薬散布時にあえて重装備をしないと言われていました。
見た目からして怪しい薬をまいているように見られたくないからとのことでしたが、農薬散布は散布している側が一番浴びることになってしまうため、最低限の装備はしたほうが賢明かと思います。


これ以外にも対策しなければならないことはたくさんありますが
やはり地域との関係性を良好に保つために配慮できることはしっかり対応していかなければなりません。
もちろん、まだまだ至らない点も多々ありますが
当たり前に思っていることも、他の人からしたらどう思うか想像力を働かせながら日々の仕事に活かしていきたいと思っています。


次回も都市農業の難しさのお話しをしていきます。
お楽しみに。

つづく