見出し画像

イギリスの革靴

執筆者:大阪人

この話、マニアには面白いかもしれない。しかしこの界隈はいわゆる靴オタクと呼ばれる人も多く、半端なことを書いては一気にマウントを取られ、強烈なラリアットをお見舞いされるので注意だ。僕よりも俄然詳しい人は、唾を吐いて間違いを指摘してほしい。

イギリスはNorthampton、言わずと知れた靴の聖地である。

かくなる私も大学時代、個人で靴の売買を行っていたこともあり、今までに400足ほど靴に触れてきた。

いわゆる古靴と呼ばれるものから、ビスポークシューズまで、あらゆる靴を見てきたが、中でもやはりイギリス靴はかっこいいし、まさに王道をいく。


製法について

イギリス靴のほとんどはグッドイヤー(ウェルテッド)製法だ。伝統にして最高であるフルハンドソーン(ウェルテッド)製法を大量生産の手法に落とし込んだもの、というとわかりやすいと思う。ハンドソーン製法は、多くのビスポーク工房でもスタンダードな製法だ。ゆえに、グッドイヤー製法はそれに可能な限り近づけた感がある。日本人の中には、この製法に良いイメージを抱いている人も多い。

一つは、靴底の張り替えが可能で丈夫な靴、という理由からだろう。マシンメイドの部分も多いが、グッドイヤーは履き慣れた後の足なじみがよく、長く付き合える靴でもある。

だが、多くの人は恐らく、その靴にかかる工程の多さが、職人の手作業を体現していると感じるではないだろうか。

私も含めて、人はハンドメイドの響きに弱い。手間暇かけた職人のアレだ。

つまり、グッドイヤー製法は、職人によってしっかり作られている靴という一種の担保なのだ。

マッケイよりもグッドイヤーだろう、という人の多くは、そんな気持ちを抱いているのではないかと思っている。いわゆるクラフツマンシップを感じられるか否か。

マッケイはだめだ、というよりも、安い靴にも採用できるくらい手間かからないんでしょう?といったイメージが先行しやすいのかもしれない。

イタリアでは、中価格帯の靴はマッケイ製法やブラックラピド製法、ボロネーゼ製法に傾倒しているイメージがある。履き心地や軽さ、デザインを含めて、採用されやすいのかもしれない。ただ、イタリアでも伝統的な靴やビスポークの多くは、ハンドソーン製法を採用しているし、一概には言えない。

中には、とあるメーカーの一族にしか伝わっていない、、なんてことも聞く製法もあるが、気になる人は調べてみてほしい。

また、ハンドソーンマッケイこそが最も贅沢な製法であるという人もいる。

どれがベストなのかは決められないが、唯一わかるのは日本の靴好きの間では、グッドイヤー製法が人気であるということだ。

当然、その上がハンドソーンだという人もいるだろうし、最初に馴染みやすいマッケイがいい。いやそもそも製法なんて気にしない。という人もいるだろう。もちろん製法に優劣はない。

ただ、一つ言うなら、私は、革靴の履き心地など正直取るに足らない問題だと思っている。そこを重視するなら、どう考えてもスニーカーやハイテクビジネスシューズの方がいいに決まっているからだ。

しかし、履くならなるべく心地いいほうが良いにきまっている。

実際、あるメーカーのバルモラルブーツは、僕の足に抜群にフィットしており、何のストレスもなく履けている。外歩きもばっちりだ。もちろん同じ距離を歩行するなら、スニーカーの方が断然疲れない。

では、なぜこうも革靴に惹かれるのか。。。

ただただ理由は一つ、カッコいいからです!!!!!

興味のない人からすればどうでもいいことだが、一度好きになると中々やめられないのが革靴の世界。。僕の中で革靴を履く理由はこの一択だ。

中には、磨いて綺麗にするのが好きな人もいるだろうし、理由は様々だ。

各自の価値観によって好きなものを履けばよいと思うが、あれはだめだ、これはこうだと議論したくなるのが靴オタクの性なのかもしれない。    
革靴に関する議論や話は終わることが無いだろう。

映画「マイ・インターン」でロバートデニーロが、

「クラシックは不滅だ。」

と言ってたのかっこよかった。



では、そんなイギリス靴、、母国での人気のほどは・・・???

実感としては、ほとんどの人が知らない。私も昔はイギリスなんか行こうもんなら革靴の店がいくつもあって、みんなオシャンティーに履きこなしてんだろ?と思っていた。しかし、まったくそんなことはなかった。もちろん、明確なデータがないため、断言はできないが、そこまでの人気は感じられない。

また、ノーザンプトンで何人かに聞いてみたが、返事はどれも皆一様に、革靴ってそんなに人気あるの?ということだった。

キンキーブーツの舞台になったんだよ、ということを教えてくれた雑貨屋のおばさんはいたが、革靴産業の認知度はそれほど高くなく、知っていたとしても、それが日本の百貨店に並びまくっているなんてことは思ってもいないようだった。

こちらはJOHN LOBBのファクトリーショップに続く看板。。。

がっつり日本語ですな。笑

やはり、日本という国がいかに大口顧客であるかということが窺える。

トリッカーズが東京に路面店を出したように、日本を大きなターゲットに置いていることは間違いないだろう。英国靴の7割が日本向けの輸出だ、なんて眉唾のような話を聞いたこともあるが、それはわからない。

とかくこの看板は、日本人がいっぱい来て入口もよくわからんからウロウロしてしまう状況を解決してくれている。

私が訪れたときは平日で、Church's から順にJOHN LOBBまで巡ったが、いくらかの日本人とすれ違った。ホリデーシーズンだと、店内で見かける人のほとんどが日本人になることもあるみたいだ。

唯一外国人を多く見かけたのはCrockett and Jonesの店舗。面白かったのは、店の目の前にあるアパートのおじいさんが、

「君の国ではここが有名なのか?」と聞いてきた時だった。

この小さな工場の靴が世界中に羽ばたいており、ましてや遠い日本では定番に数えらえるほどの人気だ、なんてことは思ってもみない顔だった。

「日本では人気がありますよ。」と答えると、「有名な靴屋の前に住めるなんて俺は光栄だな」と言っていた。彼も、なんかアジア人めちゃ来るやん、なんでなんやろか。ぐらいに思っていたのだろう。

まあ、金閣寺の前に住んでたらわざわざ見に行かん、みたいな。

違うか。

↑ ブーツのフィッティングをする東京のあいつ。かっこええやん?

日本で人気の理由?

革靴が人気を博している1つの理由はおそらく、日本という国でスーツが男性の戦闘服に位置づけられているからだろう。

もちろん、日本でもよっぽど靴好きな人でなければ英国靴のメーカー名など口にしないだろうし、イギリスと同様知らない人がほとんどだろうが、スーツを着る人が多いため、必然的に高級靴に手を伸ばす人の確率も高まるのではないか?というだけである。

日本にはまず革靴が認知度の高いアイテムであるという土壌がある。

革靴なんかはお金があまりなくても見栄えをよくするツールになるし、スーツとの親和性が高い日本で人気があるのも頷ける。

イギリスでスーツを着る職業なんてのは、バンカーか弁護士くらいだ。大学の教授ですら滅多に着ないし、革靴なんてもってのほかだ。もちろん、中には靴が好きな人もいるだろう。そして、その比率は明らかにロンドンで高い。

そのような人たちはステータスも高く、必然といい物を身に着けるようになり、高級靴の存在を知っていくのだろう。


日本で革靴が有名であるそのほかの理由としては、ヨーロッパの靴へのあこがれだとか、そのようなこともあるかもしれない(初めてイギリス靴が輸入されてきたときはそうだっただろう。おじ様世代にChurch'sが大好きな人がいるのはそのためだと思う。)。

ただ、上記のことは、あくまでも体感から導いた仮説にすぎない。それでもいえるのは、本場といわれるイギリスではどうなのか、ということだが、思ったほど認知度は高くない。ということだ。

しかし、バーミンガムにもCrockett and Jonesの店舗は存在するし、百貨店の紳士靴売り場ではLoakeやBarkerといったメーカーも散見される。ChesterでもLoakeの路面店を見つけた。

どこまで有名で、どれほど売れているのかというのは、往々にして明確なデータはない。

大学院生ならば、しっかりとしたデータをもって検証したいところ。。。笑



まとめ

①本場イギリスであっても、必ずしも革靴の認知度は高くはない。

②革靴はロマンあふれるもの

皆さんもぜひ試してみてほしい。

https://allabout.co.jp/gm/gp/751/library/

All Aboutで飯野さんが記事を出しているので、こちらもおすすめしておきます。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?