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【小説】エンドビギニング 13、 神門への反抗 / 死の宣告

【あらすじ】

プロ野球選手であった岡野塁と新藤翔は奇しくも戦力外通告を受けた。新藤は新天地での現役続行を求める。塁は営業マンとしてセカンドキャリアを始めてたのち、本社のあるラムダ公国への栄転を言い渡された。

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神門の演説が終わって数日が経ったある日、ミーティングを行う会議室では不穏な空気が流れていた。

遅れて部屋に入った塁だが、途端に空気が冷たく、その寒さが気持ちを冷静にした。
円卓を囲む社員たちは、体中に赤い斑点が出ており、誰もが目にクマを作っていた。

「社会は残酷。いつだって勝者と敗者が存在する。だからこそ、ストックビジネスなんだ。つまり会費を安定的に集めなければならない!それなのにお前は…!」

神門は、ミスを犯した社員を猛烈に詰めていた。哀れむような、小ばかにするような目で睨んでいる。

「しかし…」口答えをしようとした社員に対し、「私の言うことに逆らうのか?」と圧をかける。異端や批判は全て捻り潰す、それが神門の信条だ。

誰もが傍観者になっている状況の中、塁はたまらず助け船を出した。
「社長、もうそれくらいにしましょう。最近はイベントも多く、みんな疲れています!」

「疲れなど関係ない!社員なら会社に全てを尽くすことが当たり前だろう!?」
神門の大きな叫び声に対して、無意識に反応していた。

「社長自身が、社員を恐れているんじゃないですか…?」
誰が言った?塁だった。心の中で留めておくことができず、つい、口走っていたらしい。

反抗的な台詞に反応するように、塁の頭がズキリと痛む。そして、目の前の神門の姿が巨大に見えてくる。落ち着いてきた症状が現れたかのように。

しかし、塁は止まらなかった。

「人にどうみられようと気にしないと言いながら、周りの評価を気にして生きているように見えるんですよ、社長は。口を開けば、拡大、会費。そこにみんな、ついてきていますか…?それが社員の幸せになっていますか?
あなたのプライドを満たす、自己満足で社員を苦しめているのでは?」

思わぬ反抗を受けた神門は、「岡野、お前はあれを受けてもまだ俺に屈服しないらしいな」と言って拳をグッと握りしめた。

「社長が欲しい社員は、畑を耕せ!と命令されて、愚直に畑を耕す人ですよね?その本質的な意味や、目的自体を疑うことができる人は排除しようとする…」塁は、反撃を止めなかった。

「不満ならやめればいいじゃないか。この会社では、上り詰めれば他の企業では考えられないほどの好待遇が約束されているんだぞ?それに、野球選手上がりの君がこの組織から抜けて、他の会社でやっていけるのか?」

「そうやって…人を脅すような…」塁は反射的に言い返そうと口を開いたが、唇をぎゅっと閉じた。会議室の空気は冷え冷えとする。

神門は大きく息を吸い込むと、「岡野君、どうやら君の首元の斑点が消えているようだな」と言った。

「それがどうかしましたか?」

「会社への忠誠が足りない証拠だよ。それではシグマ様に認められないし、出世も…」

塁の中で抗いがたい感情がこみあげてきた。働かせてきた自制心にも、限界があるの悟った。

「シグマだの忠誠だの、そんなことはどうでもいいんです!もっと一人一人の社員のことを考えてくださいよ!?
官僚も、陸軍・海軍も、予算を増やすか、人員をどう増やすか、組織の拡大と収支しか気にしていない。
組織を守るために、人が犠牲になっているんですよ!?」

感情を荒立てて早口になる塁とは対照的に、神門はゆっくりとかみ砕くように言葉を届けてきた。
「岡野君、君は口だけは立派なようだが、肝心の営業成績はどうだ?本社に来てから芳しくないだろう?」

喉の奥に手を突っ込まれたかのように、胸が疼き、吐き気がこみ上げてきた。腹立たしくて仕方ないのに、何も言い返せない。

「さて、今日の会議はこれで終わりだ。みんなも口先だけではなく、営業成績という結果で示してくれ」

そう告げた神門は背を向け、足早に歩き去った。靴音が耳障りなほどにこだまする。

塁はその場にたたずんだ。胸の中が空洞と化し、底知れぬ、哀感ばかりが広がった。

桑原が塁の傍に寄ると、「岡野、さっきのはまずいぞ。来週の健康診断、注意しておけよ…」と耳打ちをした。


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