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シン・長田を彩るプレイヤー~新長田で創る・芸術のターミナル~(後編)


今回は新長田にご自身のギャラリーを構える向井さんにインタビューしました。
前編ではcity gallery2320の魅力、ギャラリーに展示する作品や作家との向き合い方について語っていただきました。
後編では、新長田との関わり、ギャラリーや芸術のこれからについてお話を伺いました。

新長田だから生まれたギャラリーのカタチ


-記者-
新長田でギャラリーを再開してよかった点はどこですか?

-向井さん-
ここでやってよかったのは、人が住んでいる路地の中にあって、周りにお好み焼き屋、ベトナム、ミャンマー、韓国料理店があって、キムチ屋も10軒ほどある、『食のインフラ』があったことですね。

-記者-
確かにこのあたりは食事できるところ多いですよね。

-向井さん-
「向井さんどっかいいお店ありますか?」って言われたら、
そこの「39SAIGON」(ベトナム料理店)、「TeTe」(ミャンマー料理店)、「ここキムチ」(キムチ屋)などを紹介します。
展覧会をみて、それから1時間ぐらい皆回遊して帰る。
全く予想してなかったけど、年に1、2回遠くから旅行感覚で来られる方もいらっしゃる。
ビジネス街でやってると、そういう回遊性がないじゃないですか。
西宮市大谷記念美術館の館長さんは、40年ぐらいのお付き合いなんですけど、必ずここに来られる。
展覧会で来て見ていただいて、その後必ず帰りにキムチを買って帰られます。

-記者-
横とのつながりという点では下町ならではですね。
近所の人がふらっと来ることもあるんですか。

-向井さん-
ありますね。
近所の子供やおばちゃんがきてくれたり。
ギャラリーは入りづらいと思うんで、前に他のギャラリーや美術館の案内状などを置いて持って帰ってもらえるようにしてます。
割と楽しみに持って帰ってくれる方もいらっしゃる。
金澤麻由子個展(2022年5月)は、ワークショップをやったんですけど、保護者の方と子供たちが参加して、その人達がどっかでまた伝えてくれてというのがあって。
ギャラリーって、どうやって入っていいかわからへん。
付き合い方がわからへんていうかね。
あなた達もそうやったと思うけど、すごい難しい作品があるとどうやって見たらいいの?
となるじゃないですか。

-記者-
先ほど作品を見せていただいた時は、横で向井さんが説明してくださったので、わかりやすいしギャラリーにも入りやすいなと思いました。

-向井さん-
見た人が感じることをすごく大事にせなあかんと思うので。
だから解説しすぎたり、作者や僕の考えを押し付けすぎないようにしています。
すぐにはわからないこと自体を楽しむのが現代美術というか、創造活動だと思うので。

新長田と芸術、これから

W/M事務所の内部

-記者-
新長田でギャラリーを再開してから変わったと感じることはありますか?

-向井さん-
数年前から、アーティスト・クリエイターを対象にした神戸市の支援事業 ※があって、3人ぐらいアーティストが長田に移住してきてるんですね。
(※現在募集終了)
この周辺にもシェアハウスや写真スタジオができました。
池田浩基さんは長屋を写真スタジオにして、そこでモノ撮りやコマーシャルのお仕事をされています。
池田さんは前からバーがやりたくて、スタジオの中にバー「SAKAZUKI」(現在金土曜日のみオープン)をホンマに作っちゃったんですよね。

-記者-
他の場所でギャラリーをやっているだけだと知り合えないような業種の方とも交流できるんですね。

-向井さん-
そういう面はありますね。
自宅の改装や藝術文庫、オフィスの設計をしていただいた「r3」の合田さん、家具を作ってくれた「F Machine」の渕上さん、「はっぴーの家」の首藤さん、「下町芸術祭」の小國さんなどとも交流しています。

藝術文庫内での向井さん

-記者-
今後city gallery2320をどのようにしていきたいか教えていただけますか?

-向井さん-
『美術作品』はアーティストと見る側があってこそ成り立つものだと思います。
見る側には柔軟に見てほしいので、あんまり押しつけがましくやりたくないんですよね。
見ていただいて、面白くないんやったら面白くない、それでいいんです。
でも、ギャラリーに行って、少しでも作家の考えとかを聞いてほしいとは思います。
ギャラリーでみることは、「今やっていることが現実で、しかも目の前で動いている」というリアルを感じられることだと思います。
SNSとかでもけっこうあると思うんだけど、おいしいもん食べたらみんな写真撮って載っけたり、友達に送ったりするのと同じように、ARTの写真もガンガン撮ってアップするのが普通になってきてるから、どんどん広めてほしい。

-記者-
確かにSNSで美術作品を見る機会って以前より増えた気がします。

-向井さん-
インスタ映えするポイントをギャラリー内に作るようにしています。
鋳物製の銃を2つ置いて、それを抱えて写真を撮ってもらうってことを考えたり、真ん中に池みたいな鏡を作ってそこに皆のぞき込んで写真を撮れるようにしたり、映像に映りこむ装置を作ったり。
見てくれた誰かになにかが引っ掛かるように、参加し、楽しみ、それを撮った写真を拡散してくれたらもうこれだけで十分。
日本の美術館も撮影可能な場所が増えてきていますから、ギャラリーもそういうことを考えていかんといけないかなーと思いますね。

-記者-
最後に向井さんにとってギャラリーとは?

-向井さん-
美術は、世界共通の言語やと思うんですよね。
たとえばこうやって喋っているのは日本語だけど、英語や他の言語もいらないし、世界中で『ART』は存在するから、共通の言語だと思うんですよね。
ギャラリーはその面白さを伝える場所だと思っています。

-記者-
美術を楽しむのに、その国の言語は不要ですもんね。
ギャラリーに馴染みのない私達でも楽しめる魅力的な場所でした。
貴重なお話ありがとうございました!


編集後記
長年ギャラリーに携わってきた向井さんの美術への愛情がひしひしと伝わるインタビューでした。
普段ギャラリーに縁が遠い方こそ行っていただきたい場所だったので、
ご興味のある方は是非一度足を運んでみてください!
次回は番外編として、今年度加入してくれた007の新規メンバーをご紹介させていただきます!
(編集:キタムラ・せーた)