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シン・長田を彩るプレイヤー ~ NO CLIMBING NO LIFE ~(後編)


今回は、「BOSSAクライミングジム」の山田さんにお話を伺いました!
前編読んでいただけましたか?
「ボルダリングしてみたい。行ってみようかな。」と思った方もいるのではないでしょうか。
その背中、筆者が押しますので、ぜひご友人も誘ってお近くのクライミングジムへ!
後編では、ジムの営業や新長田への想いについて教えていただきます。


BOSSAクライミングジム

体験クライミング 一般:3,080円 大学生・専門学生:2,860円
神戸市長田区川西通5丁目101-3 共栄ビル西館2階 Tel : 070-4378-6161
詳細は公式ホームページにてご確認ください。


判断が難しかった

-記者-
営業を続けていく中で難しいところはありますか?

-山田さん-
広報かな。知ってもらうことがすごく難しかった。
コロナの時ですね。どこも経費削減をしていく中、「うわ、どうしようかな。」って。
でも逆張りじゃないですけど、BOSSAではさらに経費をかけていくことにしたんです。
そうしたら逆に認知度が上がったんですよ。

-記者-
経費とはどういったところに?

-山田さん-
設備ですね。ホールド替え(※)はいつも通りやってました。
あと苦労したのは、悩みすぎることですね。自分ができることとできないことの判断が難しかったです。

※ホールド替え:クライミングジムには、毎月ホールドの配置を変えて課題を作り替える、マンスリー課題を設けているところが多い。

-記者-
自分のレベル以上のことをやりたくなってしまう?

-山田さん-
そう。目の前の事象が自分の制御下にあるのかそうでないかっていうのを考えて、自分がコントロールできないんだったらすぐ諦める。
ちゃんと振り分けて考えられるようになってからは安眠できるようになりました。

-記者-
それでいうと、以前8周年の大規模なコンペ(ボルダリング大会)を主催されてましたが、あれはご自身でコントロールできる事象だったのでしょうか?

-山田さん-
あれ一番きつかったですね。やること多すぎて。課題の難易度とか、そういうのも全部最初から計画立てないとダメで。あと、スケジューリングや人員配置とかも難しかった。
それとDJもしたんですよ

-記者-
山田さんが?

-山田さん-
そう。あとは他のスタッフもDJやってて。セッター(※)の中にも趣味でDJしてる人が3人くらいいて、みんなでこう回しながら。

※セッター:傾斜のついた壁に、ホールドと呼ばれる人口の石を取り付け、課題を作る人。

-記者-
すごく楽しそう(笑)
DJはいつからされているんですか?

-山田さん-
コンペの2か月くらい前にコントローラーを買って、毎日練習してたんです(笑)
曲と曲を繋げるのが大変で、これの次はこれって繋げる練習を家でしたり。コンペって基本大変なんですけど、DJをやったのもあってもうめちゃめちゃきつかったです。
でも、ちょっとは盛り上がったと思います。

コミュニティを作ってる場なんだな

-記者-
こんな感じでDJやったり楽しく仕事していけたらいいですよね。

-山田さん-
まぁ何でもそうなんですけど、やっぱり好きなことを仕事にするのは難しい。ジムの経営をしてると、「登るの嫌だなぁ」って思う人がほとんどみたいですね。ただ、ジムのスタッフだとあまりそこまではならなさそう。だから一時は、何か登るの嫌やなぁとか思ってたけど、スタッフの仕事もしてると今は気にならなくなってきた。

-記者-
乗り越えたんですね。

-山田さん-
うん、まぁそうですね。ちょっと嫌だなって離れたり近づいたりの繰り返し。
でも好きなのは好きなんです

-記者-
クライミング始めた最初の頃に感じた感覚は今もずっとあるんですか?

-山田さん-
それはやっぱり変わってきてますね。「人が登って楽しそうにしてるのを見ることが好き」みたいに変わってきますよ。でもこれに徹してしまうといけなくて、やっぱりクライミングの楽しさを伝えないといけない

-記者-
山田さんは、今も他のジムにお客さんとして行かれたりはしてるんですか?

-山田さん-
あんまり行かないですね。岩場にはよく行ってます。あんまり人がいなさそうなところに奥さんと。

-記者-
奥様とはこの仕事を始めてから出会われたのですか?

-山田さん-
いや、ジムを始める前にクライミングで知り合って。

-記者-
仕事から結婚まで。クライミングとはもう切り離せないですね(笑)

-山田さん-
ほんと困ったな、もう(笑)

-記者-
クライミングジムを経営されていく中でやりがいはありますか?

-山田さん-
どんなところでも仕事や趣味でコミュニティが作られるように、ジムもコミュニティを作ってる場なんだなっていうのはコロナになって感じましたね。

-記者-
この間インスタで拝見したんですけど、スタッフの方が学業に専念することになって、みんなで最後に集まったっていうのがすごくいいなって。

-山田さん-
そう、めっちゃ楽しかった。
コロナが流行ったことで、かえってこういうコミュニティづくりができていることを強く感じましたね。社会的な意味というか
あとは、目的はクライミングだとしても、その時に電車も使うだろうし、途中の商店とかにもお金を落とすだろうし、そういう経済的なつながりを作っていたっていうのもコロナになって感じました。
例えば、コロナ禍の当時、ジムの閉業期間中は周囲の飲食店の売り上げも下がったし。

-記者-
そういうのは周りの飲食店から?

-山田さん-
聞きますね。一番面白かったのは、合鍵の売り上げがコロナで半減したっていう話。大体合鍵を失くされる場所って飲み会らしくて、酔っぱらった勢いで失くすみたいです。ただ、コロナで飲み会がなくなったことで売り上げが落ちたって聞いたときは、世の中すべて繋がってるんだなって思って。
自分の仕事においてもね、何かが社会に繋がってんだなって思いますね

-記者-
そういうのをBOSSAでも実感してやりがいを感じてるんですね。

-山田さん-
昔よりは感じてますね。
でも、やってることは今も変わらないです。だから、たいそうなことは言いたくないですけど、ただ自分が楽しいジムを作っていけばいいだけの話。「地域を盛り上げるぜ」とかは考えたことないけど、ただ自分のことを一生懸命やっていったら、ゆくゆくは地域のためになるって思っていて。
やるべきことをちゃんとやればいい。そういうことかなと思いますね。

-記者-
勉強になります。

結果は後からついてくる

-山田さん-
僕は、「地域を盛り上げるぜ」って簡単にSNSで投稿とかはしたくない。
その道のことを常に考えて極めていくことが優先だと考えてます。そういう人がその地域にいることで、結果的にそこの活性化につながるんじゃないかなって思ってます。

-記者-
そうですね。その人のおかげで多くの人に来てもらえるようになったら、周辺の飲食店とかにもどんどん派生していきますよね。

-山田さん-
そう。地域貢献も大事ですけどそれにつられたアピールはしたくない。その世界で認められるのが先かなって。

-記者-
山田さんの場合はどのようにアピールをされているのですか?

-山田さん-
難しい。基本どう見られるかという観点では何も考えていない。目の前のやるべきことをやったら結果は後からついてくる。地域の人や街にとってどのような存在でありたいかっていうのも、あんまり考えたことがない。言っても嘘くさくなるし。
でも最初に地元とか地元の人があって、そこを目標にしてがんばってる人がやっぱり多いんですかね。

-記者-
山田さんはもともと長崎出身だからだとは思いますけど、もともとゆかりがある人にとっては、そういうのも一つの考え方ですよね。それこそ長田は地域貢献に根差した活動をされている方が多いですよ。

-山田さん-
僕と真逆。難しいな(笑)

-記者-
答えはないと思います(笑)
結果、地域が盛り上がれば、その方法は何でもいいと思ってます。

-山田さん-
そうですね。食べ物もおいしいし、住みやすいとこではあります。
僕の場合はこの地域だからっていうわけではなく、仕事をしていく中で、つながりが出来て、思い入れができたっていうだけですね。

-記者-
新長田に対しては、どんなイメージがあります?

-山田さん-
これがあんまりないね。下町情緒とかいうのはそんなに感じたことはない(笑)
でも長田は親切な人が多いと思います。

-記者-
皆さんそれぞれ地域に対するイメージがありますよね。
ちなみに、お住まいはどちらなんですか?

-山田さん-
今は長田区ですね。今住んでるところはすごい好きです。だって手軽に高取山を登れたりする。ちょっと足を伸ばしたら須磨海岸。
海と山が近くてすごい魅力的な街ですよね。神戸全体として。
登山もできるし、最近始めた釣りもできる。三宮に行けば、洋服とか家具とか大体揃いますし。

-記者-
やっぱり住みやすい街ではありますよね。

究極の無駄

-記者-
山田さんにとってクライミングはどんな存在ですか?

-山田さん-
うーん、究極の無駄なことだと思います(笑)

-記者-
無駄なこと?
クライミングがですか?

-山田さん-
うん、究極に。だって、階段とか梯子があるのに、壁を自力で登るのってちょっと頭がおかしいですよ(笑)

-記者-
そしたらクライミングジムなんかは?(笑)

-山田さん-
もう無駄無駄(笑)
でも、そういう無駄なことにエネルギーを注いでいるからこそ、クライミングが面白く感じられるんだと思います。
世の中のほとんどの仕事が無駄なことと言えば無駄なことらしいです。例えば、居酒屋とかってなくても生きていける。でもそういうのがなければ合鍵屋は売り上げが下がってしまう。人ってそういう無駄なことをしているけど、一方でそれが社会を構成する一部になっているっていうのは不思議なことですよね。

-記者-
確かに野生動物は食べて寝てたら、必要最低限それで生きていけますもんね。

-山田さん-
そうそう。洋服とかもみんな同じやつ着ておけばいいんですよ。でも、みんな無駄に種類を選んでね。その無駄なことに、全力を投じて生きているっていうか。そういう時間が楽しいというか。言い方を変えれば、無駄なこと、やらなくてもいいことがいっぱいあるから人生楽しめるんかな

-記者-
じゃあクライミングジムは、もう無駄を追求できる場の頂点ですね(笑)

-山田さん-
本当にそう思います(笑)


あなたは、社会人になってどれだけの達成感を感じたことがありますか?
大人になってから始める趣味の大切さに、つくづく気付かされる筆者です。
KOBE007は新長田出身ではないメンバーがほとんどで、新長田合同庁舎に配属されるまでは縁もゆかりもありませんでした。
そんな僕たちも、それぞれの「やってみたい」を尊重し、目の前のやるべきことをひとつずつ積み上げ、山田さんのように新長田を彩って参ります。
(編集:あずりゅう、ひより)