シン・長田を彩るプレイヤー ~お菓子を売りつつ見てきた地元、新長田育ちの僕が思うこと~(後編)
お菓子のデパート遠州屋を営みながら、新長田1番街商店街振興組合の理事長もされている木村さん。前編では、お店を始められた経緯や商店街で実現したいことについてお話しいただきました。
後編では、新長田に感じる課題や新長田らしさ、木村さんのモットーについて語っていただきます。
【地域の担い手】
-記者-
新長田に対してこれが課題だなと思うことありますか?
-木村さん-
本音で言うたらね、もう六間道も、丸五も、西神戸センター街もちょっと寂しくなってきてるし…。
賑わいをもっと全体で作っていきたい。
一部の有識者さんは言いますわ、「もう(国道)2号線の上にみんな引っ張ってきたらいいんや」って。そんな簡単なもんじゃない。
昨日はたまたま地蔵盆だったんですけど、そういう伝統文化いうか。
僕が子供の頃は健康と安全を願う大きい行事だったんですけど、それが皆さん高齢化して担い手がいないということで。
そういうものを若い人がお手伝いしやすいようなかたちに出来ひんのかなと思ってね。
1番街商店街であれば若い人もおるわけやから、割とやりやすいと思うんですけどね。
-記者-
他の地域ではほとんど残っていない地域の行事ですし、残していきたいですよね。
担い手を確保するために今後どうしていくべきだと思いますか?
-木村さん-
どう取り組んでいくのか僕もわかんないけど、皆さんの知恵を借りながら考えていきたい。
【新長田に貫いてほしいこと】
-記者-
新長田に住んでない人に新長田を知ってもらうとしたら、アピールしたいことはありますか?
-木村さん-
難しい質問(笑)どうまとめたらええんやろ。
新長田は思ったことを言う人が多い。
そういうことってマイナスの要素かもしれんけども、今の世の中ね、人と人との繋がりが希薄じゃないですか。
-記者-
そうですね。
-木村さん-
詳しくないのでSNSを使って意思疎通を図れるかどうか知らんけども…。
「あんたとこ子供は高校どこ行ったん」とか、今はあんまり聞かないじゃないですか。
-記者-
一見はばかられるような雰囲気ありますね。
-木村さん-
そんなこともね、ここでは聞く。
例えば、「結婚したん?」とかね。
そんなん言われるのが嫌で市場が廃れていったというのはあんねんけども。
そういうようなところが、世間とは逆に希薄じゃない。…どころか濃すぎるかもしれんけど(笑)
そういう感じで新長田の人は、とことん、それを貫いていってほしいなと思いますね(笑)
-記者-
なるほど。新長田に長く住んでると、そういう良さが見えるんですね。
-木村さん-
見えてきますね。
ダンスボックスというところで舞台があって、昔そこに2回ほど出してもらってんけども、1行だけのセリフを忘れてしまって、「遠州屋!もっとちゃんと喋れ!」とかヤジが飛んでね、ええ経験をさせてもらったこともある(笑)
-記者-
新長田らしさですね(笑)
これからも地域の良さとして、歯に衣着せない関係性は残っていってほしいですね。
-木村さん-
結局長所を伸ばすということですよね。まちにモラルを、とかそういうことを一生懸命やるよりもね。
あとは地蔵盆みたいなのを継承していくっていう部分とかね。
-記者-
最後に、木村さんが新長田に期待するものはなんでしょうか。
-木村さん-
大阪にも東京にも勝てないだろうけども、そういう綺麗で道幅も広くて、高層ビルが建ってるというのは、神戸らしくなくって僕は反対なんです。
新長田は再開発で入れ物は綺麗になったけども、その中身が伴ってないと。でも中身は中身でこれから世代が変わっていくんで。
最近も若い人がお店を開きに来てくれてるじゃないですか。地域にも絡んでくれるし。
下町らしさも残しぃの、人と人との繋がりもありぃのっていう感じで栄えてほしい。
-記者-
そうですね!
-木村さん-
傘なしで東京まで行けるとかね。住むまちとしてこんな良いまちはないと思いますよね。
地域の皆さんと喋れるし、店の人とも喋れるしね。郊外に行くと、そんなんほとんどないでしょ。
-記者-
そうですね。やっぱりそういうところに価値を感じると。
-木村さん-
そうですね。
-木村さん-
何か申し訳ないなと思う、ホントはもっといい話を…。
何の持ち合わせもない人間で、理事長になるとも思ってもなかったし。
-記者-
きっと周りの方はそう思っていないと思います。
-木村さん-
ほんと何も持ち合わせてない人間なんですけども、誰でもできるちょっとしたこと。
誰もができることを、誰も真似ができないぐらい続けるというのが私のモットーでございます。
-記者-
おお~!(拍手)
-木村さん-
ただ続けるだけで何の変化もなかったら意味ないじゃんと思われるかもしれんけども、そう思われてもいいんです。自己満足の世界になるかもしれんけども、それしかないんで。
-記者-
商店街や地域の行事を継承していくとか、そういう良いところを続けていく意味では一番向いてるかもしれないですね!
今日はありがとうございました!