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理想と現実とペルソナと【前田さんのWSレポ③】

理想の暮らしなんて考えたことがなかった。

なんとなく綺麗なマンションで暮らして、近所の行きつけのカフェ(大手チェーン店)に行って週の半分は長居する。考えていたのなんてそれくらい。

どちらかといえばずっと「生き方」や「人生」について考えてきた。だけど、そのほとんどは「仕事」に着目していたような気がする。

「どんな仕事をしたいのか?」
「どんなことが好きで、嫌いで、得意で、不得意か?」

そんな就活の時に自分の長所を書き出してくださいというような時間を多く過ごしてきた。目を通すのは流行りのビジネス書、インフルエンサーの声、流行りと廃りを見流しながら「自分とは?」を悶々と捉えようとし続けていた。

でもこの街での関わりの中で、「暮らし方」を考えるようになった。
「どこで過ごすのか?」「どこでご飯を買うのか?」
そんな地に足をつけた考え方もアリなんだということを知った。

ワークショップに参加する中で、自分自身がペルソナの対象なんじゃないかと感じることが多かった。だからこそ自分の考えてきたことを書いてみようと思った。

ということで、過去の自分と今の自分を「理想の暮らし」と「現実の暮らし」の二つに分けて書いてみます。東京で暮らしていた当時を思い出しながら、少しオーバー目に書いています。表現したいのは「どこか急ぎ続けていた自分」。

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理想のワタシ(平日)
おはよう。今日も1日が始まる。
起きたらまずはTwitterのタイムラインをチェックだ。1秒たりとてトレンドを見落とすまい。インフルエンサーがオススメしている本があれば買って学ぶ。新しいアプリを見つけたらとりあえず試してみる。最新の情報を浴びるように咀嚼する。

出勤前の朝は自分のために使う。常温の水を体内に入れ、足を組み座禅をする。これを毎日10分間。自分の声にならない声に耳を澄ませる。邪念すら乗りこなすのだ。
ちなみに住んでいる家は140弱の同世代が住んでいるシェアハウスみたいなもの。周りにも頑張っている大人たちがいるからやる気にもつながる。自分を律せなければ。
朝食を済ませ仕事場へ。満員電車に揺られて約1時間。この間もスマホと睨めっこ。社内のチャットツールを開きながら今日やることを確認する。時間があればネット記事でも見て情報を得る。駅に着いた。オフィスは渋谷にある。朝から雑踏の交差点を超えて向かう。人ごみが苦手なので毎朝これで疲れてしまう。出勤前にコンビニに立ち寄りアイスコーヒーを買う。小腹が空いた時用にちょっとしたパンも買っとこかな。さぁ、働くぞ。

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現実のワタシ(平日)
おはよう。今日も1日が始まる。
起きたらまず何しよ。何しよかな?とか考える前に二度寝しよう。まだ眠い。睡魔って強いよね。特に朝の睡魔には勝てない。いい朝だ。15分後にアラームをセットしておやすみ。おはよう(2度目)朝は自分のために使おう。あ、その前にお庭の緑に水をあげなきゃ。その後に喫茶店にでも行ってモーニング食べよ。寝癖直してないけど、まぁいっか。徒歩5分、パンチの効いた濃い目のドリップコーヒーを体内に流し込み、知らないじいちゃんの愚痴を聞きながらバターたっぷりの食パンを食べる。朝からビール呑んでるやん。みんないろいろあるんやな。邪念があっても別にええわ。
朝食を済ませ仕事場へ。徒歩10秒。到着。遅めに目が覚めたとしても時間通り起きましたよって顔で出勤。そうこうしてたら近所の人が犬の散歩にやってきた。近所に住むおばあちゃんと世間話も始まった。「ここにあるプランターに水やっといて」と頼まれた。もう働いてる?なんかようわからんけど、今日もぼちぼちがんばろー。

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理想のワタシ(昼食)
お昼休憩は職場の同期とランチ。今日はタピオカも買いたいから外で食べよう。
といってもお店の中はどこもいっぱいだな。あ、このお店テレビで見た。流行ってるらしい。いつもはコンビニで済ますけど、ちょっと贅沢して1,000円のランチプレートでも食べるか。食べながらもチャットの通知が気になるし、SNSのタイムラインを追っちゃうなあ。1時間の休憩あっという間。さぁ、働くぞー。

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現実のワタシ(昼食)
お昼休憩は自宅に帰って自炊。節約にもなるし、1人で食べるのも気が抜けて良い。近所の激安スーパーで食材買って網焼き開始。ただ焼いてるだけやけどリッチな気分。あー、美味しかった。部屋ん中肉くせえ。洗濯物入れとかなあかん。でも昼寝したくなってきたな。10分だけ、10分だけ寝てから仕事再開しよう。

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理想のワタシ(休日)
今日も早起き。家の1階にあるコワーキングスペースで朝活。おっと、その前にコーヒーでも淹れるか。優雅な朝だ。お昼はちょっと足を伸ばしてカフェへ。休日くらいゆっくりしたいけど、別にやることもないし勉強する時間に充てたいなと。とりあえず東京方面行ったらおっきいカフェあるから電車でGo。休日でもパソコンを広げ仕事しているっぽい人が多数。この日はまず「24時間を効率的に使う方法」を熟読。あー、まだまだ時間をうまく使えてないな。自分にとっては仕事も学びも休みの日も同じだ。全ては成長の糧になる。混み具合がハンパないから別の店へ移動。といっても他の店もパンパン。人で酔いそう。すごい街だな東京。


現実のワタシ(休日)
今日は目覚ましかけずに寝てみました。もうそれだけで幸せ。体内時計の赴くままに起きて朝ごはん。何をやるわけでもないけどのんびりお昼まで過ごす。自分自身は平日も休日もそんなに変わらないので仕事をボチボチ。周りの人は家族で海に行ったり、山に行ったり、趣味があるって羨ましいななんて思いながら。休日はなんだか時間の感覚が違う。ちょっとゆったりできるのは、街自体もよりゆったりしているからだろうか。


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オーバー目には書いているけどこんな感じ。

理想(東京での暮らし)の暮らしで感じたことは、日常的に同世代から刺激を得ることができたこと、同様に上の世代や下の世代からも刺激を得ることができたこと。そんな刺激との距離が近かったこと。その分家賃は高いけど、交通費と思えば安いもんで。「若い時に一度東京に行け」と言われていたけど「なんで行かなあかんねん」と思ってた。でも実際に行ってみると「全部東京にある」と言って過言ではないくらいに学びや刺激がたくさんある。最新の流行りや便利なアプリ情報もすぐ入ってくる。インターネットが物理的な距離感を無くしたと思っていたけど、やっぱり東京にいると早い。そして多い。

現実の方は限りなくリアルに書いてみた。それはオシャレ田舎暮らしとか、キラキラした感じではなくて、リアルな手触りがある感じ。どちらかがいいわけではなく、理想は人それぞれ。でも今の自分にとっては今の暮らしの方が力みなく過ごしているような感じがする。今はリアルの中に豊かさを感じやすいというか。背伸びをすることで自分の頑張り加減を知れるような。

だらしなくても良い反面、自分で律することも必要で。
特にフリーランスで働いている自分は、シフトで労働時間が決まっているわけでもないし、1人で作業に打ち込む時間が多い。マイペースな自分にとって、それがよくも悪くも難しい。心地よくて自分に合っているような感じがする。

生きやすいけど、生きにくい。
だからこそ自分に問い続ける。
哲学っていうほど尊いものではないけれど、理想だけではなく地に足ついた現実の世界の中で問い続ける。外からの鋭利な刺激ではなく、街の子供やお年寄り、自分自身の中から湧き出る疑問に応える時間。

この街だからこそ多様な出会いがあるけれど、本当に出会えるのは自分の奥底にある自分。答えのない人生の問いを抱き続けることができる。
だからここで暮らしているのかもしれない。


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この記事は、長田区に住む前田彰さんに、神戸・長田生き残り戦略ワークショップ第3回のレポートとして執筆していただきました。
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