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「新長田を彩るプレイヤー 〜社員と共に追求する、靴の美学〜」 -Part1-

-神農さん-
靴の仕上がりの雰囲気をよりよく見せたい、っていうところが一番大きいです
履き心地もそうやし、見た目もそうやし
靴に対する美学がないことには、僕らも勝ち残っていけないので、
常にそこに重きを置いています
イタリア留学したときに、僕らとは比べもんにならんほどの美学を持っててそういうのを学んだので、作るんやったらよりいいものに近づけたいと思って今日までやってきている
お金ではなくて美学を追っかけてきたんでそれは変わらず続けていきますね

株式会社 ロンタム
取締役社長 神農 英道さま

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他の場所ではなく、
新長田で靴を作り続ける理由

-神農さん-
僕らの靴業界、ファッションの仕事は、一般企業みたいにカチッとした世界観ではないんで、気軽に聞いてください

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-記者-
まず、簡単な経歴をお伺いしてもいいですか?
-神農さん-
僕は中学を卒業して、高校は一年で中退したんですよ
ロンタムは、父親が創業した会社なんですが、
その高校中退後にこの会社に入りました、16歳の時です
それが阪神淡路大震災の前の年ですね
そこから靴の製造工場でずっと下積みをして
企画の仕事を経て、イタリアにも留学して・・・
僕らの場合は単に作るだけではなくて、商品開発や設計をやっていかないとだめなので
そういった下積みを経て、昨年から今の社長のポジションに就きました
-記者-
16歳で就職というのはハードルが高くなかったですか?
-神農さん-
勉強もせず、フラフラするのはダメということで
一番身近な父親の会社に、というかそれしか道がなかったというか
本当に最初は流れで入ったという感じです
入って数か月後に阪神淡路大震災があったので
知らん間にドタバタしながら数年経ってましたね
-記者-
この会社は震災前も今と同じ場所にあったんですか?
-神農さん-
いや、場所はまた違うところです
同じ通りの違うビルのテナントに入ってましたが、阪神淡路大震災でビルが倒壊したので、あっちこっち引越ししました

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-記者-
それは大変でしたね
-神農さん-
そうですね、あの時は本当に
目まぐるしかったというか、あっという間に時間が過ぎていきましたね
ですが、神戸市も長田区に関しては早くから復興に力を入れていたので
早い段階で、この街も良くなったのかなと思います
-記者-
震災当時、大阪は神戸よりも地震の影響が少なかったということで、神戸から大阪に本社を移す会社が多かったと聞いたことがあるんですが
そういったことも検討されたんですか?
-神農さん-
そこが一般企業と違うところで
靴の生産工程は主に7工程あって、分業化していることが多いんですよ
1デザイン(パターン・木型)の作成
2裁断(革パーツの作成)
3裁縫(革のパーツを縫い合わせて立体にする)
4吊り込み(フォルムの形成)
5後ろ吊り(後ろ姿を形成する)
6底付け・ヒール打ち(安全なヒールづくり)
7中敷き貼り(仕上げ、ネーム入れ含む)
家庭内職から始まって、より細かな工程も分業化しているので、自分の会社だけ移っても、モノが作れないんですよね
この街の中に集約されているので、この街の中でしか作れないっていうのがあって
-記者-
あーなるほど・・・

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-神農さん-
もちろん、何件かは移転しましたよ
例えば、靴の部品を郵送でやり取りすることで生産しているところもあります
ただファッションの流れも変わってきていて、
ファッションの多様化であったり、ファッションの変わるスピードも速まったりと
その変化に対応していかいないといけないんですよ
この変化に対応するためにも各工程の各生産者が集約されてる新長田の街にいないといけないんです
それとか僕らが取引してるお客さんが大手アパレルだったりするんで
なかなかゆったりとしたスタイルで仕事ができないっていうのがあって
新長田にいないといけないといいますか
そういった理由が非常に大きいんですよね
-記者-
アパレル業界もシーズンごとにデザインが一新されるからそれについていかないといけないっていうことですね
-神農さん-
そうですね
今はスーツ着ていても、スニーカーを履く時代じゃないですか
当然そういったファッションの流れが変わってきてます
-記者-
靴の産業は分業制ということなんですけど、分業の担い手は減っていっているんですか?

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-神農さん-
もちろん減っていってます
その理由で一番大きいのはファストファッションの参入ですね
ああいうところが参入してきたのが何よりも一番大きいっていう
僕らからしたら一番のライバルなんですよね
ファストファッションの靴でも今は素晴らしい品質と価格で入ってきますから
あとは海外の製品が昔と比べて入りやすくなってしまったので国産の需要が正直無くなってきてるのもあります
そうなると僕らが作ってるもんは、じゃあ何が違うの?って
差別区別ができなくなる
そうすると僕らの仕事は減っていくんですよね
人口と言いますか、携わる人っていうのは年々どころじゃないです、毎月減っていってます
去年のコロナが始まってから余計に拍車がかかってますね

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