日本と欧州の廃棄物制度の違い

前回の続きです。

前回は逆有償の問題について書きました。
今回はこのような問題が起こってしまう背景と、欧州との比較について書きます。

日本の廃棄物及びリサイクル諸制度

まず、日本の廃棄物処理法の成り立ちについて説明します。
1960年頃より、高度経済成長の影響により、その負の側面として様々な公害問題が発生するようになりました。
これに対し、1970年にもともとあった清掃法という法律を全面的に改める形で「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)が誕生しました。
廃棄物処理法の目的とは第1条にある通り、「生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」なのです。
その後、公害問題等は次第に少なくなりました。
公衆衛生の向上を果たすという廃棄物処理法の目的に従って、一定の成果が表れてきた結果と言えます。
1990年代に入ると、大量に発生する廃棄物が問題となり、リサイクルなど循環型社会形成の機運が高まったことによって、容器包装リサイクル法を初め、各種リサイクル法がそれぞれの品目別に次々と制定されていきました。
ここでポイントとなるのは、廃棄物処理法は依然として存在し、それに継ぎはぎするような形で個別に各種リサイクル法が制定されたということです。

欧州の廃棄物及びリサイクル諸制度

一方、EUでは1970年代に日本と似たような背景から、廃棄物枠組み指令という基本法的役割の法令が制定されました。
その後、これまた日本と同じように循環型社会への機運の高まりによって、EUではこの廃棄物枠組み指令が2008年に、廃棄物指令、有害廃棄物指令、廃油指令を統合する形で抜本的に改正されました。
この改正によるポイントは以下の通りです。

・廃棄物の定義が「リストに載っているもの」から「所有者が廃棄するもの」へと抽象的な判断となった。
・「End of Waste=終結」(一定の基準を満たしたものは廃棄物から資源とする)という概念を取り入れた。
・家庭系廃棄物に対しリサイクルの強制的な目標値が導入された。

要するに、
「所有者が排出したものは一旦は全て廃棄物になりますが、その廃棄されたものの中で特に無害なものについては極力有効活用するようにして下さいね。」
ということです。
これにより、前回触れた逆有償云々は関係なく、廃棄物を極力有効活用していく環境が整うことになりました。
つまりこれは、リサイクルを成長産業にしていこうとする明確な意思の表れなのです。
実際にヴェオリア(フランス)、アルバ(ドイツ)などの環境系サービスの巨大企業がリサイクルをビジネスとして行っていますし、リサイクル産業はエリートが進む道でもあります。

欧州と日本の比較

先に、日本では廃棄物処理法が存在し、そこに個別のリサイクル法が継ぎはぎ的に作られたと書きました。
日本ではあくまで廃棄物処理という概念が中心にあり、リサイクルについては縦割り的な形でそれにくっついているという構図なのに対し、EUでは基本的には一つの法律でリサイクルをすべて回し、それを補う形でリサイクル関連法令が存在しているという点に大きな違いがあるのです。
日本の場合、それぞれの法律毎にセクションが分断しているため、それぞれにおいて個別最適化は図ろうとするが、全体最適化にはならず極めて非効率な体制であると言えます。

これは一般廃棄物(家庭から出る廃棄物)の処理にも言えて、日本では一般廃棄物は各市町村に処理責任があり、基本的には市町村という極限られた狭い範囲の中で処理されます。
リサイクルという観点から言えば非効率的であり、現に一般廃棄物に分類されるようなごみは、日本ではリサイクル劣等生なのに対し、欧州ではリサイクル優等生となっています。
下記のようなことも、少なくからずこのことが影響していると考えます。

まとめ

ここまで「日本の廃棄物行政全然ダメじゃん!」みたいな書き方になってしまいましたが、決してそんなことはありません。
高度経済成長期下の日本では、ごみは溢れ河川からは異臭が漂っていましたが、今ではすっかり改善されています。
廃棄物行政は公衆衛生の向上に間違いなく貢献しています。
しかし、リサイクル技術も日進月歩で進み、循環型社会形成への機運が高まっている今、「公衆衛生の向上」つまり廃棄物を適正に処理するという大義名分はもちろん大事ですが、そこからさらに一歩進んだ考え方も取り入れる必要があると思います。
環境立国を目指す日本にとって、廃棄物及びリサイクルの諸制度が現行のままであれば、廃棄物分野でのサーキュラーエコノミー化を国際社会へ発信していくことは難しいと思います。
日本が廃棄物分野で環境立国となるためには、今機能している現行制度の枠を取っ払うくらいの大胆な転換をする必要があると思います。


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