自分たちの手で世の中をつくる、21世紀のはじまりとともに【未来を生きる文章術006】
2002年2月13日の原稿。
これは今読んでも好きな文章です。流れがとてもスムーズ。
それもそのはず。「起承転結」の典型です。その上、結びが着実で、この未来予測はそのまま現代にも通じている。普遍性がある。
書き「起」こしはネットオークションを念頭に置いた古物営業法の改正の紹介。これを受ける「承」として、実際の事業者の反応に触れ、自分たちで安全なネットオークションを築くという姿勢を評価している。
ここで少し話題を変えて、インターネットの仕様書「RFC」を紹介して、「自分たちで」という姿勢が基本になっていることに触れています。これが「転」ですね。こうした転換の目的は、ただ一つの視点ではなく、別の視点から論を補強すること。たとえばこの場合だと情報化社会という大きな視点からどう見えるかというところに視野を広げています。
「結」論の部分では、再び現代社会に戻って「パブリック・コメント」の導入というお堅いところでも補強して、これからの社会、「自分たちで作る」ことが主流になるという未来予測で締めている。
自画自賛ですみません、でも「自分たちで」という転換は、まさに現代までいっそう広がり深まっているように思います。
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ネットオークション規制へ、業者コメントに社会変化を読みとる
警察庁により、古物営業法の改正案がまとめられました。インターネットオークション業者を届出制とすること、優良業者の認定制度を導入することなどが骨子に盛り込まれています。
背景にはインターネットオークションを舞台にした盗品売買や詐欺事件の増加があるとされています。警察庁のまとめた平成13年中のハイテク犯罪の状況によると、ネットオークションを利用した犯罪は前年比2.4倍の182件と急増しています。
今回の改正案に対して、業者側はおおむね理解を示しているようです。常時300万点以上商品が出品されているYahoo!オークションでも、「オークションユーザーの取引の安全を守るという立場から有益な改正」と評価しています。
同社による声明には同時に、インターネットオークションをはじめとする、従来の社会ルールでとらえきれない新サービスについては、運営者が利用者とコンセンサスを築きながらガイドラインを整備していくことが重要と触れています。規制に頼ることなく、自分たちで安全なネットオークションを築いていくこと。そこにぼくは、インターネット文化の真髄を感じもしたのでした。
インターネット協会が公表している「インターネットを利用する方のためのルール&マナー集」では、もっとも重要な心がけとして、インターネットもひとつの社会であり、その一員として自覚と責任を持つことを訴え、自己責任が原則であることをあげています。
インターネットの仕様書ともいえる「RFC」と呼ばれる文書群じたい、「Request for Comments」の略で、みなさんの意見を聞きたい、という姿勢の文書です。インターネットに参加するものそれぞれが、自分たちの責任で、自分たちのルールを決めていく。それがインターネットの歴史だったと言っていいかもしれません。
金融商品の選択など、自己責任が問われる場面が、一般社会の中でも増えています。政府も、3年ほど前、政策の立案等にあたってその案を公表し、広く国民の意見を集める「パブリック・コメント」制度を閣議決定しています。
パブリック・コメントをRFCと読み替えてみたい気持ちにおそわれます。「お上」に頼っていた時代から抜け出し、自分たちの手で安全で住みよい社会を作っていく。インターネットに限らず、広くそんな世の中になってきているのではないでしょうか。ネットオークションへの対応は、そんな世の中へ向けての試金石なのかもしれません。
ゼロ年代に『日経ビジネス』系のウェブメディアに連載していた文章を、15年後に振り返りつつ、現代へのヒントを探ります。歴史が未来を作る。過去の文章に突っ込むという異色の文章指南としてもお楽しみください。