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大手証券,外資IT,ベンチャーで実践してきた、経営層の営業戦略を"実行"する方法

こんにちは。ヤプリの小林洋介と申します。
株式会社ヤプリでインサイドセールス部 BDRチームのマネージャーを務めています。「こばさん」って呼んでもらえたら幸いです。

まずはじめに、今年1月に初めて書かせて頂いた、私のnoteをお読みになって頂いた皆様、コメントやご意見を下さった皆様、本当にありがとうございました!!!この場を借りて改めて感謝申し上げます。

まだ読まれていない皆様も私の営業活動における、新規アポイントを獲得するためのメール術や考え方、昨年12月に上場したヤプリについても紹介してますので、下記のnoteや記事もご覧になって頂ければ幸いです。

もちろん、初めてお読みいただく方もいらっしゃると思いますので、このnoteでも簡単に自己紹介させて頂きます。

私は2006年に新卒で大和証券に入社し、個人営業とシステム企画部に従事、2016年に外資系IT企業の日本オラクルに転職し、インサイドセールスと外勤営業を経験し、2017年には外資系マーケティングオートメーションベンダーであるMarketo(株式会社マルケト)に転職、そこでも有難いことにインサイドセールスと外勤営業の両方のポジションを経験させていただきました。

・インサイドセールス(内勤営業)
・フィールドセールス(外勤営業)


その経験を活かして現在はITベンチャーであり、アプリプラットフォーム「Yappli」を開発・提供しているヤプリで、インサイドセールスとして日本の社会や企業の成長に少しでも貢献できるよう、日々現場で悪戦苦闘、試行錯誤をしながら営業活動をしております。
ヤプリに入社して2年と2ヶ月、マザーズに上場して約10ヶ月になります。

今回はインサイドセールスに限ったお話というより、私がこれまで大和証券のシステム部門時代を除く約12年間の「営業」の現場で試行錯誤しながら実践してきた営業現場のみなさんに参考にしてもらえたら嬉しいと想いを込めた「実践的」な内容を書かせていただきます。

※念のためですが、このnoteは株式会社ヤプリの戦略等ではなく、あくまで個人的に意識・工夫している内容です。
※Marketo社は2019年にAdobe社に買収され現在はAdobe Experience Cloudの「Adobe Marketo Engage」として事業を継続しています。


なぜこのnoteを書くに至ったか?

本当に有難いことに、前回のnoteを書かせていただいてから、様々な企業の経営者の方やインサイドセールスの方、あるいは営業責任者といった方々とお話しさせていただく機会が増えました。
以下がほんの一部ですが、ご相談やご質問いただいた内容です。

<ご相談・ご質問いただいた内容>
「インサイドセールスを導入したけど、インバウンドリードの対応だけだと取りこぼしが多いのでBDRを立ち上げたい」
「アウトバウンドで成功している方法を教えてくれませんか?小林さんのメールや手紙の送り方を教えてほしい」
「今後、会社の規模を拡大していくために、小林さんの新規開拓の営業ノウハウの知恵をお借りしたい」

このように何度か皆様とお話しさせてもらっているうちに、ある共通点が存在することから、以下の仮説が浮かび上がりました。

(意外にも)「今期の戦略が●で、自社のターゲットとしている企業は◯◯業界で、規模は△△で、□□を課題と捉えている企業」というターゲットや狙いがあまり練り上げられていないのでは?

(もしかしたら)自社あるいは事業の全体的な「戦略」よりも先に、目の前の受注件数のための「戦術」や「手段」に目が向かってしまっているのでは?

という自身の体験と気づきから、今回も営業・BtoBマーケティングに携わる皆様が、自社の経営者や経営層の方々が示されている「営業戦略」を"実行"していくためのご参考となり、少しでもお力になれればと思い、2回目のnoteを書くことに至りました。


「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

今回のnoteのサムネイルに使わせてもらった「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」は、ご存知の方も多いと思われますが、「孫子」の有名な一節の言葉で、スポーツ戦略やビジネス書などで数多く取り上げられている有名な言葉です。下記の記事がわかりやすくまとめられていましたので、興味のある方はご覧になってみてください。

言葉の意味としては「敵情を正しく把握せよ」「事前準備をしっかりせよ」など数多くの意味があるかと思います。

これを営業の仕事やインサイドセールスの業務に携わる私なりに勝手に解釈いたしますと、以下のように考えます。(孫子を好きな方やお詳しい方、素人発想で大変申し訳ありません、、、)

<営業やインサイドセールス業務に携わる私なりの解釈>
・彼を知り=お客様を知り
己を知れば=自社を知れば
百戦殆うからず=「アポイント/商談獲得率」 or 「受注率」が向上する

これを少し置き換えますと、下記のようになります。

「アポイント/商談獲得率」 or 「受注率」が向上させるためには
・自社を知り
・お客様を知らなければならない

何とも当たり前の事を言っているように聞こえますね。
きっと以下のように思った方も多くいらっしゃると思います。

「当然、自社の製品の機能や強みなら当然理解してますが、、、」
「会社の売上目標や個人の売上目標については毎日聞かされてますよ」
「お客様の導入事例も数多く把握しているし、担当のお客様も多いです」
「毎回、電話する前や商談前にお客様のWebサイトをチェックしてますよ」

もちろん、上記のように自社とお客様を知る事は大事な事だと思います。

しかしながら、このnoteで私が申し上げたいのは、以下ように自分目線ではなく『自分の勤める企業の経営者/経営層の目線や、お客様の目線で「自社」と「お客様」を知ることや理解することがもっと必要なのではないか?』ということです。

<経営者/経営層の目線、お客様目線で、「自社」と「お客様」を知る>
「自社を知る」
・(今期、上期 or 下期、第●四半期で)経営者/経営層がどのような戦略で、自社を成長させようとしているのか?
・既存事業の中で、得意の領域・業界のシェアを伸ばしていくのか?
・既存事業の中で、新しい領域・業界の獲得増加を目指していくのか?
・新規事業にリソースを投下していくのか?
・M&Aで時間を買う戦略を取っていくのか?
・競合する企業はどの企業でどのような対策をしていくのか?

「お客様を知る」
・現在、どのような外部環境/内部環境に置かれているのだろうか?
・お客様自身は、どのようなお客様や競合と向き合っているのだろうか?
・現在、どのような課題や悩みを抱えていているのだろうか?
・それをどのようにして解決している、されようとしているのか?
・お客様が会社の中で誰に評価されるのか?
・どうしたら担当のXXさんの評価がもっと上がることに貢献できるか?

いかがでしょうか?「知る」と言っても、立場や目線によって、視野の広さや深さ、向いている時間軸や、意識している相手が異なったりします。

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」にも述べられているように、少しでも「勝利する可能性を上げるため」や「成功する確率を高めるため」に「正しく把握する」「事前準備をしっかりする」ということを怠らずに"実行"し続けていけば「アポイントや商談の獲得率」 も 「契約率や受注率」も向上していきますので、日々の積み重ねを意識していただければ幸いです。

そして"その他大勢の営業"にならないようにしましょう!!!
(もちろん私も意識や実行ができてなかったり、方法を試行錯誤中です。)

ここまでは、事前の考え方について書かせていただきました。次の章からより具体的なイメージをお伝えできればと思います。


「自社を知る」 ~ 経営者/経営層の「営業戦略」とは? ~

ここから具体的に企業の経営者/経営層の「営業戦略」の話をしていきます。

大前提の話ですが、皆さんお勤めの企業でも、新しい年度や四半期の変わり目等のタイミングで、社長や担当役員からメッセージや戦略方針を聞いていらっしゃると思います。

ここで皆さんに1つご質問です。

あなたは今の会社の「営業戦略」をどのように「実行」されていますか?

もちろん十分に「営業戦略」を理解されていて、皆さんの役割や日々の業務に落とし込まれてらっしゃる方も多いと思いますが、以下のように思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「何言ってるの?目標数字を達成するために必死に営業活動してますよ!」
「KPIとして設定された電話数(または商談件数)をこなしてますよ!」

もちろん、上記のように個人で、あるいはチーム単位での目標数字の達成のために日頃の営業活動を頑張っていらっしゃる方が大半だと思います。

しかしながら「営業戦略」というのは目標数字の達成だけではなく、"継続的に"中長期的な会社や事業の成長していくため会社の方針であり、"実行"して
「戦略通りに実施した施策で成果が大きく伸びた」のか「戦略とはあまり関連がない施策でたまたま戦略よりも成果が出た」によっては迅速に戦略・活動方針の軌道修正をしていかねばなりません。

前職のマルケト社に在籍時、上司であったCMOの小関さん(現Coupa株式会社 代表取締役社長)からご紹介いただいて、インサイドセールスチーム全員が熟読した下記の『経営は「実行」』を今でも鮮明に覚えています。

ではここで、「営業戦略」というものをより理解していただきやすいように、実際の企業の経営戦略の例を解説していきたいと思います。

今回は、私が大学新卒で入社し、営業の基本的なマインドを叩き込んでくれた、大和証券の経営戦略をサンプルとして見ていきます。
参考にした資料は、今年5月に株主・投資家情報に公表している経営戦略の資料です。
(出所:https://ssl4.eir-parts.net/doc/8601/announcement2/68885/01.pdf
※尚、私は大和証券を退職して約9年以上も経過しており、現在の仕事で利害関係がない、 あくまでも個人的に経営戦略資料を見た考えを述べています。

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もし「経営戦略」や「営業戦略」についてまだあまりイメージがついていない方がいましたら、上記の資料のように上場企業であれば必ず個人投資家向けにIR資料を公開していますので、普段よく利用する飲食店やお店、あるいはよく食べる食品メーカーなど身近な企業のIR資料をぜひご覧になってみて下さい。

経営者の方々や、専門的な知識の豊富な社員の方々が、企業の戦略を投資家向けにまとめられているので、中長期的な視野や大きな視点から見ての戦略の勉強になると思います。

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まず今回の資料では「新中期経営計画の位置付け」というページから見ていきます。大手企業で拠点や従業員数や多ければ多いほど、ミッションや経営ビジョンを明確していたり、中期経営計画という形で、行動方針が示されています。大和証券では「あるべき姿」や「基本方針」を以下のように示しています。

あるべき姿=「全てのステークホルダーの価値・効用の最大化」
「基本方針」
・クライアントファーストとクオリティNo.1の実現
・バイブリッド戦略による新たな資金循環の確立
・デジタルとリアルのベストミックスの追求

具体的な内容については、以下のページに記載されています。

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経営戦略の中で、リテール部門(個人部門)の個別戦略が「目指す姿」という表現で、記載されています。

個別戦略
「お客様の最善の利益」追求に向けてビジネスモデル転換を加速
残高ベース収益5割を目指す

ここで詳細な内容については触れませんが、もし私が大和証券の営業社員であったのなら、この経営戦略を見て、以下のように自身やチームに落とし込むことを考えます。

<経営戦略から自分やチーム内に落とし込むこと①>
・お客様の利益重視となっていくので、これまでの営業方法から脱却をしなければならない
・DX(デジタルツール)をもっと効率的に利用できるようにしていかないとこの先置いてかれてしまう、得意な人に教えてもらおう
・今後は株式よりも、残高ベース収益の商品知識がさらに必要になる

さらに別のページには、上記の基本方針にあった「ハイブリッド戦略」についての記載があります。

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こちらはリテール部門の2つ目の個別戦略が記載されています。
基本方針にあった「バイブリッド戦略による新たな資金循環の確立」の部分です。

個別戦略 = 総資産アプローチによる顧客資産・取引の拡大
富裕層向けに、総資産アプローチによる高付加価値コンサルティングを提供
自社以外の外部提携先リソースも活用しソリューション関連収益増加を図る

ここでも私が大和証券の営業社員であったのなら、こちらの2つ目の個別戦略を見て、以下のように自身やチームに落とし込むことを考えます。

<経営戦略から自分やチーム内に落とし込むこと②>
・総資産アプローチのためには不動産についても学ばなくてはならない
・ソリューションビジネス収益は会社としても新しい試みなので、いち早く成果を上げることで、自分の付加価値やスキルを上げられそう

そして、下記が営業として最も考えなくてはいけない事だと考えています。

<経営戦略から自分やチームに落とし込むこと③>
自分は「どのお客様に」「どのようなお客様に」「どれくらいの件数を」アプローチしていくか?

会社の経営者/経営層が示した戦略は上記のように発表や資料を公表されたり、社内で情報共有されますが、"実行"するのは、あくまでも全国の営業所の営業社員になるわけです。

そして新しい戦略に基づいた目標数字は与えられても「どのお客様に」までは会社は提示してくれません。

ですので、営業現場の社員がこの経営戦略を"実行"していくためには、具体的に「どのお客様」「どのようなお客様」に対して「どれくらい」新しい営業活動を行うかによって、この戦略成果が大きく得られそうかを、社員自らが考えなくてはならないのです。

(もし大和証券の社員だったら)自分は「どのお客様に」「どのようなお客様に」アプローチしていくか?を考えてみる
<今までの延長からのターゲットを考える>
・取引の多いお客様の中で、不動産を多く保有されているお客様は?
・取引の少ないお客様でも、あのお客様は不動産を多く保有されていたはず

<今までにないターゲットを考える>
・富裕層と言われるお客様の中で、不動産に関連する何か共通項はないだろうか?
・株に興味がない地元優良企業の社長にも提案できるのでは?
・不動産は持ち主自身が管理会社を設立しているケースが多いと聞いたことがある、その名簿みたいのがあれば大口顧客の見込み客見つかる可能性が高いはず、また中規模の賃貸マンションの一棟オーナーも可能性高そう
・不動産といっても住居以外に資産価値があるものといったら工場などはどうだろうか?

<ターゲットとする見込み客が何件/何社なのかをリストアップする>
・既に取引があるお客様、まだお会いしただけのお客様が●●人
・口座はあるが、まだお会いしたことのないお客様が●●人
・まだ口座を開設いただいてないお客様が●●●人

いかがでしょうか。企業の経営者/経営層の「営業戦略」と、それを営業現場の社員がどのように理解し、自分の行動を変えて、ターゲットを作り出していき、"実行"していくかのイメージが湧いていただけましたでしょうか?

いくら会社や経営陣が立派な戦略が立てられていても、社員の行動が変わないままで、"実行"されないのであれば絵に書いた餅に終わってしまいます。

ですので、経営者の「営業戦略」に基づいた営業活動で成果を上げることが重要ですし、さらに"再現性の高い"営業施策ができようになることが、会社にとっても存在価値の高い人材となり得るのです。

そのため具体的にターゲットとなるお客様の「業界」や「特色」「職業」など共通する"要素"や"キーワード"を言語化したりして解像度を高くし、継続的なターゲットリストとして、"実行"した結果の要因を振り返り、うまくいったことや想定通りにうまくいかなかった課題を改善し続け、他の誰でも"再現"できるようにすることが、継続的に"実行"していく上で非常に重要だと考えています。

そしてターゲットとなる見込み客がどれくらいの人数や社数があるかを必ず算出しなくてはなりません。

100人なのか?200人なのか? または500人なのか?
20社なのか?100社なのか? あるいは300社なのか?

これらの想定するターゲット数によって、下記のように全く取る戦術が変わってきます。ですので、営業職の方は必ず「今期受注したい、契約したい企業、お客様は●●で、●●であるのが、●●●社、●●●人」と予め設定しておかないと、たまたまお客様側で検討してた受注契約が中心となり、運任せとなってしまいます。

<多い場合>
多い場合は商談の「質」の低下を防ぐため、以下のような策を講じます。
・広く浅くセミナー集客やメール等のアプローチしながら、興味を持ったを見つけ出し、効率を考えながらお客様に提案する
・インサイドセールスに協力を仰ぎ、個別アプローチをしつつ、ヒアリングを実施し、条件に合致しそうなお客様だけをパスしてもらう

<少ない(そこまで多くない)場合>
少ない場合は1件ずつに対する「質」を上げた対応は必要不可欠です。
・インサイドセールスにも1人ずつ、あるいはは1社ずつ時間をかけて情報収集や仮説を考えてもらい、なんとしてもアポを取ってもらう
・アポが取れた際には、1件ずつ事前にしっかりと下調べを行い、そのお客様に合わせた提案書を個別に準備しなくてはならない
(数少ない見込み客のため、汎用的な資料の紹介で終わってはいけない)

ということで経営層の「営業戦略」を"実行"していくためには、まず自社の「経営戦略」から下記の2つを知ることから始まるものだと考えています。

<自社の「経営戦略」から知ること>
1.『自分がどのように変わらなくてはならないか?』を知る
2.『自分が「
どのお客様に、どれくらいの営業活動を行っていくべきか?」を考えなくてはならないこと』を知る

その他、世の中の外部環境の変化や業界トレンド、法改正や制度変更を捉えて、「Why Now?(なぜ今か?)」をお客様にとっても、自社にとってもチャンスが大きいターゲットを考えられるとベストだと思います。
例えば、私は2020年は下記のようなコロナによる需要の変化と業績のトレンドなども参考していました。

また、法改正や制度変更の具体例は下記のような「はんこレス」や「個人情報保護法」です。この環境変化によって、プラスに働く企業もあれば、マイナスに働く企業も出てきます。
また、企業の社内ではこの環境変化に対応するためになんらかの施策を講じる必要も出てきます。もちろんその時の社員のリソースだけで対応できるかもしれませんが、「専門性の高い外部のパートナー企業に任せた方が、高い投資対効果が見込めるかもしれない」という選択肢も検討しなくてはならないはずです。

ですので、営業としては「この変化によって何のニーズが生まれているのか?生まれそうか?」の視点は日々のニュースとセットで考える癖がつけられると仮説思考の訓練になるのでおすすめです。


また、現在は嬉しいことに、法人営業やB2Bビジネス領域において様々な営業支援プラットフォームや企業情報のデータベースのサービスがあります。
こういったサービスを活用すると、ターゲットとする企業や見込み客を明確化していくのを効率的にリスト化、実行ができるようになります。

ヤプリでは「FORCAS」というプラットフォームを利用させて頂いているのですが、会社の商材やビジネスモデル、あるいは利用しているCRMシステム、その他リソースの状況によって最適なサービスはそれぞれの会社で異なると思います。
まだこういったサービスをご利用されていない方がいらっしゃいましたら、ご参考にご覧になってみてください。


「お客様を知る」 ~ お客様側の「戦略」を理解する ~

ここまでは、自社の「営業戦略」から自分の行動変化やターゲットリストに落とし込む話をしてきました。
ここからは"目線"をお客様に変えて、「お客様を知る」話をしていきます。
お客様を理解する上で、下記の3C分析やその他のフレームワークを使う方も多いと思われます。

今回のnoteのキーワードの一つが「戦略」です。

(上場会社を対象とする法人営業、B2Bビジネスが前提となりますが)ここでも「お客様を知る」上で、お客様側の(経営者/経営層の)「経営戦略」や「営業戦略」を理解する事が大事ということと、IR(株主・投資家情報)資料等をどのように活用するか?を解説していきたいと思います。

もしIR資料がない場合は、企業ホームページの採用情報、あるいは転職サイトでの募集要項などを見ることによっても仮説構築は可能です。

またこの章でも大和証券の経営戦略の資料をサンプルに、今回は大和証券を仮想のターゲット企業として、どのようにアプローチするか?という視点で見ていきます。

しかしIRというと、下記ような苦手意識を持っている声をよく耳にします。

<よくあるIR資料に関しての苦手意識>
「IR資料を見た方が良いというのはわかっているけど、たくさんあってどれを見たら良いかがわからない。」
「有価証券報告書を見てみたけど、文字だらけであまり読む気がしない。」

結論ですが、見るべきIR資料は以下の2点で十分です。これなら迷わずに見つけられるようになります。また前述でもお伝えしたように投資家向けにグラフや図を駆使してわかりやすくまとめられています。

<見るべき2つのIR資料>
1.「決算説明資料」or「決算説明会資料」or 「決算説明会補足資料」
2.「中期経営計画」 or 「◯◯戦略資料」

まず、基本的な上場企業のIR資料の見つけ方ですが、企業HPから「株主・投資家情報」の項目をクリックしていくと、決算短信やら有価証券報告書などたくさんの種類のIR資料が掲載されています。

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では、ここから経営戦略資料を「お客様を知る」観点で見ていきましょう。
今回はあえて様々なページを見て、それぞれにコメントしていきますが、全てのページを見る必要はありませんが、今後の仮説構築のヒントにしていただければと思います。

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まず上記のような「中期経営計画の進捗や総括」、あるいは「業績ハイライト」のようなページを下記の観点で見るようにしましょう。

IR資料を見るポイント①
・業績(主に経常利益)のトレンドを把握し、アプローチ可能か確認する

「なぜ経常利益なのか?」というと、企業の経営成績を最も把握しやすい数字とされているからです。

当然、業績が上昇トレンドであれば、外部サービスやシステム等への投資する余裕も大きいと言えるでしょう。提案機会の余地が十分にあると考えられます。
一方で、例えば昨年2020年の7月頃に、業績が急速に悪化し本当に大変な時期の飲食業界の企業に、デリバリー対応以外の直接課題解決できないサービスの提案しようとするのは無謀な営業活動と言えます。

今回の大和証券では、業績が上昇トレンド、且つ下記の記載内容から「前中期経営計画での施策を推進し、着実に成果が出ている」事実があります。

リテール営業改革、ハイブリッドビジネス推進、収支構造改革は着実に進捗

この事実を活かすために以下のような仮説を持ちながら次の資料を見ていくことを考えます。

<事実ベースで資料を見る着眼点>
さらなる「リテール営業の改革」を加速させることにお役に立てれるか?
さらなる「ハイブリッドビジネスの推進」を支援できそうなことはないか?
さらなるに「収支構造改革」に貢献できる方法はないか?

続いて、「当社グループを取り巻く事業環境」といったようなタイトルのページがあれば、ぜひ見るようにしましょう。

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「当社グループを取り巻く事業環境」のようなページがあれば、上述の3C分析が既にある程度なされているケースが多いのです。

■Company:自社
 →(当社の)収益構造
Customer:市場・顧客
 →(お客様の)ニーズ
 →(市場の)パンデミック、SDGs/ESG
Competitor:競合
 →規制・競争環境

このページだけで、この会社についての大枠を掴めるようになります。

IR資料を見るポイント②
・3C分析の観点でこの会社がどのような状況におかれているかを把握する

また「当社グループの対応すべき取り組みテーマ」や「当社グループの取り組み」という記載があれば、必ず見るようにしてください。
このような(今後の)取り組みという部分は、経営者・経営陣が株主に対して「実行すると決めたこと」としてコミットした重要事項となります。

そこから「この会社・グループだけで独自に実行ができそうなテーマ」と、「外部のパートナー企業との協業や任せた方が良さそうなテーマ」に切り分けるのです。そうすると、下記の2つのテーマであれば、IT業界の企業や人材業界の企業であれば、何らか提案の糸口がありそうなことが見えてきます。

”当社グループの取り組み”=実行すると決めたこと・コミットした重要事項
&「外部のパートナー企業との協業や任せた方が良さそうなテーマ」
・『デジタルシフトへの対応』
・『人材育成・多様性』

ここで申し上げたいことは、経営者や経営陣がコミット(約束)してやると決めたことですので、その所管部門であれば「その実行のお役に立つご提案ができますので、一度お話聞いていただけませんか?」と言われたら、断る理由がなくなるわけです。そうするとアポイントが取れる確率は格段に上がります。

もちろん経営課題といった大きなテーマから距離の遠い社員の方や、前述のような「そもそも自社の経営戦略なんて見てない」といった社員の方が相手であると、あまり有意義なお話はできない可能性は高くなりますが、、、

IR資料を見るポイント③
・経営者・経営陣が株主に対して「実行すると決めたこと」としてコミット(約束)した重要事項を確認する
・「外部のパートナー企業との協業や任せた方が良さそうなテーマ」を見つけ、提案の糸口を探し出し、断る理由のない口実を作る

一方で「2030Vision」重点分野のような「長期的に目指す姿」に触れている記載内容については「頭の片隅に置いておいておく」くらいで全く問題ないです。テーマが壮大過ぎて、提案のヒントにならない事がほとんどです。

IR資料を見るポイント④
5年以上先の「長期的に目指す姿」は頭の片隅に置いておいておくでOK
・『イノベーション』
・『サステナブル経営の基盤』

次は、「新中期経営計画」のページがあれば、絶対見るようにしましょう。

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中期経営計画というものはだいたい3年間で作成されることが多く、上述の「2030Vision」の壮大なテーマとは異なり、具体的な方針や戦略の記載があるケースがほとんどです。そしてこちらも上述の「当社グループの取り組み」と同様に言い換えると「 実行しないことは考えられない、期限付きの戦略」になります。
ですので、ここからさらに「実行するための支援が必要になるのでは?」という仮説を基に、それぞれの個別戦略を深堀って注視していきましょう。

IR資料を見るポイント⑤
・中期経営計画から「いつまでに」「何を実行していくか」を把握する
・深掘るべき「戦略」を特定する

「数値目標」のページは公開していないケースもありますが、あればもちろんチェックするようにしましょう。

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ここで見るポイントは、前述の「新中期経営計画」との関連性を確認して、どれくらいのインパクトがありそうかと、どれだけ高いハードルなのかを想定でも仮説を持てるように認識します。

「新中期経営計画」の3つの基本方針
1.クライアントファーストとクオリティNo.1の実現
2.ハイブリッド戦略による新たな資金循環の確立
3.デジタルとリアルのベストミックスの追求

他のページの情報から下記の数値計画を把握、あるいは実現に対してのハードルの高さ、疑問点や仮説が生まれることとなります。

前述の「新中期経営計画」との関連性の確認、仮説構築の一例
1.クライアントファーストとクオリティNo.1の実現
ここでいう「デジタルIT人材」とは?どういう人材なのか?
→ グループ内部の社員の育成だけで足りるのか?
→ 『(グループ内部では足りず)外部からの登用も必要なのでは?』

CFP/証券アナリストの資格取得者は現在何人なのか?
→ 目標の3,000名とどれくらいのギャップがあるのか?
→『 ギャップが大きいのであれば、より課題感は強いはず!』

2.ハイブリッド戦略による新たな資金循環の確立
(別のページを参照し)2020年から2倍にする計画と認識
→ 会社として”失敗できない”新しい戦略のはず
→『 実現させるための方法は外部からの提案も必要としているのでは?』

といったように、戦略の重要度や実現までのハードルの高さを認識することで、仮説の解像度を高めることができます、

IR資料を見るポイント⑥
・中期経営計画とその目標数値からそれぞれの戦略の重要度や実現までのハードルの高さを認識する
・それぞれ戦略実現に対しての課題の大きさまで仮説を立て、貢献インパクトが大きそうな提案のヒントとする

次は、さらに具体的な戦略が記載されているページです。徐々に自分の会社と全く異なる業界・規模の企業の戦略方針に興味や好奇心を持って見ていくと、どんどん面白くなってきて、気がつくと長い時間、ただただ眺めてしまうことには要注意です!!!(もちろん初めの方は勉強の意味を込めて、長くみることには賛成です)

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このページでは、これまでの少し抽象的な表現であったページとは異なり、具体的な目的や施策について触れられていますので、まさに提案する余地が大きいポイントが盛り沢山なので、その見方を少しずつ解説していきます。

<大まかな目的・手段>
目的:収支構造改革(コスト削減)
手段:人材のリアロケーション

<具体的な目的・手段>
目的:合計で300億円のコスト削減を目指す
手段:業務のDX推進を通じて、営業店のミドルバック人員 約1,600名のうち、800名をシフト

上記のように大まかな目的・手段の話から、より具体的な数値目標が立てられていることにお気づきでしょうか?
そして、その数値目標を達成すべく、下記のように「実行する予定の施策」に対して、自社が支援・提案できそうな施策と関連付けができるようになります。

「業務のDX推進」=「デジタル戦略の推進」
→コスト削減と人員シフトを実現するための重要課題となっている

「主な注力テーマ」が具体的に「実行する予定の施策」となっている
→そして「注力テーマ=実行する予定の施策」から自社が支援・提案できそうな施策と関連付けをする
 a)「対顧客チャネル」
 b)「バック事務のデジタル化・集約」
 c)「データ解析・活用の強化」

IT商材やデジタルソリューションを扱う企業にお勤めの方なら、何かしら提案できそうなイメージが、そして実際に検討をしていただけそうなイメージが湧いてきませんか?

また「人員シフト見通し」からは「2021年4月までに約800名を異動を実施した」と読み取れます。ここからは以下のような仮説が考えられます。

今までミドルバック(事務やサポート中心)の業務をしていた社員が、フロント(対お客様への営業中心)に大量に異動した。
組織面、あるいは個人のメンタル面での課題が出てくるのでは?
→この仮説から以下のような支援・提案ができるのでは??

<組織面>
・営業研修サポートや自己学習促進のためのコンテンツの開発支援
・リーダーやマネージャーが増加するに伴うマネジメント層の育成プログラムの見直し支援

<個人面>
・人間関係や業務内容・職場環境の急激な変化に対して適切にモニタリングするためのストレスチェック支援
・今回の人員シフトからの離脱を予防するためのメンタルヘルス導入・強化のサポート

といったように、組織的な課題、個々の社員に関しての課題はどの企業も常に抱えている企業がほとんどですので、IT系の企業に限らず、人材業界の企業にお勤めの方も、支援・提案のイメージが湧いていただけると嬉しいです。

といったように、戦略の重要度や実現までのハードルの高さを認識することで、仮説の解像度を高めることができます、

IR資料を見るポイント⑦
・具体的な目的達成のための「実行する予定の施策」を把握する
・「実行する予定の施策」から自社が支援・提案できそうな施策と関連付けを行い、実際に検討してもらえそうなイメージまでを構築する

さて、いかがでしたでしょうか?

まだまだ別ページでも仮説構築の用意をしていましたが、あまりにも情報量が多いと「こんな量はとても見てられない」と誤解を招いてしまうと思いましたので、ここまでにしたいと思います。

決してご紹介した5ページ全てを見て仮説を持つ必要はありません。

あくまで皆さんに『具体的にお客様の(経営者/経営層視点の)「経営戦略」や「営業戦略」を理解すること』のイメージを持っていただき、少しでも公開情報から仮説を立ててみようと思っていただけたのであれば幸いです。

ここまでご紹介した「IR資料を見るポイント」をまとめます。
全部を実践する必要はありません、特に重要だと考えている部分は太字にさせていただきました。どなたでもそのまま再現できる事だと思います。

IR資料を見るポイント
①業績(主に経常利益)のトレンドを把握し、アプローチ可能か確認する
②3C分析の観点でこの会社がどのような状況におかれているかを把握する
経営者・経営陣が株主に対して「実行すると決めたこと」としてコミット(約束)した重要事項を確認する
③'「外部のパートナー企業との協業や任せた方が良さそうなテーマ」を見つけ、提案の糸口を探し出し、断る理由のない口実を作る
④5年以上先の「長期的に目指す姿」は頭の片隅に置いておいておくでOK
⑤中期経営計画から「いつまでに」「何を実行していくか」を把握する
⑤'深掘るべき「個別戦略」を特定する
⑥中期経営計画とその目標数値からそれぞれの戦略の重要度や実現までのハードルの高さを認識する
⑥'それぞれ戦略実現に対しての課題の大きさまで仮説を立て、貢献インパクトが大きそうな提案のヒントとする
⑦具体的な目的達成のための「実行する予定の施策」を把握する
⑦'「実行する予定の施策」から自社が支援・提案できそうな施策と関連付けを行い、実際に検討してもらえそうなイメージまでを構築する


改めて申し上げたいこと


前回のnoteもお伝えしたことと少し重複しますが、皆さんがアポイントを獲得、あるいはインサイドセールスにアポを取ってもらって商談・提案している企業の方々は役職を問わず、企業の経営や事業成長のことや売上向上のため、自社のお客様や競合他社の対応で非常に忙しい方々ばかりです。

そんな忙しい業務中に、様々なインサイドセールスから電話やメール、あるいはITベンダーや人材業界など様々な業界の法人営業やフィールドセールスから提案を受けられているのです。

ですので、いかに「これは今、うちの会社にとって必要なサービスなのかもしれない」と忙しい中に目に留まったり、少しでも自社のサービスの付加価値に気づいて理解していただくため、誰かが作った汎用資料やテンプレメールではなくて、「相手の企業としての経営戦略や課題を理解した仮説提案を実行し、相手に顕在している課題だけでなく、潜在的な課題に対しても気づき与え、自社のサービスや機能に興味を持ってもらうだけでなく、費用対効果のロジックまでを作り上げて、それを明確に伝えることが現代の法人営業に携わる方々に必要なのではないかと考えています。
(もちろん、私もまだまだ勉強不足ですし、試行錯誤中です。)

この公開情報からの仮説構築作成は決して難しいものではありません。

しかしなら、今まで誰かが作った資料やテンプレメールを利用していた方にとっては、最初は情報収集や文章の構成・組み立てに苦痛なほど時間がかかります。

なので、面倒がらずにまずは「実践する」ことが一番大事なのです。

自分の行動を変える事は大変なのは私自身も重々承知しています。

私自身もはじめは「こんな事前の情報収集なんで忙しくでできない!」と思いながらも何度も何度も実践を積み重ねていくと、上場企業の常務や執行役員の方、あるいは事業部長や部長の方々から「とても丁寧なメールをありがとうございます。まさにその課題に直面しております。ぜひお話を聞かせてください。」と嬉しいご返信をいただくなど実践すればするほど、効果を実感できるようになってきます。

そして、やればやるほど作成する工数も短縮されて、成果も出てきます。

まずは1人の方、1社に対して「果たしてこの会社の何にお役に立てるそうか?」と魂を込めて考えて、"実行"をしてみてください。


最後に

前回のnoteもお伝えしたことほとんど同じですが、私がなぜこのアプローチ方法を実践し続けているかと申し上げると、私自身が仮に営業される立場だったら、以下のようなことを考えるのです。

『(インサイドセールス か内勤営業だかよく知らないが)資料をダウンロードしたからといっていきなり電話してこられてきて、顔も知らない人にねほりはほり聞かれなくない』

『「売りたい売りたい」や「とりあえずアポ取りたい」が「自分が悩んでいること」や「役に立ちたい・支援したい」よりも前に出過ぎている営業マンは信用できない(自分もそうだったのと、信用されなかった辛い経験が今も思い出せます…)』

(一方で)『大事な課題や今後の施策を相談するには、自分のことを理解してくれる、または(多少違っていても)理解しようとしてくれている人なら話したい』

たしかに効率的に(言い方を変えると"楽して")売りたい、アポイントをもらいたい、そういった自分の目先の目標達成だけがゴールとしてしまっている営業やインサイドセールスは、その言葉や本気度がお客様には簡単に気づかれてしまいます。

私のような、まだまだ未熟者が言うことではないと思っていますが、

『真摯にお客様と向き合うこととは?』

ということを一緒に実践してみませんか?

これはインサイドセールスや営業、またはマーケターの方々といった職種に関係なく全員が自社の事業の本質を考えて、その中で自らの強みや弱みを理解して誰にどう貢献していくか?ということだと勝手ながら考えてます。

本当にしつこいですが、再度申し上げます。

工数や時間がかかるとか面倒がらずに、"やらない言い訳"を考えずに、まずは「(お客様と向き合い)実践してみる」ことが一番大事

引き続き同じインサイドセールス、あるいはBtoBマーケに関わる方々と色々と実践したことの共有や情報交換し合いながら、それぞれお互いが少しでも世の中をよりよくするために頑張っていければと考えております。

以上、参考になれば幸いです。

また次回は「営業の本質的な使命とは?」などここ数年間で考えさせられた事についても書きまとめていこうと思います。

Twitterはあまり発信できてないですが、また少しづつ発信していければと思いますので、ぜひRTやフォローして頂けると嬉しいです。

最後までご覧いただき、本当にありがとうございました!!!

これを機に改めて前回のnoteでの「Why You?」「Why Now?」の考え方も今回のnoteの「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の"実行"の参考になると思いますので、ご覧になって頂ければ幸いです。


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