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あそどっぐインタビュー7日目 その2 「あそどっぐと阿曽太一のあいだで」

2020年から「ステイホーム」な生活がはじまった。
が、あそどっぐはもっともっと前にステイホームを経験していた。
今回はその当時のお話。

(2020年4月22日収録分)

ほし: こんなふうに出かけられなくなるのって、あそさんはじめて?
あそ: え〜っとねえ、1回からだをコワしたとき1年半、家に籠もってたことがあるから。まあそれ以来かなあ。うん。
ほし: そうか、じゃ、今回は2回目ってことか。
あそ: うん。でもそんときは体調が悪くてだから、今はね、体調はそんな普通だから、状況はだいぶちがうけどね。
ほし: たしかに。でもそうか、前の時は1年半もかあ。
あそ: 1年半は長かったね。
ほし: そうですよね。あの、とんでもないお医者さん・・・(「怒りのホスピタル(修正版)」
あそ: そうそうそう、あのとき。
ほし: あ〜そうなんだ。あ〜、よかったなあカムバックできて。
あそ: うん、ホントよかった(笑)
ほし: それってもう、身体がキツすぎて出かけらんないみたいなかんじ?
あそ: そうだよね、まず息ができないからねそんときはね。だからもう全くなんもできないかんじだね。
ほし: ・・・なんか想像を絶するな。
あそ: うん。だからまあ、食わないと衰えていくから。前も話したっけ? 僕の理想はカリオストロの城のルパンが・・・
ほし: はじめてきく(笑)
あそ: はじめてか(笑)ルパンが撃たれて、「血が足りない」って言って、ドカ食いして、吐きそうになるのを口でおさえて、寝て、次の日なおるっていう・・・
ほし: おお(笑)
あそ: (笑)それをぼくは、自分のなかではお手本にして生きているので。
ほし: そうなんだ知らんかった(笑)
あそ: そうそう。ひたすら吐く寸前まで食べて、寝て、っていうのを繰り返して。
ほし: ルパンと宮崎駿はいのちの恩人。
あそ: うん(笑)いのちの恩人。
ほし: その後、どういう風になおっていったんですか?
あそ: 呼吸のリハビリをしてくれた・・・今ぼくの主治医の先生なんだけど、その先生に見てもらって、まあ、ちょっとずつちょっとずつだね。
ほし: あ〜そうなんだ。あ、じゃあギャオにうつってたお姉さんは?(注1:文末参照)
あそ: そこの病院の人。そこの理学療法士さんだね。リハビリの人。
ほし: そうかあ。

ほし: なんかそういう、いま、なに?極限状態の入り口に立ってるじゃないですか、われわれ。どうやって、持ちこたえるじゃないけど・・・
あそ: そうだよねえ。
ほし: どういうこと考えてたんですかその時?
あそ: そんときはもうなんか考えるとかは、余裕もないよね、なんかね。
ほし: あ〜、そうか。
あそ: まあでもねなんかね、あの〜、このまま弱っていったらなんか悔しいっていうのと、そのね、嫌がらせをした先生に対して悔しいっていうのと、あとなんかあの〜友達がね、待っててくれたりしたのは、励みになったかなあ。
ほし: 待っててくれる?
あそ: 当時20代の人たちで、サークルをつくってて。で、ぼく部長だったのよ。
ほし: うんうん。
あそ: で、つぎのイベントが、ぼくの具合が悪くなって中止になって。で、半年後たっても、ぼくけっこうもう・・・ぜんぜんよくなる兆しが当時まだみえてなかったから。
ほし: うん。
あそ: 「部長の代役立てて、みんなで違うイベントをすすめてってほしい」って言ったんだけど、だけど、「待つから」って言って、みんな待っててくれたから・・・だからそういうのもあったのは、印象には残ってるね。
ほし: イキな計らい。
あそ: うん、そうだね。
ほし: それは、なんのイベントなんですか?
あそ: なんかキャンプをしたりとか、遊ぶサークルなんだけどね。
ほし: へえ、そうなんだ。そのイベントはしょっちゅうやっとった?
あそ: 年に1回キャンプやってて、あとはみんなでちょこちょこ遊んだりだね。
ほし: 何人ぐらいのサークル?
あそ: え〜っとねえ、そんなおっきくないんだよね。主要メンバーは10人ぐらい。で、イベントの時にボランティアの人とか集めて、あと他のメンバーじゃない人もいれて・・・みたいなかんじかなあ。
ほし: へ〜。
あそ: あと、県外にもおんなじような集まりを、マネしてつくってくれた人も居て。それで長崎とか宮崎の人と集まってキャンプをするみたいな。
ほし: お〜。どういうメンバーなんですか? その10人っていうのは?
あそ: 主にまあ、障害もった人と、それに関わってる福祉関係の人。で、「20代限定」っていうくくりをつくってて、30になったら卒業、みたいな。
ほし: あ、じゃあもう卒業済みなんですね?
あそ: うん。会ももう、今はないんよ。
ほし: そうなんだ。その時の友達といまも付き合いはあるの?
あそ: ああ、うん。
ほし: そうかあ。そう、あそさんの友達ってどんな人おるんやろって思って。
あそ: 僕は友達すくないよ。
ほし: え、ホント?(笑)
あそ: だから熊本で友達っていうのは、主にその時のメンバーかなあ。
ほし: あ、そうなんや。
あそ: うん。

ほし: お笑い芸人やってて増えないんですね友達?
あそ: お笑い芸人やってね・・・うん。友達ってかんじにはなんないんだよねなかなかね。ぼくが友達つくるのヘタなだけかもしれないけど。
ほし: ええ、そうなん(笑)
あそ: うん、そうだねえ。うん、仲間ではあるけど友達ってかんじではないねえ。
ほし: その〜なんか、くっだらないなんの話でもない電話をかけるとかではないってことか?
あそ: わ〜、ないね。
ほし: そうか。まえに、私なりに友達の定義を考えたことがあって。
あそ: うん。
ほし: ある程度距離のある人だと、向こうが笑えるような話にしなきゃいけないかなあって気をつかうんですけど。
あそ: うんうん。
ほし: ぜんぜんおもしろくない話をできる人が友達なのかなあって。
あそ: なるほどなるほど。
ほし: あそさんはどんなかんじ?
あそ: う〜んそうだなあ、なんだろうなあ。よくわかんないなあ。
ほし: そ、そうか。
あそ: こっちが友達っておもったら友達なんだろうね。
ほし: なんか意外だなあ、友達少ないの。
あそ: (笑)
ほし: でもたしかに「障害者は引きこもりなんだよ」って言ってましたもんね、まえ。
あそ: (笑)うん、そうだよ、うん。
ほし: 会うのが・・・会いに行くのが、けっこうたいへんそうだもんなぁ。
あそ: そうそう、そうだよね、うん。かんたんに会いに行けないもんね。
ほし: でもその分電話とか、いろいろして、友達いるかなあって思ってた。
あそ: 電話は苦手なほうだからね。
ほし: え、マジで。だいじょうぶこれ(笑)
あそ: 電話しないね、プライベートではねホントね。まあむこうからかかってきたら出るけど。(編注:あそどっぐインタビューの収録は、電話でやっています)
ほし: うん。
あそ: じぶんからはかけないね、ホントかけないね。
ほし: それは「めんどくせえな」ってこと?
あそ: う〜んなんか、なんか・・・う〜ん、めんどくさいっていうか・・・なんだろうね、何話していいかわかんない。
ほし: ええ(笑)
あそ: 人とコミュニケーションとるのが苦手なんだと思うよ、ホント。
ほし: めっちゃ・・・最初のイメージから、こう、塗り替えられますな・・・。
あそ: (笑)
ほし: 鞆の津でコント映像見たときなんか、めっちゃオープンで友達とか多い人なんだろうなあって思ってましたから。(「『あまねさんの握手は・・・アツいよね』」
あそ: いや、ぜんぜんよ。
ほし: (笑)
あそ: うん、一人でじみ〜に生活しとるよ。
 
ほし: なんか、ふしぎ・・・あそさんがその、ふだんすごす感じってどんなかんじだろうってよく想像するんですけど。
あそ: うん。
ほし: なんだろう。あそさんは、自分と似た身体を持ってる人は、あまりちかくにいないじゃないですか。そういう孤独感はあるのかなあって思うけど、横にはヘルパーさんがずっとおるじゃないですか。
あそ: そうなんだよね。
ほし: そうそう。そこの、物理的には孤独ではない状態・・・がほぼ強制的につづく。そこのかんじってどんなかんじなんだろうなあって、いつも思う。
あそ: うん、ぼくも、他の人を体験したことがないから、分かんないんだよね。
ほし: ああ。
あそ: だからたとえば・・・都会に出て行って、ひとり暮らしをはじめて、1日だれとも話さなかったみたいな、そういう孤独はないよね。誰かしらいるからね。だから僕は障害もってなかったら、もっとそういうタイプになってたと思う。
ほし: ああ〜、東京に行って・・・
あそ: 東京に行って、お笑いやってたとしても、芸人仲間とつるむわけでもなく、ライブが終わったらすぐ帰って、バイトして・・・で、バイト先の人とも、大して遊ぶわけでもなく(笑)
ほし: なぜにそんなストイック(笑)
あそ: たぶんそんなんなってた・・・気が、するなあ〜〜。
ほし: そうね、なんかインタビュー続けて、やっと分かってきた。なんかその〜意外と引っ込み思案じゃないけど・・・(「実家では無口なあそどっぐ」
あそ: ああ、そうなんよね。なおしたいんだけど、なおんないね。
ほし: でもあんな・・・でもだからこそなんだろうな。ネタはものすごいアグレッシブなものつくって、私生活では・・・
あそ: 反動かもしんないね、生活のね。
ほし: 反動説、濃厚っすね。なんかスーパーマンっぽい。(注2)
あそ: (笑)
ほし: そうかあ。なんか、奥行きでますね。あそどっぐと阿曽太一の振幅といいますか、ギャップといいますか。

注1:数年前、GYAOであそどっぐのドキュメンタリー番組が公開された。現在は視聴できない。
注2:スーパーマンも、ヒーロー時はあのとおり派手だが、それ以外はサラリーマンとしてじみ〜な日々を送っている。

次回、「阿曽太一があそどっぐになるまで・・・!

あそどっぐ
1978年佐賀県生まれ。熊本在住。お笑い芸人。

あかほしあまね
1991年東京都生まれ。『コバガジン』のライター。


前回の記事はこちら 「コロナからはじまった 『コントの日』

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