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なぜ未来志向の人は、1個40円の卵を買うのか

卵1個10円の時代から、20円の時代になった。
そして、いまおすすめしたいのは1個40円の卵だ。

物価高の話をしたいわけでも、健康志向のオーガニック推しなわけでもない。1個40円は正直高い。ただ、いつでも卵があって節約の味方というヒーローのポジションはそろそろ変えてあげたいと思う。

人口が80億人に達した時、私たちは昔と今を比較して悲観してはいけない。「昔は安かった」は過去の中でしか生きられない昔の私の感情だ。いまを生きる私たちは、未来を輝かせるためにできる選択を選べる人になってほしくて、今日は卵を解説する。

■卵について

卵を産むためのにわとりの飼育方法は「バタリーゲージ(Battery Brooding)」と呼ばれる。金網で囲まれた、1羽あたりB5用紙程度しか自由の効かない狭さで飼育され、卵が転がりやすいように床が斜めになっている。
鶏は羽を広げ、砂場で遊び、止まり木に止まる習性上必要な自然な行動ができない状態で一生を過ごす。

3時間飛行機のエコノミー席に座っているだけでも、体が硬くなってストレスを感じるのに、一生エコノミー席でしか過ごせなくなったらどんな気分だろう。

朝8時の山手線で行われる押しくらまんじゅうのように、狭いゲージで他人とずっと肩を寄せ合い過ごす苦痛はどれぐらいだろう。

アメリカでは、2022年にカリフォルニア州・マサチューセッツ州などがゲージ飼育された卵の販売を禁止した。2027年以降でドイツ、2029年以降でイスラエルでもゲージ飼育が禁止になる。
既に、スイスではゲージ飼育された卵の販売は0%だ。オーストラリアでも同様にほぼ0%。

一方で、日本では2020年時点で販売される卵の94.1%がゲージ飼育だ。安い国日本は、給料が上がらなかっただけではなく、世界の未来志向の動きについていけなかったから安くても成り立っていたのかもしれない。

鶏が可哀想だから(アニマルウェルフェアの観点)だけでゲージを止めるのではない。大量生産により発生する大量廃棄。卵だけでなく、卵が産めなくなった後の鶏の屠殺も環境負荷が大きい。人口が増加するのに、卵の大量生産システムをやめるのは、人間だけの快楽思考から地球にとってよりよい選択は何かを考えたからである。


もう一度、日本の卵を考えたい。

卵1個10円の時代から、20円の時代になった。
そして、いまおすすめしたいのは1個40円の卵だ。

■卵の選択肢は?

ゲージ飼育の他に、「平飼い」と「放し飼い」がある。

平飼ひらがは、平な環境で飼育された鶏のこと。ゲージは卵を回収しやすくするために斜めだったのに対し、鶏舎内または屋外で鶏が自由に地面を運動できるように飼育する。鶏がにわとりらしく生き、その中で卵を産んでその命を頂戴するサイクルだ。

ただし、日本の平飼いは海外よりも基準が緩く、狭い場所で飼育されていることもある。詳しくはこちらを参考に、正しい業者を選びたい。

放し飼い卵(放牧卵)は、平飼いのうち、日中の過半を屋外において飼育することが必要とされている。太陽の光を浴びると清々しい気持ちになるのは、きっと鶏も人間も同じであろう。こういった卵の生産は手間もかかるし、量が取れない。大事に育てられている付加価値が、ゲージ卵より高額になる。でも、未来のために大切に育ててくれてありがとう、という生産者そして鶏に感謝する気持ちを持って、こういった卵を購入したい。

私は捨てない料理を伝える中で、割引になった食材も嫌がらず積極的に買うことを薦めているが、本来一番大切なのはなくならないでほしいビジネスに自分のお金を払い、応援する姿勢である。割引になってからでは遅いのだ。

物価高は苦しい。でも、高いから買わないのではなく、いただく食材を大切に食べる姿勢があれば、少量の買い物でも十分満足できる生活ができる。それが私が一番伝えたい「捨てない料理」の本質である。

未来志向で生きよう。

過去の誰かの汗で、私たちはいま幸せなのだ。この幸せを未来に続けるために、ほんの少しでも汗をかこう。


1ヶ月に1回、いつもの卵を平飼いにするでもいい。あなたの40円が未来を大きく変えるきっかけになるのだから。

あとがき

今週の#お守りレシピ は卵料理を特集しました。卵は捨てられる食材上位にランクインします。食べ方を伝える必要性と、卵を買う負荷の両軸で公開を悩みました。でも、卵料理を扱わないよりも、普段卵を買う人に届けるために卵を扱おうと思いました。卵は完全栄養食と呼ばれるほど、鶏から頂く大事な命の塊です。大事に選択し、大切に頂戴しましょう。

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