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お守りレシピ3. トルティージャの方程式

世界共通のお祭りがオリンピックだとしたら、世界共通の家庭料理はきっと「オムレツ」でしょう。両側をキュッと包んだキャンディーのようなプレーンオムレツ、ふわふわの綿菓子が入っているようなスフレオムレツ(フランス)、花が咲くように熱々の油でふっくら仕上げる芙蓉蟹(カニ玉/中国)、フリッタータ(イタリア)、フーユンハイ(インドネシア)、カイ・チャオ・ヤットサイ(タイ)….。オムレツと一言で言っても、各国で様々です。

今回のお守りレシピは、オムレツの中でも一番汎用性が高く、誰でも簡単にできるスパニッシュオムレツ「トルティージャ」を紹介します。

トルティージャはフライパンで両面焼き上げた丸い厚焼き卵。ショートケーキを切るように三角形に切って取り分け、お好みでケチャップやソースをかけて頂きます。定番なのは、じっくり炒めたじゃがいもと玉ねぎが入ったものですが、バル(スペインの居酒屋)の数だけトルティージャがあると言われるように、ルールのないのがこの料理のいい所です。具材は自由にできる、だからこそ残り物や古びた食材を救うにはもってこいの #お守りレシピ になれるのです。

1.基本のトルティージャ

卵 3個
食材 100g
チーズ ひとつまみ
お好みのミルク 大さじ2
塩 3つまみ
油 適量

基本のトルティージャ

トルティージャは厚焼きがおいしいです。
高さを出すために、フライパンの大きさに合わせて卵の量を変更します。小さいフライパン(18-21cm)があれば3個がちょうど良く、大きいフライパン(26cm)しかない場合には卵を4個、5個と増やしましょう。

テフロン加工されている鍋をお持ちでしたら、それでもOK。実は私も小さいフライパンは持っていません。家ではテフロン加工した18cmの雪平鍋を使い卵3個で作っています。

チーズは入れたほうがコクが出ます。ピザ用チーズが使い勝手がいいです。ピザ用チーズはガビが生えやすいので、私は買ったらすぐに冷凍して保管しています。


卵の味付けは、これさえ覚えておけば十分です。

卵1個に塩ひとつまみ

今回は卵を3個使ったので、塩は3つまみです。
塩ひとつまみは、親指と人さし指の2本の指先で自然につまんだ分量です。本をめくる、ティッシュを掴む、コンタクトレンズを取り外す…などと同じつまむ動き1回分がひとつまみです。この卵と塩の関係は、プレーンオムレツを作る時も、卵焼きや茶碗蒸しを作る時も同じなので頭の片隅に入れておくと味付けに悩まなくなるでしょう。

油は、スペイン流はオリーブオイルを使います。フランス風だとバター、イタリアではオリーブオイルとバターを半々で混ぜて使います。シンプルな料理なので、サラダ油よりオリーブオイルやバターを使ったほうが味に奥行きが生まれます。

2.作り方

「本当においしいトルティージャを作るには、中に入れる具を美味しくしておかないとダメよ。」

外見より中身の心が大事な人間のように、トルティージャも中の具材に気を使います。実際、具をきちんと作ると作らないとでは仕上がりは大違い。丁寧に下ごしらえしたトルティージャは、シンプルだからこそ、忘れられない感動を味わえます。

▶︎作り方

①具材を切る
②具材を炒める、下味をつける
③卵液を作る
④フライパン(または鍋)を熱して、卵液を半熟になるまで混ぜる
⑤フタをして焼く
⑥ひっくり返す
⑦裏側も焼く

①具材を切る
具材は大きさが揃うように1cmの角切り、もしくは一口大の薄切りにします。今回は、冷凍庫で眠っていたグリンピースを救いたかったので、グリンピースに合わせてミニトマト、じゃがいもも角切りにしました。

中途半端に残った食材でも組み合わせると新しい味になるのがおもしろい

②具材を炒める、下味をつける
この段階で100%火を入れましょう。今回であればじゃがいもが固いので先に炒めたり電子レンジで加熱しておきます。オリーブオイルやバターなどと一緒に、強めの火加減で炒めると食材から余計な水分がでません。仕上げに塩こしょう(少々)と、おろしにんにくをグリンピース1個分 ほんの少し入れると味に深みが出ます。

③卵液を作る
ボウルに卵、チーズ、ミルク、塩を入れて混ぜ、炒めた具材を加えます。具材は熱々で卵の中に入れて構いません。私はこの時、刻んだバジルも加えました。バジルや大葉などは炒めると香りが飛ぶので、今回は一緒に炒めず加えています。

④フライパン(または鍋)を熱して、卵液を半熟になるまで混ぜる
フライパンを熱し、オイルを大さじ1分入れて煙が出るまで熱々に熱します。そのほうが卵がふんわり仕上がるからです。卵液を一気に加え、半熟になるまで混ぜます。これも空気を入れて焼き上げ、ふんわりと仕上げるためです。
どこまで混ぜるのか?それは、フライパン(または鍋)の底が見えたらストップです。卵を入れてから半熟になるまでは、お風呂上がりに肌が乾くより早いです。すぐ化粧水をつけるように、すぐに全体を混ぜてくださいね。

底が見えたので混ぜるのはストップ

⑤フタをして焼く
半熟になったらフタをし、弱火で5~7分焼きます。鍋をゆらして、中心まで火が通っていたらOK。中心が半熟の場合、ゆらすとやわらかくて崩れるようなゆれ方をするので、それで見極めます。

⑥ひっくり返す
フタもしくは皿を被せ、手でしっかりと抑え、虹を描くように素早く上と下を返します。本場スペインでは皿を使って返しますが、私はフタ派です。フタとフライパンがぴったり重なり、持ち手もあるので返す時に落とす心配が少ないからです。

⑦裏側も焼く
皿で裏返した場合は、皿を斜めにして滑り台をすべらすようにフライパンに移動させます。フタの場合は立ち上がりのせいで、移動させにくいのが難点です。フライ返しを使って移動させましょう。
裏側は焼き色がつくまで、2~3分焼けば完成です。

冷凍焼けしたグリンピースも、トルティージャになれば立派な具材の一員になりました。中途半端に細々と食材が残った時、そのままでは味が落ちていそうな食材を見た時は、トルティージャにして新しい魅力を引き立ててくださいね。

3.あとがき

残り物で作ったオリジナル料理を「名もなき料理」と表現することもありますが、その時だけできた「一期一会の料理」でもあります。新しく組み合わせた自分の料理を謙遜することなく、自信を持って楽しんでください。その行動が、食品ロスなど社会問題をおいしく解決する大きなきっけかに繋がります。

お守りレシピを持って、捨てる瞬間が食べたいに変わりますように。


一緒に社会問題をおいしく解決しましょう!