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クレイジールーミーとの暮らし。イケメン好きの私がメキシコの我が家を見つけるまで

私はイケメンが好きだ。

本人も認めているから言わせてもらうけど、これは母親からの遺伝なのです。

でもこれまでは、イケメンとは無縁の人生を送ってきた。実際に現実の世界でイケメンと出会うと決まって挙動不審な動きをしてしまう。

だけど、人生ってなにがあるのか分からん。
ここにきて、私はイケメンと同居することになったのです。

それも、ただのイケメンでなく、ちょっと頭がぶっ飛びになられたゲイのイケメン・メキシコ人と。

メヒコの我が家を求めて

なぜ急にこんなことが起こってしまったのか。

簡単に言うと、肩身の狭い生活を送っていた反動だったのだと思う。

超綺麗好きな元同居人、セニョーラとの暮らしにぐったりしていた私は、自由を求めていた。

我が家と呼べる場所が欲しかった。


イケメンとの出会いは本当に偶然だった。

Facebook上やwebサイトで引越し先のシェアハウスを探していたある日、たくさんの投稿の中でもちょっと異色を放つ投稿に目が留まった。

緑の壁、植物もりもりのテラス。ポップな雑貨。
そして、「LGBTフレンドリー」という一言。

私は自分がLGBTに属しているわけではないし、どこまで彼らのことを理解しているのかと言われると人並みだと思うけど、ダイバーシティ(多様性)が溢れてみんなが生きやすい世の中になって欲しい、といつも心より願っている。

だから、これがどんな人なのか、どんな家なのか、少しだけ気になった。

投稿しているのは男の人。ということはこの人はゲイなのだろうか。

投稿の最後に、

「この家が気になる方は、Instagramのダイレクトメッセージまで。」

と書いてある。これまた現代的だなと思いながら、彼のインスタのページを訪れてみる。


プロフィール欄を見ると、

「俳優、歌手」

としれっと書いてある。

ほんまかいな。


彼のページをよく見てみると、まあそれなりの数のフォローワーと、ご本人の写真がたくさん。なるほど、イケメンだ。

メッセージをすると、今日なら見学に来ていいよ、とのこと。

まあ、予定もないしランニングがてら、ちょっくらプチ有名人の家を見学してやるか。

そんな気持ちで、引っ越し先としては大して期待せず、私はランニングを兼ねて見学に出かけた。

イケメンの威力


5キロぐらい走ってたどり着いたその家で迎えてくれた、自称俳優の彼は、ほぉ、写真で見るよりは、その辺にいそうなお兄さんだったけど、確かにイケメンだった。

休日の有名人に出会った気分。

お兄さんはスペイン語しか話せないらしく、これは困ったもんだと思いながら、なんとか私の拙いスペイン語でコミュニティケーションをとってみる。

最初は何を言ってるのかよく分からなかったけど、話しているうちに、なぜか彼の言ってることは理解できる気がして、私の言ってることもすごく理解してくれた。(気がした)

これがイケメンの威力なのか、それとも、私のスペイン語力が急に向上したのか。


理解できた範囲でお兄さんやこの家については下記のようなものだった。

・お兄さんは俳優をしていること。

・地元はどこか離れたところだけど、メキシコシティに長いこと住んでいること。

・自分はゲイで、もう1人のルームメイトもゲイであること。

・日本が好きな友達がいて、私がここに住んだらきっと彼が大喜びすること。

部屋の案内をしてくれて、世間話までして、気づいたらなぜか割と仲良くなっていて、家を出た時には、私の心は完全に持っていかれていた。

なんか分からんが、この家がいい!!!!


気づいたら、優柔不断な私が、デポジットを勢いよく払っていた。

今思うと世の中の女子たちが憧れそうな、
「海外でイケメンのゲイとルームシェア!」というシチュエーションに目が眩んでいた。

この新しい家で、優しいゲイのイケメンとの暮らしが待っている!!!!  


思考回路の単純さに我ながら驚くが、本当にそう思っていた。

だが現実は、このイケメン野郎、この時は化けの皮をかぶっていた。

私は引っ越して一週間もしないうちに気づくことになる。

こやつ、ただのイケメンの優しいゲイではない。

クレイジールーミーであることを。

(愛をこめて、このイケメンルームメイトのことを、ここでは「ルーミー」と呼ぶ。)

クレイジールーミーのこと

本当にルーミーは俳優だった。
売れているかいないかは、敢えてここでは触れずにいようと思う。

ちなみに30代も半ば。

玄関に飾ってあるオスカー像(お土産用)
いつか本物とれるといいね、、、。

よくリビングで、オーデション用にビデオを撮影してる。

ある時、家に帰ったら、医者の役をしなきゃいけないから、気絶した病人の役をしてくれと頼まれた。

それ、私いる?と思いながらも、お人好しの私は、小学校の学習発表会以来の演技を披露した。(横になって四肢を投げ出すだけ)

笑いを必死に堪えて、なんとかルーミーがオーデション受かるため、、と思いながら頑張っていたのに(横になって四肢を投げ出すだけ)

完成した動画を見たら、白目を剥いてる私を横目に、
「ハイ、ドッキリでーす!」とか言っているルーミー。

おい、ふざけるな。


もう一人の、この家に住んでいるルームメイトは、反対にすごくしっかりしていて、なんと弁護士らしい。

弁護士ルーミーもイケメンなのだけど、自由すぎる、クレイジールーミーに呆れてるせいか、あまり家にいない。

私はもっと、こちらのしっかりしたイケメンともお近づきになりたい。

ここまでの紹介だと、クレイジールーミーはただのふざけたフリーターにしか見えないが、いいところもいっぱいあるので彼のために紹介しておく。

自尊心だいぶ高め

インスタのストーリーが、自撮り動画に溢れている。

ローラースケートをしているところの自撮り、(「令和の光GENJI」身近にいた!!)、テラスで植物のお世話をしている自撮り、寝起きのご様子。etc 

ルーミーの趣味:ガーデニング

君はアイドルなのか。

最初見た時は、こいつやばい、と思って引いていたけど、今は五周ぐらい回って、もはや愛おしい。

気づいたら、投稿されるのを誰よりも楽しみにしてる私がいる。
彼の自尊心の高さに、いつも勇気と元気と笑いをもらえる。

お歌がお上手

少し頭がぶっとんでいらして、どこでも美声を響かせる。

シャワーを浴びてる時も、外を歩いている時も、昼であろうと、夜であろうと、そんなの関係ない。

弾けもしないのに、なぜかピアノも持ってる。
おかげで私は10年ぶりにピアノを再開した。

ルーミーに、

「日本とメキシコの一番の違いは何だと思う?」

と聞かれて、

「日本は公共の場では、静かにしないといけないどメキシコは常に騒がしいし、それが許されるところかな~」

と話していたら、急に道の真ん中で

「じゃあ日本ではこんなことできないの?」

と、オペラを歌い出す。大音量で。

日本だと下手したら通報です。ポリシア(警察)が来ます。

いや、上手いんよ、うまいけどやめて。

「メキシコでは普通だよ~」

と涼しい顔で言ってくる。

いや、君以外に道で急にオペラ歌手になってしまう人、私は見たことない。


別の時に、日本でもサツマイモを食べるという話になり(メキシコにもあるのです、サツマイモ!)

「日本ではトラックで焼き芋の歌を流しながら売りにくるんだよ」

と教えてあげると

メキシコの道路の真ん中で

「イシヤキぃ〜イモぉ~~~」

美声を響かせはじめた。

これまた結構上手で、もしここが日本だったら、近所のおばちゃんたちが芋を求めて駆け寄ってきたと思う。

でもメキシコじゃ誰も意味分からんから。やめて。

言語能力高め

職業柄、発声や発音にすごく長けていて、私の下手くそな発音を矯正してくれる。

「LA  LA  LA ~、 違う!この音は、舌を丸めて!違う、全然だめ!」


、、、職業病め、、、、熱血指導がすぎる。


最近はスペイン語が苦手な私を見かねて、調子に乗って英語も話しはじめた。

英語を話せることが嬉しいらしく、私にこの単語は英語で何というのか、と聞き、英語で話したがってくる。

そして英語の発音も悔しいことに上手い。

むしろ、私の英語を理解できないことがあると、

「君は日本語なまりが強くてなに言ってるか分からない、ハハ。
日本人はみんなそんな英語話してるの?」

とか言ってくる。

うるさい。私がなまってるのは認めるが、これでも一応、全日本国民の中では英語喋れる方じゃ。

そして日本語も最近覚え始めた。

「かわいい、おじさん、がんばって、ねこ」

など、謎の日本語のボキャブラリーを拡大中。

どこでゲットしたの、その水筒


一緒に歩いている時に、道に穴があって(メキシコではよくある)

「気を付けて」と、日本語では何というのか聞いてきた。

教えてあげると、さっそく使いたいのか
急に道路の反対側を歩いている赤の他人に、

「キヲツケテー!!!!!」

と日本語で叫んでいた。

君が一番危険だよ、、、お願いだからやめて。

友達多い&老若男女に優しい

友達、知り合いはめっちゃ多い。

毎週末、しっかり着飾って、鏡で十分すぎるほどに自分の姿をチェックした後に、誰かの誕生日パーティーにでかけていく。

そんな毎週、誕生日の友達いる、、?

近所を一緒に歩いているだけで、必ずと言っていいほど、お友達に遭遇する。井戸端会議も大好きだから、一歩も目的地にたどり着かない。

ルーミーが教えてくれた近所のタコス屋。
美味しいごはん屋さんはたくさん知ってる。


お向かいに住んでる、3歳ぐらいの男の子とも大親友の模様だし

道で足の不自由なおじいさんと遭遇した時は、すごい瞬発力で駆け寄って手助けしてあげたり。

(そのあと、そのおじいさんと世間話になって、「この人は君の彼氏か?」と聞かれた私は、これまでにないほど流暢なスペイン語で「いいえ、彼は私のルーミーです。」と答えることができた。)

みんなに優しいのは、ルーミーのいいところ。

そして、ご本人がぶっ飛んでるからか、周りの人やお友達はしっかりして優しい人が多い。よかったね、、みんな優しくて。(きっと私もそのうちの一人ね!!!)

「ゲイ」のルームメイトだからではなく


ここに引っ越してから、ルーミーのお陰で一生分ぐらいのLGBTフレンドリーなお友達が増えたと思う。

スペイン語が壊滅的な私にも、みんなびっくりするほど優しく話をしてくれる。

ルーミーも含めて、今までは「ゲイ」と勝手にひとくくりにしてたけど、実際はそんなのは関係なくて、彼のゲイのお友達たちも、みんな一人一人違った個性や性格があって、それぞれが素敵な人たちである。

別に「ゲイだから」ではなくて、私は一人の人としてルーミーのことが面白くて好きなんだと思う。

学びが深い。

ぶっ飛んでるけど、愛しの我が家


もちろん楽しいことばかりではない。

私が楽しみにとっておいた冷凍庫のアイスを勝手に食べられたり、疲れてるのによく分からん撮影に付き合わされたり、夜中に大きな声で歌いだしたルーミーの子守歌を聞きがら寝ることになったり。

イラっとすることもたまに、いや、割とある。

でも、そんなクレイジールーミーの自由さと明るさと優しさのおかげで、楽しい暮らしとメキシコの我が家を手に入れることができている気がする。

お休みのある晴れた日に、ランニングから帰ってきて、外から私の住んでる家を眺めてみた。

こじんまりしたテラスにごちゃっといろんな植物が植えられてる。その横に私の部屋の窓が開いている。

そんな風景に、ああ、なんだか愛おしい私の家だなと思えた。

植物もりもりのテラス

クレイジールーミーとの生活の行方

今はまだ引っ越したばかり。

いろんなことが新鮮で楽しくて仕方ないけど、
その内、ルーミーのクレイジーさについていけなくなるかもしれない。

ふざけんな、これ以上、おっさんの自撮りなんざ見たくない!
と思う日が訪れるかもしれない。

そうなったら仕方ないけど、また新しい我が家を探そう、、、。

でも、ひとまず、それまでは、ようやく見つけることができた、このメキシコの我が家で、ルーミーにスペイン語の発音矯正をしてもらいながら、クレイジーさに負けじと暮らしてみようと思う。

この先の人生、いつか綺麗で広いお家に住むことはできるかもしれないけど、こんなクレイジーなルーミーと一緒に暮らせるのは今だけかもしれない。

なにより、毎日がネタの宝庫なのです。

だから今はルーミーのクレイジーさにむしろ感謝している。

メヒコでイケメンと待ってるね

私をイケメン好きにしてくれた、お母さん。

私がクレイジールーミーとの暮らしに嫌気がさす前に、是非メキシコに遊びにきてください。

きっとルーミーも、数少ない日本語のレパートリーと、持ち前の歌声で全力で歓迎してくれるはずだから!



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