見出し画像

さよならセニョーラ。【前編】家に帰りたくないサラリーマンの気持ち

約1年間住んだ家を引っ越すことにした。

4月のはじめから新たな場所での暮らしを始めた。

出会いと別れの季節。メキシコでは新年度はあんまり関係ないけど。

いろんなことがあって、これまで、なんやかんや私のメキシコ生活を支えてくれた、同居人とお別れをすることにした。

嬉しいことも嫌なこともあったけど、なぜお別れをしたのかという経緯とこの一年の同居で学んだこと。

(まるで同棲しているカップル間での別れ話に聞こえるけど、20代の小娘と50代のおばちゃんの暮らしです、、、)

セニョーラとのすれ違い

去年の4月ごろから、私はメキシコ人のセニョーラ(おばさま)と同居をはじめた。シェアハウスというか、家賃を払っておばちゃんの家の一部屋に下宿させてもらってる感じ。

セニョーラは優しくて、キャリアウーマンなのに料理も得意で私はセニョーラとの暮らしが気に入っていた。

でも、きっと誰とどこで暮らしてても、この問題はあると思うのだけれど、住み始めて時間が経っていろんなことに慣れてきたり、お互いのことをよく知るからこそ、すれ違いや衝突も増えてくると思う。

もともとセニョーラはびっくりするほど綺麗好き。お家が綺麗に保たれることは素晴らしく有難いのだけど、一緒に住んでいる人の「綺麗好き」のレベルがあまりに違いすぎると、なにかしらの問題が生じる。

「今日の朝、あなたが洗った食器が食器かごに置いたままにしていているから、私の使った食器が洗えない。」

「ダイニングテーブルのイス、あなたが使った後、机の外に出たままになってる。」

姑なのか。(もちろん旦那などいない。)



もちろん、私にも非はある。
でもたまには、うっかりなにか出しっぱなしにしたり、忘れてたりすることもあるよ、、、人間だもの。

私もめちゃくちゃ綺麗好き人間ではないことは認めるけど、人様と一緒に暮らす上で、それなりに気は遣ってたし、お互い気持ちよく暮らそうという努力はしたと思う。(あくまで私の言い分ね)

それなのに、朝からお𠮟りメッセージが来てズーンと思いながら一日過ごすのも、「そんな気になるなら数枚の食器ぐらい、自分でしまってくれてもよくない?」と思っちゃう、自分の心の狭さも、嫌だった。


ただ、それでもセニョーラの優しい面もたくさんあって。

セニョーラが少し体型がお変わりになって、もう着れなくなった若いころの服をくれたり。

クリスマスには、お互いプレゼント交換したり。(やっぱりカップルなのかしら)

私が散らかしたことに対するメッセージを受け取って、帰って「ごめん」と謝ると優しい笑顔で「いいのよ、それよりケーキ焼いたから食べる?」なんて言われてしまう。

そしてそのケーキが、これはまた美味しいのです。

友達にこのセニョーラとの状況を話すと

「それってDV男と一緒じゃない?」と言われた。

自分は嫌だと思っていることされるのに、たまに優しくされるから離れられない。

確かに、、一時の優しさに騙されている!!!

そして更に厄介なことに、どうやら私の脳みそは胃袋と直結しているようで、胃袋が「この家にいたら、美味しいものを食べ続けるられる!!」という信号を生存本能に発信し続けていた。(私の食欲が旺盛すぎるだけなのか、世の中の人もみんなそうなのか、後者であれば、私が婚活のために磨くべきなのは、断然、料理の腕だな、、、)

やり直しのチャンス

出ていきたいけど、いいところもあるし、胃袋完全に掴まれているし、どうしよう、、、という日々が続いた。

そんな時に、私達の生活に大きな変化が。

なんと新しいルームメイトがやってきた。

実はこのセニョーラハウスにはもう一部屋空いている部屋があった。

これまでも、もう一人のルームメイトは募集していて、たまに見学に来る人もいたけど、入居には至っていなかった。(今思うと、その人たちは見学の時点でセニョーラの異常な綺麗好きに気づいていたのかもしれん。)

予期せぬ新ルームメイトの出現。セニョーラと二人だけの生活を窮屈に感じていた私は、3人になれば、この状況がちょっとは良くなるかもしれない!と淡い希望を抱いた。

実際はこの新ルームメイトが、セニョーラを発狂させることを、この時の私はまだ知らない。

セニョーラの豹変

新ルームメイトはスラっとして背が高くて、笑顔の可愛い、フレンドリーなメキシコ人の女子大生。明るくてかわいくてチャーミングでとってもいい子。

ただこのチャーミング女子大生、セニョーラの許容範囲を、ぶっ飛び超えるレベルで、散らかし癖があった。

セニョーラの綺麗好き指数が レベル100として
私が多めにみて レベル70とすると
女子大生は レベル2。


女子大生が引っ越してきた翌日から、セニョーラが大暴れ。

3人のメッセージグループがあるのだけど、そこで朝から晩までセニョーラが一人で、どのように部屋を綺麗に保つべきかという小言を言い続けている。あまりにも定期的にずっとくるので、一瞬もしかしてbotなのかなと疑った。

セニョーラも決して悪気があったり、意地悪でこんなことしているのではない。ただちょっと気合いが入りすぎてしまっている。シェアハウスの管理者として、この家の秩序は私が守る!的な。

その気合の入りっぷりと言ったら、、、

メッセージでまた小言かと思ったら


■セニョーラ:
本日午後8時より第一回ルーミー 会議を執り行います。
【議題】共有スペースの使い方、ルールの確認、洗濯のスケジュールについて。要返信。

私ってば、こういうことに対して良くも悪くも真面目だから、わざわざ早く帰ってきてルーミー会議に備えていた。

なのに!8時になれど、9時になれど、女子大生は帰ってこない、、、。

第一回ルーミー会議、女子大生の無断欠席により中止。

家に帰りたくないサラリーマンのおじさんの気持ち

女子大生もセニョーラもやり過ぎたけど、どっちの気持ちもなんとなく分かる気はする。

せっかく華のキャンパスライフ、他人のおばちゃんに生活のことをどうこう言われとうない。

セニョーラはセニョーラで、自分の、そして私の秩序ある生活を守るという何にも代えがたい使命がある。

そんな二人がバチバチしている横で、勝手にダメージを食らってしまう私。

別に悪いことなんもしてないのだから、堂々としてればよかったのだけど、気にしすぎ芸人なもんで、女子大生へのお叱りが私にも飛び火するんじゃないかと、これまでの生活がさらに窮屈になり、「家に帰りたくないサラリーマンのおじさんの気持ちが分かる病」になってしまった。

※家に帰りたくないサラリーマンのおじさんの気持ちとは、仕事終わって、さっさと家に帰ればよいのだけど、

「うーん、この時間に帰ってもなあ、まだちょっと早いし、もう少し、会社で仕事して帰るか、、、、」

「今週も中盤、若手でも連れて一杯やってから帰るか!」

という状態のことです。


仕事が終われば一秒でも早く家に帰りたい人間だった私も人生で初めて共感できた。

しかし!私には一杯やるのに誘える若手もいないし、むしろ酒がほぼ飲めん。

となると、不必要にオフィスでだらっと仕事したり、用もないけど、ちょっとカフェによって帰ったり、、、、。

なんだこの生活は!!!家とは帰りたくなる、温かい、場所ではなかったのか!!!

こうなると、もうここには住めん。私の心は決まった。

私は秘密裏に新しい家を探し始めると共に、もし将来結婚して旦那子供ができたら、残業なんてさっさと切り上げて一刻も早く帰りたくなる家づくりに全力を注ぐと誓った。

後編に続く。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?