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女子小説のお部屋

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女子による女子のための小説 会社帰りに、休日前夜に、シュワシュワを飲むように
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2019年4月の記事一覧

瀬戸内ドライブ 9

瀬戸内ドライブ 9

「あぁ、そうかも」

案外素直に受け入れられた。

昔の思い出したくないこともあったし、出て行きたかったこともあった。でもここに戻ってきたのは自分だ。誰に強要されたわけでもない。この囲まれた優しい場所に、どこかで私は望んで戻って来た。

ここで彼に出会って、そして悟にも再会した。悪いことばかりじゃない。

寒かった宮島の海も、今の季節ならきっとあたたかい。だってあそこも、今目の前にある凪いだ海と同

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瀬戸内ドライブ 8

瀬戸内ドライブ 8

「ここらで降りてみる?」

悟に言われて車を降りる。ガードレールの隙間に、海に降りる小さな階段があった。枯草で埋まっている石段を、慎重に踏みしめながら降りていく。

近くでのぞいてみると、海の水は透明だった。波の間に、底の方までちゃんと見える。

「助けが必要だなんて思わなかったんよ」

悟がもう一度言った。わざわざ中学のことを持ち出して文句を言われるなんて、「何を今さら」と思って

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瀬戸内ドライブ 7

瀬戸内ドライブ 7

橋の手前で悟は車を止めた。小さな駐車場でトイレ休憩を済ませて、少し周りを歩く。橋の向こう側には、これから渡る島と海が穏やかにたたずんでいる。あのハワイの海よりも、透明に近いような青だった。

「なんでここは嫌なん」

悟が急に聞いてくる。

「ここ?」

「地元。いつも言いよるじゃん」

地元が嫌だと悟に直接言った覚えはない。悟はここしか知らないのだから、めったなことは言えない。だけど悟はなんとな

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瀬戸内ドライブ 6

瀬戸内ドライブ 6

彼女が東北に帰ってしまうなら、二人の別れは近いかもしれなくて、私にとってはチャンスだった。そう気が付きながら、何も行動出来ないまま、ある日彼に転勤辞令が降りた。東京本社への復帰だった。

「ご栄転おめでとうございます」
「おめでとう」
支社のみんなに囲まれて、花束を持ち、これまでで一番うれしそうな笑みを浮かべる彼を、私は遠巻きに眺めていた。その瞬間も、しっかりと切り取ってしまった。

東京に彼が戻

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瀬戸内ドライブ 5

瀬戸内ドライブ 5

いつの間にか車内で流れていた、スピッツの曲は止まっている。はっと目を開き車の外を眺めると、田んぼを抜けてもう山の中を走っていた。
ときどきトンネルがあって、それを何度か抜けると小さな集落があった。地方のどこにでもある、ガソリンスタンドと、小さな電器屋、郵便局とスーパーだけがあるような町だ。

「なあ、運転はせんの?」
悟が聞く。

「え? しないけど」
「ここらの道、あんま知らんみたいじゃけぇ」

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瀬戸内ドライブ 4

瀬戸内ドライブ 4

彼と最初で最後のデート。宮島行きフェリー乗り場から見える冬の海は、どんよりとして、そう綺麗とは言えなかった。それでも彼は「海の匂いがする」とはしゃいだ。

「こっち来て観光してなかったから」
フェリーの上で、彼はじっと向こう岸を見ていた。私は海風が寒くて、ダウンの胸元をぎゅっと握った。船内に入りたかったけど、彼の嬉しそうな顔を見ると言い出せなかった。私にとっては、宮島のフェリーは何度も乗ったことの

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