ヨシタ健司

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【読書感想】『動物会議』/人間っぽい動物から言われるからこそ刺さる説教

エーリヒ・ケストナーの絵本『動物会議』(1949年刊行。日本語版は池田香代子訳、岩波書店より)を読んだ感想です。  この物語に出てくる動物たちはとても人間的である。新聞を読んだり、美容院に行ったり、歯医者に行ったり、服を着たり、そして会議を開いたり。  そのような「人間っぽい動物から言われるからこそ刺さる説教」がこの物語の核だ。  なぜ人間らしさが必要なのだろうか。それは著者エーリヒ・ケストナーがファシズムに強く反対し自由主義や民主主義を強く擁護していた人物だったからで

    • 歯医者さん 絶望と希望のワンダーランド

      夏くらいから歯の詰め物が「ぐらぐら」し始めた。「早く歯医者に行かなければ」と思いつつ、重い腰を上げたのは11月下旬。 訳あって以前通っていた歯医者には行きづらく、新しいところへ行くことにした。 そこの歯医者は常勤3名と非常勤8名という少し変わった体制の医院。複数人で診察対応しており、予約なしでOKというのが売りだが曜日によって先生が変わってしまう。 その日私の対応をしたのは若い医者で、いかにも非常勤という風体。 一通り歯を見て先生はおっしゃった。 「抜歯してインプラントがベ

      • 【感想】『すずめの戸締まり』/美しさは心を洗う

        新海誠監督の『すずめの戸締まり』を見てきました。 見終わったあと、まるで壮大なオーケストラを聞いたような余韻を感じました。物語、映像、音楽それぞれが噛み合い、高い没入感を味わいました。 これまでの新海監督作品においては「音楽を使いすぎる」との批判もありますが、音楽が映像を引き立てるのであれば何も問題ないと思います。『すずめの戸締まり』に関しては、前作よりも意識して抑えているようにも感じました。 映像の美しさに関しては今回も当然のクオリティ。物語の重要な場面である「常世」の

        • 【感想】『線は、僕を描く』

          横浜流星主演の「線は、僕を描く」を見てきました。 〈ストーリー〉 大学生の霜介(横浜流星)は絵画展示設営のアルバイトで水墨画の巨匠、湖山(三浦友和)に才能を見出され弟子になる。湖山のもとで様々な人と出会い、霜介は成長していく。 〈感想〉 感涙でした。3回は泣きました。 「線は、僕を描く」は、「何かを始めようとする人たちの背中を押す映画」だと思いました。私が感じたテーマは「変わる」。 霜介には悲しい過去があり、新しい人生を踏み出すことができなかった。水墨画と出会い、そし

        【読書感想】『動物会議』/人間っぽい動物から言われるからこそ刺さる説教