見出し画像

【感想】『すずめの戸締まり』/美しさは心を洗う

新海誠監督の『すずめの戸締まり』を見てきました。

ユナイテッド・シネマ水戸

見終わったあと、まるで壮大なオーケストラを聞いたような余韻を感じました。物語、映像、音楽それぞれが噛み合い、高い没入感を味わいました。
これまでの新海監督作品においては「音楽を使いすぎる」との批判もありますが、音楽が映像を引き立てるのであれば何も問題ないと思います。『すずめの戸締まり』に関しては、前作よりも意識して抑えているようにも感じました。

映像の美しさに関しては今回も当然のクオリティ。物語の重要な場面である「常世」の美しさには息を飲みました。
美しさについて入場の際いただいた小冊子に新海監督のコメントがあります。

「観客の何かを変えてしまう力が映画にあるのなら、美しいことや正しいことにその力を使いたい」

(『新海誠本』より「すずめの戸締まり」政策委員会)

私たちは美しい景色を見れば気分が変わるように、美しい映像を見ればそれだけで心が洗われる。新海誠監督の力だと思います。

「少女(鈴芽)と椅子(草太)」という突拍子もない組み合わせで進む物語ですが、鈴芽と草太の純粋なラブストーリーに合わせて椅子の違和感は無くなります。鈴芽が椅子の草太にキスをするシーンは、本当は可笑しいはずなのに気恥ずかしくも感じました。

『天気の子』『君の名は。』に比べて女性の物語になっています。明るく力強い女性が登場します。
東日本大震災という重いテーマを扱っているにもかかわらず、物語が暗くなくならない要因となっています。
私たちも東日本大震災を題材とした映画を鑑賞できる心理的時期に来ていると思います。「震災というトラウマを戸締まりする」。鈴芽がしたように、前に進まなければいけないと思いました。

個人的には草太の次の言葉が胸に刺さりました。

「大事な仕事は人から見えないほうがいいんだ」

多くの仕事は世間から注目されることはありません。ですが社会にとって必要なものです。「注目される仕事だけに価値があるのではない」。そういう認識は誰しもが持っており共感できるのではないでしょうか。

『すずめの戸締まり』は映像、音楽、物語全て素晴らしい作品でした。
私の評価は★★★★☆(4.5)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?