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はやとちり 2025年、12月。 「そんな、、、、。」 シュンは現実を受け止め切れない。 対照的に、世の中は宴だ。テレビはこの時期特有のBGMと共に、ファストフードを宣伝する。各家庭では外出自粛の中でも、飾り付けの準備に追われていた。キリスト教徒でもないくせに。 通り魔の被害者は、案の定アヤだった。彼女はなんとか一命をとりとめるが、脳死と判断される。キセキが起きない限り、回復は見込めないというのが医者の見解であった。 それから4ヶ月後。2026
生きる意味 「うそだろ」 液晶画面は、自分がプレゼントした腕時計を映し出す。シュンは驚きを隠しきれず、一目散に家を飛び出した。 雪の影響で滑りやすくなっているにも関わらず、階段を1つ飛ばしで降りて行く。自動ドアのロビーで一時停止するも、そこからは全速力で事件現場へと走った。 走ること10分、シュンの体から季節外れの汗が大量に噴き出す。 「あと少し。」 自分を奮い立たせた瞬間、アヤと過ごした思い出がシュンの頭の中を巡った。 出会いはシュンの
手遅れ。 「もう出てけよ。」 2025年、11月。外では雪が降っている。もうシュンは我慢の限界であった。 彼の声により、部屋の温度は一気に低下する。もう床暖房も効かないくらいだ。 「えっ、、、、、」 予想外の出来事にアヤは後退る。彼の声がやけに冷たかったため、尚更彼女は混乱した。 ここ1ヵ月、2人の間で喧嘩が絶えなかった。喧嘩というより、アヤが一方的に怒り狂い、シュンは謝罪を繰り返す。そんな日々が続いていた。 気晴らしに外出でもできれば
蟻の関係 「なぜなのよ!!」 それは2025年10月。シュンとアヤが婚約を決め、2か月が経過した頃である。 アヤは大きく口をあけ、眉間にシワを寄せる。この日はいつもと違い、2人の巣には彼女の声が響き渡った。 同棲を始めて3年が経つ。一般的に言えば、今まで喧嘩がない方が不思議であった。これは乗り越えるべき壁なのかもしれない。 「ごめん。ごめん。気をつけるから。」 シュンはアヤを恐れつつも、その細くなった目を見て謝罪した。 「2回もいらない
前兆。砂嵐と張り紙 2025年、8月の夜。 「話があるんだけど。」 シュンは自分の手を後ろに回し、アヤの背後から声をかけた。 この時2人が同棲して3年が経過していた。 「なにー?」 家事を終えたアヤはソファーに座り、ニュース番組を見ながら口だけで返答する。 1日の終わりはニュースで締める。かつてバリバリのキャリアウーマンであった彼女には、このように捨てきれない習慣がいくつかあった。 その番組では、家の近所で起きた通り魔事件の特番をやっていた。まだ感
あたりまえ神話 2023年、某月。 「おはよ!シュンの好きなカレー作ってみた!!」 重い目を開けると、キッチンにはアヤが立っていた。驚きのあまり、シュンの目は一気に覚めあがった。その日は2人が同棲して、1年が経過していた。 感染症の影響により、2022年にアヤの会社は倒産。自宅待機中、何度も正気を取り戻しては病んでいくアヤの心は、倒産と同時に一気に落ち込んだ。 一方シュンの会社は、事業をITに変換しなんとか生き延びることができていた。そこでシュンはア