見出し画像

「夢の5G」本当にそうか?|ICTと社会

5Gとは、第5世代モバイル通信システムのこと。現状、広く使われている4G-LTEシステムよりも通信速度などのスペックが1桁くらいアップする通信規格である。

3月末より、ドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクの3キャリアが揃って商用サービスを開始した。5Gの概要については、様々な解説がWebにも上がっているので、参照いただきたい。 

ただマスコミ等での5Gの報道のされ方については、かなり誇張的なものが多いように思われる。上のWeb記事内でも「5G環境で実現できることは?」に例えば「VR・AR体験」とあるが、これは家庭内でも光ファイバと高速Wi-Fiですでに実現できている。また自動運転はGPSとセンサー機能により実現でき、5Gは必ずしも必要とされない。

そもそも5G用に割り当てられた周波数帯(3.6~4.6GHz帯および27~28GHz帯)は、従来の4G-LTEより高い周波数のため、電波が遠くまで飛びにくい性質があり、広く面的なエリア化が難しい。3キャリアがサービスを開始したと言っても、まだ「スポット」がポツポツある程度だ。今後4~5年かけてエリア拡大が進められるが、5G周波数の性質から言って、人口カバー率99%といった面的なエリア化は難しいだろう。

前述の「5G環境で実現できることは?」の中に「IoT化の加速」とあるが、狭いエリア内で現実的にどのように実現するのか、簡単な話ではない。

また現時点で提供されている5Gは「NSA方式」(Non-Standalone)であり、基本的なアーキテクチャは4Gを踏襲した、いわば「未完成版」。本格的な「SA方式」(Standalone)の展開は恐らく2~3年後だ。

5Gがダメだと言っている訳ではない。技術的には素晴らしい可能性を持っているが、その本格普及はエリア的にもシステム・アーキテクチャの面でも恐らく2~3年後であり、この技術をどのように活用するかについては、まだまだフワっとした話ばかりで、具体化が不充分だと思われるのである。

週刊エコノミスト5/19号には、「コロナ後は5G特需が再来する」との記事が掲載されていた。

私は現時点でまだ「5G特需」と言えるような段階は来ないと思う。

4G-LTEがスタートした2010年頃は、折しもiPhoneが登場し、手のひらに収まるスマートデバイスと超高速無線通信がベストマッチとなり、大きなインパクトをもたらした。

5Gも、そのスペックを充分活かせるようなキラーデバイス、キラーアプリ、キラーサービスが出てきて、初めて「特需」が生まれると思う。

それを私も一生懸命探しているが、なかなか見つからない。もっとよく探したいと思う。

■■

記事は以上です。お読みいただきありがとうございました。

このシリーズは有料マガジン「ICTと社会」にまとめていますので、よろしければご購入下さい。

ここから先は

48字
各記事は全て無料でお読みいただけますが、不定期の投稿となりますので、マガジンをご購入いただけるとまとめ読みすることが可能です。

ICTと社会

100円

インターネットやスマホ、テレワークなど、私たちの生活や仕事に欠かせないツールとなったICT(情報通信技術)。これをどう使いこなし、社会や暮…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?