見出し画像

インクルーシブな行政サービスづくりを考えるマガジンを立ち上げます!

「行政サービス x インクルーシブ x デジタル化」を切り口に発信する、インクルーシブサービスデザインラボという活動を始めます。今後デジタル化が進む中で、行政サービスをよりインクルーシブなものとするためのプロセス、今起きている/今後起きうる利用者への排除・阻害について考えていきます。まずは、私(ひがし)とNPO法人Social Change Agencyの代表理事でポスト申請主義を考える会代表の横山さん( @wish0517 ) とでnoteでの発信などをおこなっていきます。(ここで扱う内容は個人としての見解であり、私が支援する政府や自治体のものではありません)

関連するキーワード: サービスデザイン, インクルーシブデザイン, co-design, UXリサーチ, アクセシビリティ, 申請主義, 制度からの排除・阻害


行政のデジタル化とインクルーシブ

いま、日本で行政サービスのデジタル化に向けた機運が高まりつつあります。象徴的な動きとして、2021年9月には政府にデジタル庁が設立される予定ですし、自治体でもDXに向けた取り組みが加速しています。

その中で特に強調されているのが、「インクルーシブ」という概念です。

デジタル庁におけるビジョンとしても、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」ということが掲げられています。
その具体的なイメージとして、デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の中では「アクセシビリティの確保、情報通信インフラの充実、高齢・障害・病気・育児・介護と社会参加の両立、多様な価値観やライフスタイルへの対応等により、包摂的で多様性のあるデジタル社会を目指す。」と表現されています。

画像1

(デジタル社会形成10原則案より)

包摂を考えるために、排除・阻害に向き合う

筆者の東は以前障害福祉領域のベンチャーで働いており、現在は政府、自治体でのデジタル化推進に携わっています。一方で、父親として双子の子育てにも取り組んでいます。

そうした個人としての狭い範囲の経験で考えても、実際に「包摂的で多様性のあるデジタル社会」を実現というのはとても難しいチャレンジであると思っています。

例えば、男性の育児参画が最近話題となっています。あくまで私の感覚ですが、行政サービスはまだ夫婦での子育てという前提で設計されていないと感じることがありました。自治体での支援サービスを申請しようとしたところ、妊婦が対面でなければ交付されないというルールだったことや、母親が記入することを前提としたフォーマットになっている書類にも出会いました。他にも、多胎児に特化した支援がそもそも存在していないという状況もありました。

もちろん、何かしら理由があってルールになっているとか、利用者の絶対数が少ないので支援が十分ではない、というような背景はあると思います。私自身も自分が当事者にならなければ気づきませんでした。

重要だと思っているのは、おそらくサービスを設計する人が想定していなかった(かもしれない)ところに、排除・阻害を生み出す要因はありうる。そして、これを解決するにはもそもどこに排除・阻害の要因があるのかに気づき、それを困難を抱えているユーザーと一緒に解決していくというプロセスが必要ではないかということです。


インクルーシブデザインというアプローチ

一つ手掛かりになるのは、インクルーシブデザインというアプローチだと思っています。

インクルーシブデザインという用語はロイヤルカレッジ・オブ・アートのロジャー・コールマン教授が初めて用いたもので、イギリス発祥の考え方として主にヨーロッパを中心に取り入れられています。これは、「これまで除外されてきたユーザーを包含し、かつビジネスとして成り立つデザインを目指さす考え方」と言えます。

上記のように、インクルーシブデザインのアプローチでは、デザインによる排除とその影響を理解するというところに特徴があります。インクルーシブデザインの原則について、以下の3原則が指摘されています(Kat Holmes, MISMATCHより)。

・排除を認識する。
・多様性から学ぶ。
・ひとりのために解決し、それを大勢に拡張する。

排除や阻害は必ずしも悪意から生まれるものではなく、サービスを提供する側の無意識のバイアスに基づいていることが多いため、初期のプロセスからユーザーを巻き込むことが必要です。サービスが完成する直前に簡単に意見を聞いて何かしらの対応策を付け足せばよいということではなく、最初から巻き込んで構築していくことで、結果的に全体にとってもより良いサービスとなる可能性が高まります。

ただ、インクルーシブデザインを知識として知っているだけでは十分ではありません。最終的なユーザーにとっての成果という観点では、行政におけるサービス開発のあり方自体を見直す必要があると思います。インクルーシブデザインは、プロセスが重要だからです。

ちなみに、インクルーシブデザインと似た考え方としてユニバーサルデザインという言葉もありますが、私たちはこれを否定するものではありません。このマガジンでインクルーシブデザインを取り入れている理由は、まずは今までの行政サービス、そしてこれからのデジタル化の中でどのような課題があるのかを発見していくということからはじめていきたいと考えており、そのためにはインクルーシブデザインというアプローチが適していると考えたためです。


インクルーシブサービスデザインラボ

今後このマガジンで記事を発信していきたいと考えています。

最初に書いたように、今後デジタル化が進む中で、行政サービスをよりインクルーシブなものとするためのプロセス、今起きている/今後起きうる利用者への排除・阻害について考えていきます。

より先行している海外事例から学べること、日本独自でどんな課題が起きているのか、など具体的な紹介や提案ができていければと思います。

想定している読者の方は、行政サービスのデジタル化にご興味のある方、実際にそこに携わられている方、日ごろ行政サービスによる排除・阻害についての課題を感じてらっしゃる方などです。

また、このマガジンは行政職員の方、NPOなどで活動されている方、インクルーシブデザイン、サービスデザイン、UXリサーチに知見のある方など様々な方と一緒に執筆できればと考えています。私自身もいろいろと学んでいきたいと思っています。興味のある方はぜひご連絡ください。

筆者(東)のTwitter: https://twitter.com/heykuro1

こんなテーマについて書いてほしいというリクエストもお待ちしております!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?