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誤解は往々にして手抜きから起きる

「コミュニケーション」はいろんな場面でよく使われる言葉であり、概念だと思います。仕事でもプライベートでも。仕事も接客業はもとより、デスクワークでもそうですし、対面でもオンラインでも、たいていの仕事においてコミュニケーションは常に求められます。

ただ、言うほどみんなコミュニケーションってうまくないんじゃないかなって、長年仕事をしてきて思います。僕自身、「コミュニケーション」という言葉には苦手意識があり、人と話をするのはいつも緊張しますし、うまく話せるかどうか不安があります。でも、まわりの人同士のコミュニケーションを観察していると、雑というか、それでは誤解されてしまうよなあ、というやり取りがわりと日常茶飯事で行われているのも事実です。

世の中には、コミュニケーションに関する学習教材が溢れています。書籍やセミナー、勉強会など、興味と関心と意欲さえあればいくらでも勉強できますし、やった分だけ上達するものだと思います。ただ同時に、「勉強」となるとちょっと腰が重いというか、そこまでしなくてもなあ、一応なんとかなっているし・・・という感覚が大勢なのではないでしょうか。

そういうぐうたらな人向けに(僕もそうです)、もう少し簡単にコツをまとめると、以下の要素が大切だと思います。

・背景や意図を説明する
・されるであろう誤解を先回りして防ぐ
・共感を狙う
・必須なのか推奨なのか意見なのかを明確にする

背景や意図を説明する

人間、考えていることや経験には大きな差があります。分かり合うこと自体がとても難しいことなんだ、ということを理解しておくことが重要だと思います。なので、理解してもらいたいことの前提となる背景を省略せずに説明しましょう。わかっていて当然、という思い込みは誤解の温床であり、手抜きとも言えます。逆に言えば、背景が共通化されている間柄ならコミュニケーションコストはものすごく低くなります。それは仕事でもプライベートでも一緒ですね。ただ、あまり自信過剰に思い込むのも誤解のもとなので注意しましょう。

例えば、「○○の資料をつくる」ということについて理解を合わせたいのなら、なぜその資料をつくらなければいけないのか、その重要性や関係者の期待、それによる周囲への影響などについて説明しておくことが肝要です。

されるであろう誤解を先回りして防ぐ

これはかなり重要であり、なかなか難しいところなのですが、「誤解されて当然」という前提の中で、「こういう伝え方をしたら、こういう誤解をするのではないか?」という想像をし、それに対して、補足の説明を用意しておき、軌道修正を図る、というものです。つまりリスク管理の考え方ですね。

自分だったらこういう誤解をするかも知れない、という仮定をして、ケースを想定しましょう。思うに、この部分の想像がどこまで豊かか、時間を惜しまず考えられるかが、コミュニケーションの質や結果に繋がるのだと思います。

共感を狙う

これはちょっと嫌らしいところですが、大事なことです。誰しも、「押しつけられている」と感じると反発したくなったり、特に明確な反論もないのだけど賛成したくなくなったりするところがあります。なので、相手にとって共感しやすいポイントをつくっておくことでスムーズに進めることができます。別に嘘をついたりするわけではなく、「この観点で見れば、こういうメリットがあるよね」というところを示す感じです。そのくらい汲み取ってよ、というのは、相手に頼った考えであり、要は手抜きです。ちゃんと合意形成までたどり着きたいのであれば、そこまで頭と手を回しましょう。

必須なのか推奨なのか意見なのかを明確にする

わりと日本人にありがちと言うか、日本語の問題もあるのかも知れませんが、強い意志であるにもかかわらず、言葉としては「○○がよいと思います」のように弱い表現を使ってしまうことがあります。使っている方は、曖昧な表現を使っている意識がなかったりするので、あとで振り返ってみると「ちゃんと伝えた」「そういう意図だとは思わなかった」といういわゆる言った言わない問題に繋がりがちです。

これを防ぐために、自分の意見の強度を明確に表現するように心掛けましょう。特に「必須」ならば躊躇なく必須であることを伝えなければなりません。その上で、それが本当に必須なのか、必須にした場合の問題があるのかどうかを話し合っていけばよいわけです。必須であることが伝わらなければ、そういう話し合いにすらたどり着かない可能性があり、それが誤解や失敗の火種になることは非常によくある話です。

まとめ

コミュニケーションというとありふれた表現であるが故に、逆に軽く流されたりする面があると思っています。なんとなく、互いに話さえできていれば、その話の中身とは無関係に「コミュニケーションが取れている」と処理されがちです。どういう意図で理解を得ようと行動しているのか、そこがズレていたり、希薄だとしたら、もはやコミュニケーションは成立しようがないと言えます。

知識やテクニックもありますが、それより大切なのは、手抜きをせず、丁寧に背景や意図を説明し、陥りがちな誤解を回避するために先回りをして補足の説明を行い、相手が受け入れやすい土壌をつくる、その気配りや根回しだと思います。そういう泥臭い、面倒なことを、嫌がらずにこなす人は、丁寧なコミュニケーションを実践できますし、結果として誤解を最小限に抑え、理解や合意形成にたどり着く確率を最大化できるはずです。以前にも書きましたが、口が上手いのと、コミュニケーションが上手なのは違います。手抜きによる雑なコミュニケーションは誤解を生み、結局ゴールにたどり着くためにより多くの時間と労力を使うことになります。たいていのトラブルは誤解が出発点であり、多くの誤解は手抜きから起きる、ということを知っておくだけでもだいぶ成功への確率は上げられると思います。

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