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「衝動買い」より厄介!?「衝動サーチ」にご注意を

集中して書くことの何と難しいことか。書く仕事をし始めてから早4年目になろうとしているが、集中して一気に文章を書ききるということはいまだに難しい。

書き手にとって厄介な事柄の一つは、書いている間に頭に浮かんでくる疑問やひらめきではないだろうか。


書く、読むといった行為は脳を強く刺激する。書くという行為を行っていると、普段は思い浮かばないようなアイデアが海底から湧き出る泡のように次々に浮かんでくるのだ。

アイデアを糧に創作を行うクリエイターとしては大変うれしいことなのだが、ひらめきが発生するたびに集中が乱されるのも確かな事実である。


実際、この文章を書いているときも、

「泡とあぶくって何が違うんだ?」

という思考が生まれ、「泡 あぶく 違い」でググってしまった。


ライティングの仕事の7~8割はリサーチであり、ググる時間が仕事の大半を占めるため、目の前には常に検索の誘惑が待っている。関係のないことを検索したが最後、TwitterやYouTubeにまで派生して時間を浪費してしまうこともしばしばだ。

このように「書く」という行為を行っている時、人はひらめきや「知りたい」という感情の誘惑にさらされている。これは、検索の容易なデジタルツールを使って執筆を行っている以上、より厄介なものとなるだろう。


◇◇◇


そんな経験から僕はいつからか、作業中に浮かんだ疑問やひらめきをメモして「調べたいものリスト」をつくり、あとでまとめて検索する時間をつくるようにした。

最初は作業中の集中力を上げるために始めた調べたいものリストだが、いざ始めてみると思わぬ副次効果があることに気づく。

時間を置くことで、「それは本当に検索するほどのことなのか?」というのを冷静に判断できるのだ。


例えば、先ほどの「泡 あぶく 違い」という検索ワード。もしかしたら、気になって検索してくれた方もいらっしゃるかもしれない。

だが、想像してみてほしい。

仮に「泡 あぶく 違い 検索」とタスクリストに追加して、明日見返してみたらどうだろう。冷静になった明日の自分は「まあどうでもいいか」と思ってググらずにタスクを完了する可能性も高いのではないだろうか。


「衝動買い」という言葉がある。

「欲しい!」と思った瞬間に購入し、数日後に後悔する、という経験は誰しも一度はあるだろう。瞬間的には熱を帯びていた感情も、時間とともに少しずつ冷めていく。

これは多くの感情に当てはまり、「知りたい」という感情にも作用する。衝動買いならぬ「衝動サーチ」を我々は行ってしまうのだ。


現代人は、常にこの「衝動サーチ」の誘惑にさらされている。もちろんSNSのチェックなども、同種の誘惑といえるだろう。

衝動サーチのタチの悪いところは、ひらめきや好奇心が次から次へと連鎖するところだ。まるでセールスのように「ついでにこのワードはいかがですか?」「調べるついでにSNSチェックとか!」「ついでにこの関連動画も!」という誘惑にさらされることになる。


衝動サーチはある意味、財産による制限がある衝動買いよりも危険なものかもしれない。お金の浪費は残高の数字や財布の中身の変動によって目に見えるが、時間の浪費は行動記録をつける、といった一工夫をしないと目に見えないからだ。

目に見えないだけで、人の感覚は大きく鈍ってしまう。自分が何にどれくらい時間を使っているのかは、ぼんやりとしか認識できない。

「時間がない」という意識は多くの人が持っているはずなのに、なぜ、どのように時間がないのか具体的に理解している人はそう多くない実情がそれを物語っていると思う。


◇◇◇


さて、話を戻そう。
書いているときに浮かんでくるひらめきの厄介さ、そしてその対策としての「調べたいものリスト」から話は始まったのだった。

思考やひらめきは瞬間的に強い熱量を持つ。だが、時間をおいても熱量を保ち続けている思考はそう多くない。一旦「調べたいことリスト」に寝かせておいて、時間を置いてからそのリストを見なおしてみてほしい。

「これは調べるのめんどくさいな」「どうでもいいや」

といったものがいくつも混ざっていることに気づくはずだ。


衝動買いの対策が時間を置くことであるのと同様に、衝動サーチも時間を置くことで対策することが可能なのだ。

気になることやひらめきが浮かんだ時にはぜひ一度「調べたいものリスト」を活用してみてほしい。本当に貴重な時間を使って調べるべき事柄なのか、自分が冷静な視点で判断できていることに気づくはずだ。

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