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DXが求められる背景事情/外部環境の変化


 こんにちは。マーケティングの視点で読解力を高めるためのノートです。
本連載では、「デジタル思考とデータドリブン・マーケティング」というテーマで、アナログとデジタルの判断の違いや、データの特性や活用上の課題、DXを推進するために必要な考え方やステップなど、ますます求められるファクトベースの変革について考えてみたいと思います。

 今回は、「DXが求められる背景事情」について、主に外部環境の変化から説明します。


 ここ数年でDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が強調されてきましたが、2020年以降のコロナ禍が、社会の変化や変革を促す要因となり、DXの必要性が一層加速しています。

 これまで当たり前だった考え方や、長年変化が見られなかった価値観が崩れ、変化が短いサイクルで起こるようになりました。そして、その変化量は以前よりも非常に大きいということを、社会全体が認識しました。この認識がきっかけとなって、DXの重要性が高まったと考えられます。

 このような外部環境の変化の中で、データに基づくマーケティングの重要性について、以下の2つの傾向から解説いたします。

1.変化はデマンドチェーン上を伝播する

 食品加工メーカーを例に取ると、「スタッフのマスク着用」、「手洗いの徹底」、「店内の除菌」、「定期的な喚起」等、2020年以降のコロナ禍における生活習慣や行動の変化は、以下のような流れで自社の変化を促す要因となっていることを認識する必要があります。

 2020年春以前と、コロナ禍が本格化した2020年春以降を比較すると、生活者のお買い物時の価値観や心象が大きく変化しました。例えば、密を回避する買い方や人やモノとの接触を避ける行動が定着し、外出自粛を契機とした内食への回帰やネットスーパーや即配の利用が拡大しました。この過程で、小売業に対する生活者の期待値や重視する観点も大きく変わっていきました。

 これらのお買い物のスタイルの変化や求める商品の変化は、変化対応業である小売業によるナショナルブランド商品の品揃えに影響を与える他、外食の減少に対応する中食やテイクアウト需要への対応、自社のプライベートブランドの強化などのアクションに繋っていきます。

 食品加工メーカーは、直接お客さまとの接点を持たないため、行動変化を把握しづらいという商流上の課題があります。さらに、商品開発のR&Dから商品企画、新商品をリリースするまでのリードタイムが長いという事業特性上の課題もあります。そのため、従前の事業活動を継続している限り、外部環境の変化から取り残されるリスクが高まることになります。

 したがって、お客さまの価値観の変化、ライフスタイルの変化、求める商品の変化、内食・中食・外食の使い分ける行動変化など、現在世の中で起きている変化や事実をキャッチするアンテナを持つことが非常に重要であることがわかります。

2.全体を分解した上で変化特定が必要

 コロナ禍における変化は、業界や業態によって影響度が異なり、その傾向と変化量は常に変動しています。一つの時点だけのスナップショットを見ても、自社や事業、商品への影響を正確に把握することは難しいことがわかっています。

 例えば、業態別の月次売上推移を見ると、コロナ禍の初期は食品スーパーマーケットの売上が好調だったものの、2021年度にはコロナ特需の反動減で減速し、2022年度にはインフレによる消費マインドの停滞で集客や売上確保が苦戦しています。

 また、特定の事象に直面した時やトレンドに触れたときの態度変容や行動変化の量は、性別や年代、地域によって異なります。行動や意思決定を規定する個々人の心象や価値観が異なるため、一定期間に集計された自社の業績や商品の販売成果等の結果を見るだけだと、変化に関わる意思決定を誤る可能性があります

 今後のアクションや課題解決のためには、お客さまを性別、年代、地域、お客さまのライフスタイルや価値観によって区分し、異なる変化の兆候を特定した上で、その変化量を推定し、傾向を理解するための確かな物差しを持つ必要があります。

 次回は、自社が取り扱う商品の提供価値の観点から、変化への対応の必要性を考えてみたいと思います。

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