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最初のファンを1人作ることから

こんにちは。

マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。

第1章 デジタルネイティブ時代の情報接触
第2章 知らぬままに置いてけぼりになるリスク
第3章 生活者理解のために必要ないくつかのこと
第4章 口コミが生まれる、広がる、その理由を科学
第5章 ファンを作るために必要なことはひとつだけ
第6章 オリジナリティとどこにもないストーリー
第7章 ファンを増やす、共感を得る仕組みと仕掛け
(6)最初のファンを1人作ることから(まとめ)


1.共感型マーケティングに求められる観点


本節では、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛け、デジタルネイティブ時代の情報発信noteとして24回にわたり読み解いてきた共感型マーケティングについて、総まとめを行い、これから先、ファンづくりの1歩目を踏み出される皆様にメッセージをお届けしたいと思います。

まず、共感型マーケティングとは、1人の個人を起点に、複数人のフォロワーがおり、発信された情報を受け取ったフォロワーが共感し、さらに自身のフォロワーへ共有、拡散していくというSNSのネットワークが持つ共感連鎖の構造を活用するマーケティングセオリーです。

共感が連鎖していく情報伝播の構造に載せてお伝えするのは、中小企業、小規模事業者、そして、食品クラスタの皆様がそれぞれに備えている、固有の無形資源から生み出される、共感と口コミを喚起する力を持つコンテンツになります。

上記2つの特徴を勘案すると、この先で待ち受けている未来は、情報接触態様(スタイル)が、昭和、平成の時代とは様変わりし、自社のブランドや商品が持つ提供価値の存在を広範に伝達しやすくなる社会であり、中小企業、小規模事業者、食品クラスタの皆様にとっての追い風になると確信しています。

情報を発信する側の視点で申し上げれば、情報発信にかかるコストが劇的に低下し、規模の大小を問わず、SNSの情報伝播の構造を活用し、自社のブランドや商品の存在を地域や国を超えて発信することができるようになったため、ファンづくりのスタートラインは、大企業も、中小企業、小規模事業者も変わりません。

一方、共感連鎖の構造を活用する視点で申し上げれば、大企業において、縦割りでサイロ化されたタスクを持つ担当者に対し、中小企業、小規模事業者の皆様は、自商品に対する想いを強く持ち、日常、商品と密接に関わっており、共感を喚起するストーリーの引き出し(情報資源)の数が多いことが、ファンづくりにおいて有利に働きます。

このような時代の変化をチャンスと捉え、自社のブランド、商品を通じて提供する価値の存在を伝播させていく際に活用したい、共感型マーケティングの基本的な考え方や観点を、整理いたしましたので、以下の図表をご覧ください。

観点

1つ目のポイントは、「量」<「質」の観点です。共感型マーケティングは、フォロワーの数をひたすらに追及する取り組みではありません。

このマーケティングモデルの主目的は、自社のブランドや商品を通じ、価値をお届けしたいと考えるお客様に望まれているコンテンツを発信し、共感してくださる方を作ることにあります。

自社の商品に込められた大元にある想いと、商品を召し上がるシーンや、
食品自体が持つ機能に期待する効用(効果)、食品に対するこだわり
(価値観)といった物差しが重なるお客さまの心に響くストーリーを、メッセージやビジュアルに載せて発信する、というファンづくりのプロセスを考えると、重要になるのは、発信した回数や量ではなく、コンテンツの質だということが、お分かりいただけると思います。

2つ目のポイントは、共感量、応援量の最大化を図る、という活動目標を持つことです。共感度にもレベルがあり、「低レベル」の共感の意を表明してくださる、という片方向の共感から、「中レベル」のコメントや返信をくださるという双方向の共感、そして「高レベル」のシェアやリツイートといった情報伝播の起点となる多方面に波及する共感があります。

また、自社のブランドや商品に込めた想い、お客様にお届けしたい価値をテキストに換えた「#」ハッシュタグを付与して投稿をしてくださる「応援の量」も重要なKPIになります。

共感量と応援量の最大化のため、自社のブランドや商品が提供する価値を表すアカウントの世界観を保ちつつ、最も広範な情報伝播が期待できる共感量「高」レベルのアクションや「#」ハッシュタグを付与していただき、共感者が自身のフォロワーに対する発信へと繋がる口コミを引き出すコンテンツとはどのようなものか、発信時の反応もアナリティクスツールやインサイトツールを使って定期的に確認し、工夫と改善を繰り返すという、コンテンツ最適化のためのPDCAサイクルを回し続ける必要があります。

3つ目のポイントは、2つ目のポイントに通ずる部分でもありますが、共感型マーケティングを採り入れたファン作りは、「短期間」<「長期間」の取り組みだということを申し上げたいと思います。

このモデルの一番大きな特徴は、注文や購買頂く最終消費者をターゲットとし、直接的なメッセージを届け、今日の注文点数や明日の売上を引き上げる活動ではなく、情報発信の起点となる「共感者・ファン」を作り、共感の連鎖の先で、注文や購買というアクションを誘発するという、いわば間接的なマーケティング活動です。

自社が提供できる価値とお客様の期待が交差する箇所を探し、お客様の期待に応える自社の提供価値について、発信し続ける中で、じわり、じわりと、自社のブランドや商品の魅力が、伝わり、広がっていくという、ロングテール(足の長い)の特徴があることを前提とし、今日明日の売上ではなく、将来の事業資産である自社のブランドの力を育むマーケティング活動だということをご認識頂ければと思います。

2.共感型マーケティングの構造(まとめ)


私が、ファシリテーターとして関わった、SNSを活用して自社および商品の
ブランディングを行うための研究会の第3回セッションの結びに、ご参加いただいた食品クラスタの経営者や商品企画、プロモーションに携わるご担当の皆さんに口頭でご説明させて頂いた、共感型マーケティングの構造について、簡単に図解致しましたので、以下の図表をご覧ください。

賛同まとめ

共感型マーケティングモデルを活用したファンづくり、そして、ブランディングの活用は、6つのプロセスの集合として理解することができると思います。

1つ目は、創業時の志や商品に掛ける内なる想い、商品を通じてお客様に届けたい提供価値、といった唯一無二の経営資源が、共感を喚起するコンテンツを生み出す力の源であり、自社の商品について、1段掘り下げて理解するプロセスを通じ、その志や使命の部分を形式化、言語化することに取り組んで頂きました。

2つ目は、価値を届け、共感頂きたい方の顔を思い浮かべるという顧客理解のプロセスをご案内いたしました。

どのような課題を持ち、効用を求めている生活者を、ターゲットに据えるのかによって、お届けするコンテンツのテーマやストーリー、そして、情報発信の手段も変わってきます。逆に申し上げると、主たるターゲットのライフスタイルや価値観、共感してくださる方が想定できれば、共感を喚起するコンテンツの内容を含め、答えはおのずと導き出されるとも言えます。

3つ目は、自社及び自社の商品が提供する価値と、お客様の期待値が交わる部分を探し、ファンづくりのオリジナルのコンセプトとして形式化、言語化する、いわば、ファンづくりの設計書を作るステップです。

自社の商品の魅力や生活者にとっての価値を発信していく目的、意図、固有の経営資源の存在と、それを求めている顧客像に加え、コンテンツのテーマが形式化、言語化されたコンセプトは、経営者からの後押しを得る効用が期待できる他、社内の関係者の共通言語となり、役割分担を円滑にし、ファンづくり活動を関係者が一丸となって取り組む一助になるはずです。

4つ目は、共感を引き出す力を備えたオリジナルのストーリーを口コミのスイッチを入れる仕掛け共に発信するプロセスです。共感を引き出すコンテンツには特徴があり、地方の食品クラスタの実際の発信例から、共感の意思表示の量や応援のアクションが生まれているコンテンツの特徴として、「シズる感を引き出すビジュアル活用」や「商品自体に魅力を付加するバックグラウンド」、「商品に対する興味や想像を膨らませる疑似体験」といったスイッチを入れる仕掛けと工夫をご紹介いたしました。

5つ目は、思い立った日を吉日として、第1歩目を踏み出すプロセスになります。オリジナルのコンセプトにご共感いただき、1人目のファンを獲得することができましたら、本書は、ファンづくりをご支援する、という最大の目的を果たしたことになります。

そして、6つ目として、一貫した世界観とテーマをブラすことなく、オリジナルのコンセプトに基づいて、継続してコンテンツを発信し続けることで、いずれ共感と共有の渦が起き、自社のブランドや商品の提供価値が共感連鎖のネットワークに乗り、広がっていくという情報伝播の特徴を活用することが、すなわち共感型マーケティングであるとご説明し、研究会のまとめとさせていただきました。

3.結びに

本noteは、私が、地方の食品クラスタ(地元の名産を生産・加工して流通させる)の経営者向けに、オンラインチャネル活用のための研究会(ワークショップ)講師を務めた際、6次化に取り組む生産者が取り扱う加工食品や飲料を想定し、食品クラスタの企業の皆様にとって、追い風が吹いていることをご紹介した内容をまとめ、ご紹介してまいりました。

そして、地方の食品クラスタが既に取り組まれているファンづくりの事例を
ご紹介差し上げるとともに、食品クラスタの事業特性や組織風土、そして人的資源や意思決定の構造を想定し、どこにもない自社の固有の価値を言語化、形式化し、社内の了解を取り付けることで協力体制を整える等、後戻りなく、最初の1歩を踏み出していただくための手順や準備事項について、共有申し上げました。

上記の研究会にご参加いただいた食品クラスタの皆様は、大変ありがたいことに、それぞれファンづくりの第1歩目を踏み出されています。

地元のワインを扱う事業者は、Instagramのアカウントを用意され、栽培から収穫、仕込みから商流にのって小売店や飲食店に出荷されるまでのプロセスを発信されており、そこには多数のコメントや返信が寄せられ、共感者との双方向のコミュニケーションを通じ、商品に対する期待感が高まっている様子がうかがえました。

経営者と商品製造を担うご子息にご相談をしても、ファンづくりの必要性を
ご理解頂けず、研究会の第3回セッション(19年3月)では、「まだ相談できておらず、今回は、他の食品クラスタの事例を教えていただくところまで」と仰っていた「麹」や「甘酒」を取り扱われている商店では、19年4月にInstagramとFacebookのアカウントを開設され、既に多数のフォロワーに恵まれていらっしゃいます。

また、各社とも、催事に出展された際のデパートのアカウントや、商品を取り扱っている小売店、飲食店が、当該企業の社名、ブランド名、商品に加え、商品の提供価値や効用を表現するテキストをタグ化した「#」ハッシュタグを付与し、応援者として情報発信をしてくださっているため、共感者を起点とし、各アカウントのフォロワーに対しても商品の魅力や価値が伝わり始めており、その情報伝播の量と広さは、自社のアカウントだけでフォロワーに対して発信する伝達量、到達量とは比べ物にならないほど大きな渦となりつつあります。

本noteを通じ、最も大きな声でお伝えしたいことは、小さくてもファンを作るためのアクションは「思い立った日が吉日」で始められるということです。

工夫次第で情報を届けられるこの時代に、本noteをご覧頂いたことが。最初のファンの1人目を作る取り組みの1歩目を踏み出す契機となれば幸いですし、自社の商品に込められた想いや、提供価値が、共感連鎖のネットワークを辿り、一人でも多くのお客様に伝わりますようにと、祈念しております。

 ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。

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