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苦手な散髪


20230711

僕は幼い頃から今に至るまで、自らの髪型というものに興味がない。ワックスでかっちりセットなんて技術もないし、そもそもしようという発想がない。パーマや縮毛、色染めしたこともない。「無頓着」という言葉が相応しいだろう。そのくせ僕の髪は剛毛の気質で、その上ある程度の長さになると左巻きに曲がるという特性を持っているので、僕の髪の毛は日頃とんでもない質量でもって頭の上に繁栄している。石油のようなしつこさである。だから僕は、外出の折には大体帽子を被ってしまって、全く髪を隠蔽してしまう。僕は自らの髪型というものに無頓着なのである。

そのくせバリカン丸坊主という気概も無いし、いっそのこと長髪、という手段にも踏み込めない。頭の形が綺麗でないというコンプレックスもある。このように僕は、僕の髪型によって何か変革をもたらそうだとか、自身の気分を変えてみようとかいった発想を持ち合わせていないのである。人から「そろそろ切りな」と言いつけられて、やっと切るかと思い立つ、といった具合で、僕には髪型に気を遣うという事への目覚めが未だ訪れずにいる。これから先、見事に禿げ上がった頃にやっとこの無頓着を後悔するだろう。

何も皆が皆髪型フェチな訳でもないよ、とも思うが、齢23の僕としては、なかなか焦りのような気分も感じずにはいられない。ファッションと豪語する以前の、モラルというものにすら自分の欠陥を疑ってしまうのである。



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